パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

イレブン・ミニッツ ★★★

2016年08月31日 | アクション映画ーア行

『ムーンライティング』などで知られ、カンヌ、ベネチア、ベルリン国際映画祭で受賞経験のあるポーランドの巨匠イエジー・スコリモフスキが放つ群像サスペンス。大都会に暮らすわけありの11人の人々と1匹の犬が織り成す、午後5時から5時11分までのそれぞれのドラマを交錯させて描く。『ベルファスト71』などのリチャード・ドーマーらが出演。11分の間の出来事という設定と予測不能なラストが見どころ。
あらすじ:女たらしの映画監督、やきもち焼きの夫、刑務所から出てきて間もないホットドッグ屋、強盗に失敗した少年など、現代の大都会で事情を抱える11人の男女と1匹の犬。午後5時から5時11分まで、わずか11分の間にそれぞれの人生が絡み合い……。

<感想>イエジー・スコリモフスキ監督の作品にエッセンシャル・キリングがある。この作品は、大都会に暮らす曰くありげな人々に起こる11分間のドラマをモザイク状に構成した11人の群像劇であります。
日々のありふれた日常が、午後の5時に始まり、5時11分後に突然変貌してしまうという奇妙な物語。それは、NYの9・11のテロや、日本の大震災の3・11に見舞われるなど、11という数字に纏わる何か不条理な現代社会のメタファーとして描いたこの映画。
起承転結のあるストーリーであり、詳細な心理描写、背景説明など一切排除して、使い古されたサスペンスという定番なジャンルの様式を、掟破りのラディカルな精神で突破したものである。現在78歳らしからぬフレッシュな心意気がスクリーンいっぱいに漲っており、大胆不敵な映画になっている。

まずは、Webカメラによる手ぶれの小さい画面で、午後5時何分か前に、映画監督と面接の予定がある女優のアニャが出かけようとしていると、嫉妬深い短気な夫が帰って来た。目に殴られた後のある顔面を見て、誰かと口論でもして殴られたのだろうと思い、夫のシャンパンに睡眠薬を入れ、妻は約束のホテルへと急ぐ。目覚めた夫は慌てて妻が監督と会うホテルへと急ぐ。それがPM5時。

ホテルへ行く途中でホットドック屋が、4人の尼僧と、元恋人からもらった犬を連れた女が購入していく。ホットドッグ屋の主人が店じまいに入ろうとしていると、彼の過去を知る女が訪れ、彼を罵倒して唾を吐きかけるのだ。

ホテルでは、女優の妻が監督に誘惑されているところで、シャンパンを薦めて気分が悪いとべランダへと出る。監督もベランダへ出て、何とか女優を寝室のベット連れて行こうとするのだが。
ホテルへと駆けつけた夫が、妻と監督のいる部屋まで来て、廊下でウロウロしている。そして、ホテルの別室では、男女がポルノ映画を鑑賞している。そこへ、白い鳩が飛んで来て鏡に激突する。この男は、その後、ビルの窓ふきの仕事に戻るのだ。つまり、仕事着に着替えて、その部屋のベランダから、窓ふき用のゴンドラに乗るのだ。このゴンドラが、人間の生き死にに関わると思ったのだが。余り役に立たなかった。

バイクの男が、仕事の合間に配達先の人妻とドラッグと情事にふけり、そこへ旦那が帰ってきて、慌てて帰るバイク男。この若いバイク男は、ホットドッグ屋の男が父親で、仕事の帰りに彼のホットドックの屋台をバイクで牽引していくのだ。これも、ラストで大事故の基になるとは。
それと、女性救命隊員がアパートに駆けつけて、患者のところへ急ぐ。だが、狭い階段の上に酔っぱらった夫らしい男がいて、ドアを破って中へは入れない。そこで、救急隊員たちがドアを取払って部屋の中へと、妊婦が逆子で苦しんでいるし、奥の部屋にも男性が意識不明だしで、何とか救急車に乗せる。この救急車にバイクが突っ込んで来るとはね。バイクの後ろにプロパンガスの入った屋台が牽引しており、衝突の刺激で爆発する。

そして、5時過ぎに、外の橋で絵を描いている老人、すると橋から身投げ自殺をしたような男が川に飛び込む。驚き慌てる老人に、これは映画の撮影で、船が待っていてその男性を助けあげるのだ。その時、老人の頭上に旅客機が轟音を立てて通り過ぎ、スケッチの途中だった絵の端っこに丸い黒い点が、筆から落ちた墨のような。

バスがやってくるのだが、4人の尼僧と犬を連れた女が乗っており、そのバスに、この老人と橋から落ちたエキストラの男がバスに乗る。そのバスに救急車が追突する。そして、ホテルの上からは、ベランダで夫が監督と抱き合っていた妻に体当たりをして、ベランダから落ちた監督と女優の妻は、監督の方は窓ふきのゴンドラへ一度は落ちるも、窓ふき男も監督も真っ逆さまに下のバスと救急車の事故へとおちてゆく。妻の女優も夫が伸ばした手に捕まるも、その後は、結局下へと落ちて行く。
まずはラストが強烈でした。とにかく余りにも登場人物が多すぎて、切り替わりも忙しく、どの物語が重要なのかという戸惑いがある。こういう群像劇の場合では、観客はラストはどうなるのかと推測しながら見ることになるが、それでも、あのジェット機の爆音にBGMとか、意味深な音が何か不穏な効果をうみ、まるでSFで終わるのかと期待してしまった。そうではなかったので、おやまぁ、そう来たかと、そりゃ理不尽な人間の死に様だわよね。と言うわけで、そんなに珍しいく斬新な作品でもないのだ。
それでも、監視カメラ、Webカメラ、カメラ付き携帯、CGと言った様々なメディア技術を巧みに使い、11分後を予感させるような不吉な出来事が、各逸話をローアングル撮影や、スローモーションなど、多種多様な質感と視点を駆使した映像に、バイクの疾走音やジェット機の爆音、救急車のサイレンなど、都市空間ならではのシンフォニックなノイズが融合して、悲哀感漂う人生の光と影を見事に表現していたのは、年齢のわりには新しかった。
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