とおつ国、ポルトガル。
この国の偉大な詩人ルイス・デ・カモンイスは、大西洋を臨むロカ岬を、“ ここに地果て、海はじまる ” と謳った。
フランクフルト・アム・マインで乗り継ぎ便を待って5時間を過ごし、リスボンのホテルに着いた時グリニッジ標準時の23時、中央ヨーロッパ時間で0時を告げていた。
“ 日出ずる処から日沈む処へ ”
地球の裏側のこの地へは直行便がないこともあって、「何と遠い国やねん!」と今更ながらに呆れる。
テージョ川を中心に展がるリスボンは、“ 七つの丘の街 ” とも呼ばれている。
起伏に富んだ地形が美しい街並みを作っているが、生活する分にはきつい街だろうことは想像に難くない。
石敷きの狭い坂道だらけのこの街、庶民の足は市電とケーブルカーだったらしいが、ご他聞にもれずモータリゼーションの波に追いやられ軒並み路線が廃止、途中でぷつんと途切れた線路を結構見かける。
残るは僅か数路線、観光客相手に外貨を稼ぐため?頑張っているとか。
リスボンの中心ロシオ広場を出たレトロな木製の市電は、警笛を響かせて急坂の細い路地を巧みに抜け、軒先?すれすれに角を曲がり、車体をきしませ一気に坂道を上りまた下る。
途中、海なのか川なのか定かでない大テージョ川が望め、紫のブーゲンビリアが今を盛りに咲いるポルタス・ド・ノル広場を経てグラサへと向かう。
遠慮していていたのでは走れないのだろう、軌道内にうろうろする自動車を警笛で追っ払いながら、また、激しくしくドライバーと罵りあいながら走る。
時にはわざわざ市電を停め車の傍まで駆け寄りまくし立てている。
終点のマルティン・モニス近く、スイッチバックするためかポールの向きを変えようと彼女が市電を離れたので、「丁度いいや」と下車したところ何人かの客もついてきた。
それを見た彼女の大きな声が追いかけてきた。
彼女、「一寸あんたたち、いい加減にしな。ここは停留所じゃないよ!」と言ったのだと思う、多分。