ペトロとカタリナの旅を重ねて

あの日、あの時、あの場所で
カタリナと歩いた街、優しい人たちとの折々の出会い・・・
それは、想い出という名の心の糧 

クリムト ‐ ベルヴェデーレの奇才(3)

2015年07月22日 |  ∟オーストリアの美術館

 19世紀末から20世紀にかけて活躍したユーゲントシュティール・象徴主義を代表するウィーン分離派の画家グスタフ・クリムト(1862-1918/オーストリア)。

 まずは、「ユディト Ⅰ」(上/左)、副題「ユーディットとホロフェルネスⅠ」。
 描かれるのは旧約外典、旧約続編、第二正典のユディト記の美しい女ユディト、画面右下に小さくホロフェルネスらしき男の顔半分が描かれている。

 美しく裕福な未亡人ユディトの住むベツリアの町へ、アッシリア王ネブカドネツァルの命により、将軍ホロフェルネスが軍を率いて侵攻。
 ベツリアの町を救うためホロフェルネスの暗殺を目論むユディトは、彼の気を惹くために近づき、酒宴に招かれたその夜、酔いつぶれたホロフェルネスの首を切り落とす、という逸話がこの絵のテーマ。

 このテーマ、この日の午前中、ウィーン美術史美術館で見た<クラナハ>(1472-1553/ドイツ/ドイツ・ルネサンス)も「ホロフェルネスの首をもったユディト」を描いている。

 クラナハが描こうとしたものは一見すれば理解(わか)るのだが、これが、ユーゲントシュティール・象徴主義となると、凡人には聊か手に余るところがある。

 案内書に、“ 英雄的な姿でユディトを描くのではなく、匂い立つような妖艶性と官能性を全面に押し出し表現されているのが最も大きな特徴 ” なのだそうだ。
 もう一枚、未完とされる「アダムとエヴァ」(上/右)同様、テーマと結びつけるのが聊か困難な絵ではあった。

 美術史美術館のベラスケス(1599‐1660/スペイン/バロック)の「<マリア・テレーサ王女の肖像>」の髪型をイメージしてしまうような頭部の櫛形の模様、髪飾りのようでもあり壁の装飾のようでもあるが、クリムト特有の装飾である「フリッツァ・リードラーの肖像」(中)も架る。

 女性だけじゃなく風景にも優れたものを見せている。

 案内書に、「カンマー城公園の並木道」(下/左)は、“ ゴッホ(1853-1890/オランダ/後期印象派)の影響が著しい ” とあって納得させられた。
 「そうか、ゴッホねえ?」なんて思いながら、「ヒマワリの咲く農家の庭」(下/中左)の前ではルドン(1840-1916/フランス/象徴主義)をイメージしたのかも知れない、と想像が膨らんだ。

    

 しからば、「けしの咲く野」(下/中右)はモネ(1840-1926/フランス/印象派)で、「白樺の林」(下/右)はピサロ(1830-1903/フランス/印象派)かな、と取り留めもないことを考えて見ると、また、別の面白さがあった。
 とまれ、風景画を前に、「このような絵も書いたのね」と、静かに話すカタリナ でした。 (この稿、続く)
 Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1006


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« シーレ ‐ ベルヴェデーレの奇... | トップ | 続・クリムト ‐ ベルヴェデー... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

 ∟オーストリアの美術館」カテゴリの最新記事