ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

ブリューゲル(5) ‐ 美術史美術館(24)

2016年09月09日 |  ∟オーストリアの美術館

 ※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(42)

 ブリューゲル(1525-1569)の五回目は、彼が好んで用いた群集構図の作例のひとつとされる 「ゴルゴタの丘への行進」(1564年/124×170㎝)。

 主題は、イエスが十字架を背負ってローマ総督の官邸からゴルゴタの丘まで歩く<ヴィア・ドロローサ>。

 画面中央に位置するキリスト、その姿は群衆に紛れて見分けにくいが、十字架によって辛うじて識別できる。

 それはブリューゲルの意図が、“ 聖なる出来事よりも、それに対する人々の無関心さ ” にあるからだとされている。

 なるほど画面を見ると、群衆はまるで祭りの縁日のように三々五々、刑場の丘へと急いでいるかに見える。

 画面中央を横切って点在する赤い兵士が、それら群衆の動きを結ぶ線となって、前景で悲しむ聖母、使徒ヨハネ、マグダラのマリアたちとの対比を際立たせている。

 ところで、その群衆たちの無関心を示すモチーフの中で強調されているのが、“ イエスの十字架を背負わされようとするクレネ人シモンの挿話 ” (マタイ27章)。

 その部分を拡大(下)すると、連れて行かれようとするシモンを妻が必死に引き止めている。

 ブリューゲルは、“ 愚鈍なまでの容貌描写によって、野次馬たちの盲目振りを強調しようとしたのだ ” とされ、群衆はこのシモン夫婦の出来事に足は止めるものの、誰ひとりとして倒れたキリストに想いを向ける者がいないことを痛烈に皮肉っている。

 15世紀を経ても少しも変わってないじゃないかと、画家が投げ掛けているのだと解釈すれば納得がいく。
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1182

 ※ 「美術史美術館(23) ‐ ブリューゲル(4)」へは、<コチラ>からも入れます。


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2 コメント

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安野光雅 (マックのお父さん)
2016-09-09 23:37:00
 ご存知かもしれませんが、安野光雅著の「会いたかった画家」にも、ブリューゲルの「ゴルゴタの丘への行進」に関する記述があります。
 なかなか興味のある文章です。
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マックのお父さんへ (petro)
2016-09-10 08:27:03
コメントありがとうございました
安野光雅さんは私も好きな画家で、書籍「空想工房」などのシリーズとか「狩人日記」などを、また画集「津和野」や「中国の旅」などを拝見しましたが、「会いたかった画家」は知りませんでした
いい季節になりましたので久し振りに図書館に出掛け、借りたいと思います
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