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パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

鍵泥棒のメソッド★★★★★

2012年10月04日 | か行の映画
『運命じゃない人』『アフタースクール』で時制を組み替え、どんでん返しで観客を驚かせた内田けんじ監督。本作は、人生が入れ替わってしまった2人の男と、婚活中の女性が巻き起こす喜劇。後先考えずに行動して周りに迷惑をかけてしまうおバカな男には堺雅人。コンドウを演じるのは香川照之。
ちょっとずれた感覚の優等生・香苗には、最高のコメディエンヌぶりを発揮した広末涼子。三人の演技のアンサンブル、化学変化を楽しみながらノンストップ・エンターテインメントに身を任せよう。

あらすじ:貧乏役者の桜井は自殺を考えたが失敗し、銭湯に行き、羽振りのよさそうな男が転倒し頭を強打し気絶するのを目撃。そのどさくさに紛れて、鍵を自分のものと取り換え、彼になりすます事にする。
がしかし、その男は伝説の殺し屋、コンドウだった。桜井は彼をコンドウだと思い込んでいるチンピラに殺しの大金の絡んだ危ない仕事を受けるハメに…。
一方、婚活中の香苗は記憶喪失で途方に暮れているコンドウに出会い好意を抱くが…。(作品資料より)
<感想>冒頭から、コンドウに扮した香川照之の豪快な全裸の転びっぷりに驚かされ、彼が早々と記憶喪失になった時は、一瞬気持ちが退いてしまったが、内田監督が、ボクは誰?、ここは何処、ふうな安手のメロドラマにする筈はなく、脚本に張りめぐされたトリッキーな仕掛けの数々に思わずニンマリ。
売れない役者と記憶を失った殺し屋との、人生が入れ替ったことから巻き起こるドタバタを、笑いとサスペンスを交えて描いているのだが、今回は難解なタイトルが後から考えるとそこはかとなくおかしい。記憶を失ったコンドウが、自分を桜井と思い込んで、本を読んでメソッド演技を研究する。まさかスタニスラフスキー提唱の演技法(メソッド)のこととは思わなんだ。
知らない人間同士が違う人生を体験する面白さ、記憶を失ったコンドウが貧乏役者になり変って感じる、お金があるだけが幸せじゃないという。元々の几帳面な性格は変えられなく、桜井の汚い部屋をあっという間に奇麗にしてしまう。それに、役者の仕事もヤクザのチンピラの役だからなんなくこなして監督に気に入られる。

一番良かったのは、殺し屋だったコンドウには無縁だった、美人の香苗に惚れられたこと。さすがに演技が上手い香川さん、今回も一人二役のような対象的な役どころを、難なくこなしている実力も見どころです。

人物の何気ない動きやリアクションなど、演出の細部に、さりげなく伏線が用意されているのにも感心する。ヤクザ役の荒川良々がバカに設定されていないし、広末涼子が婚活中の雑誌編集長役で、結婚相手の条件は「健康で努力家の方」と、かなり美人なのに、本人はそこのことを自覚できていない風変わりな女が絡んできて、胸がキュンキュンするラヴコメディ的展開も楽しい。最後の車の警報装置の音のキュンキュンと広末の胸のキュンがリンクする展開が最高。
それに主演の香川さんと堺さんの二人も、潜在能力マックスまでキャラと演技を出していて小気味いいですし、一種の犯罪ものを、ここまでとぼけた味わいのコメディに仕上げた、内田監督の才気が嬉しい。ワクワクしながら3人のおかしなアンサンブルに、最後の最後まで目が離せません。
2012年劇場鑑賞作品・・・99
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