目には青葉山ほととぎす初鰹 (山口素堂)
本当に爽やかな季節になりました。
聊か間延びした感もありますが、ゴールデンウィーク、如何お過ごしでしたか?
本題に戻って、前回は、染物屋の息子、イタリア語でティントレットと言う。として生まれたためそのまま名前になった画家ティントレット(1518-1595 )の「マルタとマリアの家のキリスト」でした。
で、今回はそのお師匠さん、盛期ルネサンス・ヴェネツィア派の巨匠ティツィアーノ・ヴェチェッリオ(1488-1576 )その人。
これまでにも「フローラ」「ウルビーノのヴィーナス」(ウフィツィ美術館蔵)、「悔悛するマグダラのマリア」(ピッティ宮パラティーナ美術館蔵)などの官能的な絵を採り上げてきた。
ここ、アルテ・ピナコテークには、「ヴァニティ」(上)が架かる。
この作品は、女神フローラに由来する娼婦フローラの思想につながる作品として、“ 彼の理想美的解釈にもとづき生命と官能の喜びに満ちた豊かな表現がなされている ” と、美術書は解説。
さらに、“ 当時の代表作である『<聖愛と俗愛>』(ボルゲーゼ美術館蔵)にも示されるように、彼の人間賛歌を高らかに謳ったルネサンス的思想が最も顕著に表現された作例 ” なのだそうだ。
この「ヴァニティ」、「悔悛するマグダラのマリア」にもつながる作品とされているが、聖マグダラの輝く髪が、自身の裸体を包み込むその姿は深い同情性を誘い、同時に斯くも官能性高く表現できるものなのかと驚き入る。
かつてカタリナ は、“ あの無頼の画家カラヴァッジョも<聖女マグダラ>を描いているが、そこには、彼女が流す涙の哀歓を素直に理解させる、聖性と静謐が示唆されていると思う ” と書いていた。
勿論、どちらも傑作であることには違いがなく、要は嗜好ということだろう。
ヴァニティにしろ、<フローラ>(下・左)にしろ、<マグダラ>(下/右)にしろ、ヴェネツィア派の特徴ともされる鮮やかな彩色によって “ 色彩の錬金術 ” とまで呼ばれるティツィアーノの面目躍如たる絵の前で、何時もながらに「口元聊かだらしなく」、暫し見とれるのは、男性として正常な感覚なのだろうけれど?
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.608