パピとママ映画のblog

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美しい星 ★★★★

2017年05月31日 | アクション映画ーア行
三島由紀夫が1962年に発表した核時代の人類滅亡の不安を捉えた小説を、『桐島、部活やめるってよ』などの吉田大八監督が大胆に翻案して映画化。突如自分たちは地球人ではなく宇宙人だと信じ込んだ平凡な一家が、美しい星・地球を救おうと大暴走するさまが展開する。世界救済の使命に燃える火星人として覚醒した主人公はリリー・フランキー、水星人として目覚めた長男を亀梨和也、金星人として目覚めた長女を橋本愛、地球人のままの妻を中嶋朋子が演じる。
あらすじ:予報が当たらないと話題の気象予報士・重一郎(リリー・フランキー)は、さほど不満もなく日々適当に過ごしていた。ある日、空飛ぶ円盤と遭遇した彼は、自分は火星人で人類を救う使命があると突然覚醒する。一方、息子の一雄(亀梨和也)は水星人、娘の暁子(橋本愛)は金星人として目覚め、それぞれの方法で世界を救おうと使命感に燃えるが、妻の伊余子(中嶋朋子)だけは覚醒せず地球人のままで……。

<感想>原作は読まずに鑑賞したが、実にへんてこりんな映画だった。キライではないが、リリー・フランキーさん、亀梨和也くんに橋本愛ちゃん、中島朋子が演じたメインとなる大杉家の4人のキャスティングが良かった。とりわけ、リリーさん扮する主人公、火星人へと覚醒する重一郎をハズレばかりのテレビ気象予報士にしたのは正解でした。

考えてみればお天気キャスターって、ある意味、予言者の末裔みたいなものですよね。天の気を掌握して予報するという。浮気をして帰り道に突然天から光るものを見て失神して、朝には田んぼに車が落ちていた時から、使命に目覚めた重一郎は、生放送中に突然、地球温暖化の深刻さについて熱弁をふるい「地球人のみなさん、まだ間に合います」と叫び、カメラに向かって両手を上に突き出し広げて、素っ頓狂な火星人ポーズをキメるところなんて最高ですから。

そして、橋本愛ちゃん扮する長女の暁子は、美人で綺麗なのに自分はコンプレックスを抱いていて、路上ライブをしていた男、武宮に誘われて、金沢へ行き、誰もいない冬の海の砂浜に立つ。何故に暁子は、簡単にシンガーソング・ライターに惹かれたのだろうか?「金星」というタイトルのCDを買って、彼の元へと駆けつける。

ここで演じる橋本愛ちゃんも、また奇怪な“金星人のポーズ”を取るのだが、沖の上空に2つの光る物体が現れるんですよね。これって、もしかしてUFOなの?・・・。それに、処女懐妊だなんて、武宮に睡眠薬でも飲まされてレイプでもされたのよね、きっと。
そして、長男の亀梨和也君扮する一雄は水星人として覚醒し、バイトをやめて保守系政治家のカバン持ちになる。

一人地球人の母親、中島朋子は「美しい水」という奇跡のマルチ商法に引っかかる始末。家には100ケースの水が届けられる。だが、毎日暑い日が続いて地球温暖化が、地球を痛めつける。人類は滅びるのか、番組をジャックして訴える重一郎は、人気者になるが、問題は彼のメッセージを誰も真面目に受け取らないこと。

保守系政治家の懐刀の佐々木蔵之介、彼も実は宇宙人であり、「人類が滅びても時間が経てば化石になる」と皮肉を飛ばすし、追い詰められる重一郎は、地球を、人類を救うことはできるのか、空飛ぶ円盤はやってくるのか?・・・。
覚醒した大杉家は暴走して、重一郎は例の“火星人のポーズ”が巷の人気を集めるが、次第に主張と行動がヒートアップし、妻の伊余子は水ビジネスにハマって抜け出せなくなっていくしで。長女の暁子はといえば、「美の基準をただす」という金星人の使命を果たすために、大学のミスコンに出馬すると宣言。

そして長男の一雄は、謎めいた議員秘書・黒木に接近していく。黒木役が不気味な佐々木蔵之介の、印象的な感じが、宇宙人なのだろうがすこぶるいい。
山場となるのが、テレビ局のスタジオでの重一郎と黒木の対峙であります。さらには、一雄も交えての対話シーン。「究極的に人間は救うべき存在なのか」について、“宇宙人”同士が大論争をぶちかますのだ。
黒木扮する佐々木蔵之介が言うには、人間が存在しないことが一番地球に優しいのだ、とか。人間がいない環境こそが「美しい星」を作る、と主張するのだが、・・・。その黒木に反論できる人間は多分いないはずなんですね。でも、彼の理屈を押し通すと、映画ができなくなると思うから。

ラストが私的には良かったですね。父親の重一郎が衰弱していき、末期がんだと知った家族は、病院から連れ出して父親を火星へ帰してやろうとします。車で走っていくところは、きっと福島の原爆被災地だと感じました。夜になり車を降りて歩くのだが、そこへ大きな牛が現れる。その牛の背中に乗って重一郎が円盤のところまでたどり着くわけ。牛は神様の使いなのかもしれない。

真っ白い宇宙船の船内も良かったし、重一郎が家族との別れをしようと円盤の窓から下界を見ると、小さくなった大杉家の家族に別れをと思ったのだろう。下界にはまだ地球人の自分がいたのが見える。リリーさんの“火星人”のキメポーズも良かったし、長男一雄の亀梨くんも将来政治家になると決心したのに。暁子は妊娠していても、大学のミスコンにウェディングドレスを着て、これも本当に美しかった。
これは、原作からの大胆な脚色に賛否が分かれるかもしれないが、まずは、三島由紀夫の書いた「美しい星」も読まなくては。

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