パピとママ映画のblog

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ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日 ★★★★★

2013年01月31日 | ら行の映画
世界的な文学賞ブッカー賞に輝いたヤン・マーテルのベストセラー小説「パイの物語」を、『ブロークバック・マウンテン』などのアン・リー監督が映画化。動物園を経営する家族と航行中に嵐に遭い、どう猛なトラと一緒に救命ボートで大海原を漂流することになった16歳の少年のサバイバルを描く。主演は、オーディションで選ばれた無名のインド人少年スラージ・シャルマ、共演にはフランスの名優ジェラール・ドパルデューが名を連ねる。227日間という長い漂流の中で、主人公がどのように危機的状況を乗り越えたのかに注目。

あらすじ:1976年、インドで動物園を経営するパイ(スラージ・シャルマ)の一家はカナダへ移住するため太平洋上を航行中に、嵐に襲われ船が難破してしまう。家族の中で唯一生き残ったパイが命からがら乗り込んだ小さな救命ボートには、シマウマ、ハイエナ、オランウータン、ベンガルトラが乗っていた。ほどなくシマウマたちが死んでいき、ボートにはパイとベンガルトラだけが残る。残り少ない非常食、肉親を失った絶望的な状況に加え、空腹のトラがパイの命を狙っていて……。(作品資料より)

<感想>タイトルの「パイ」とは主人公のインド人少年の愛称で、本作は大人になったパイが、原作者をモデルにしたと思しき作家に自分の数奇な半生を話して聞かせる、というスタイルで進んでいく。奇想天外な設定、スリルと興奮が切れ間なく押し寄せる展開、そう文字通り「パイ少年の人生についての物語」なのだ。
大嵐と荒波にさらされて、動物たちや船員を引きずり込むように海中へと沈んでいく貨物船。沈没事故で家族を失い、大海原に漂う1艇の救命ボートが。そこには、突然の海難事故に見舞われたった一人生き残った16歳のインド人少年パイが乗っていた。家族にも失った悲しみに暮れる間もなく、さらなる苦難が彼の前に立ちはだかる。なんと、そこには一頭の獰猛なベンガルトラがボートの中に潜んでいたのです。その他にもシマウマ、オランウータン、ハイエナが乗り込んでいた。

少年とトラが織りなす227日間の漂流生活という、およそ信じがたい物語を台湾出身の名称アン・リーが3D作品として映像化した。これが見事に面白いサバイバル・ファンタジーに仕上がっているのだ。
物語の大半は、大海原を漂流する救命ボートで展開し、登場人物はインド人の少年と動物たちしかいない。3Dの奥行を存分に生かしながら自由に天地を逆転していく大胆なカメラワークといい、逆に3Dの分かりやすい迫力に頼らないモダン・アートのごとき大胆な構図の面白さが発揮された映像美だと思う。

特に感嘆したのは、パイとトラが彷徨う群青色の夜の海は、天空の月や星を反射させ、写し鏡の向こうのもう一つの宇宙を想像させる。それと、ブルーの海に発行するクラゲとクジラが幻想的に舞う夜の海の水中バレエ、そしてまるで銃撃戦のごとき勢いで襲い掛かるトビウオの大群など、思わず息をのむイメージが次々に登場する。

そしてこのもう一つの宇宙とは、パイ少年の運命を司る「神」なんです。227日間の漂流生活は、少年と神との対話の時間でもあったのですね。ちなみに物語の冒頭でパイは、幼き日にヒンズー、カトリック、イスラムと3つの宗教の神に、同時に魅了されてしまった不思議な少年であることが描かれている。
まず驚かされるのは、小さなボートの上で少年とベンガルトラ、名前がリチャード・パーカーと名付けられた主役のトラは、CGクリーチャー。獰猛そうな動きはもちろんのこと、飢餓で骨と皮のように痩せ、ヨロヨロと弱っていく演技まで披露するのだから。確かに本物を使うわけにはいかないような、危なっかしい場面のオンパレード。それにしても、動きといい表情も毛並といい、とんでもなくリアルである。
少年とトラが互いに牽制し合いながら距離を縮めていく過程も、足場も少ない空間性と「ちょっとでも気を抜くと喰われる」というスリルを巧みにいかし、手に汗を握るアクションドラマとしても見事ですね。
後半では、大量のミーアキャットが生息する謎の浮島に辿り着くというファンタジックな展開にも度肝を抜かれ、その島がとんでもない島だったという物語も愉快。

その後ブラジルに流れ着くのだが、トラはジャングルに消え、中年になったパイが、カナダ人ライターに語り聞かせるという展開は、いつしか観客自身にこれは本当の話なのか、もう一つの話を語り始めるのは、悲しくて殺伐として、何より面白みに欠ける。どちらを真実と捉えればいいのか選択を迫られる。
しかし、もしパイにベンガルトラという相棒がいなかったら、実際に極限状況の中で彼を生かし、希望の糧となったのは、彼の豊かないイマジネーションだったのでは。CGで描かれた見事なトラは、その象徴であり、現実には存在しない、想像力が生み出した夢こそ、少年を生かし続け希望を与えたのではなかろうか。
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