寒の入り(六日)の前日、<国立国際美術館>(写真上)を訪ねた話の続き。
朝日友の会じゃなかった、朝日新聞主催の 《ウフィツィ美術館 ・ 自画像コレクション展》 の会場にいる。
かつて栄華を極めたメディチ家が、雨風を避けるためか、身の危険を感じていたのか、ただの我侭だったのか知らないが、居住区のピッティ宮からヴェッキオ橋を経てウフィツィ美術館、さらに、執政区のヴェッキオ宮まで回廊を設えたという。
建築を担当したのが、イタリアのマニエリスムの画家にして文筆家、そして、建築家のジョルジョ・ヴァザーリ。
ゆえに、ヴァザーリの回廊とも呼ばれ、その回廊の壁を飾っているのが、ルネッサンス期以降の画家の自画像。
余談だが、この御仁、画家として功績は残していないが、イタリアル・ネッサンスを語る上でもっとも影響力のある書物の一つ、「芸術家列伝」の著者として名を馳せているとか。
この美術展、チケット売り場がふたつあるのからして特異、ということは前回書いたが、展示がまたユニーク。
殆どの自画像の傍に、“ この画家はこんな絵を書いた人ですよ ” と、葉書二枚ほどのサイズの代表作の写真が添えられている。
何故そんなことを? と疑問が湧くが、その訳は会場に足を入れれば直ぐに理解できる。
早い話、華がない、俗に言うところの目玉商品がないのだ。
レンブラントやシャガール(写真中:同展の絵葉書から)などの作品も架かっているが、殆ど名が知られていない画家の自画像を並べられても、「少しも面白くないの」である。
主催者がせめてもの罪滅ぼし? に、どんな絵を描いた画家か紹介するくらいのサービスは、と写真を添えたのだろうが、語るに落ちたようにも思え、詰まらない展覧会を企画したものだというのが率直な感想。
ところで、ヴァザーリの回廊、メディチ家がかつてのライバルだったルカ・ピッティが建てたピッティ宮を財力に飽かして手に入れ、相当離れたふたつの宮殿を無理やり廊下で結び、その途中、ヴェッキオ橋でアルノ川を渡り、ウフィツィ美術館の中を行くのが面白い、と思っているが、予約が必要らしくまだ歩いたことはない。
ちなみに下の写真は、アルノ川に架かるヴァザーリの回廊、99年に銀鉛フィルムで撮ったものだ。
所蔵者が一般公開しない作品を並べて「ウフィツィ美術館展」を謳い、入場料1400円也を頂戴とは少々あざといのでは? 「えっ、友の会の会員は無料だから文句言うなって? ご尤も」「私の分は、会員同伴で1200円だったけど、払ったわよ」だって!
お寒い展覧会の帰り道、寒の入りを前に大川からの空っ風が身に滲みました。