パピとママ映画のblog

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三度目の殺人★★★★

2017年09月11日 | アクション映画ーサ行
第66回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作『そして父になる』の福山雅治と是枝裕和監督が再び組んだ法廷サスペンス。死刑が確実視されている殺人犯の弁護を引き受けた弁護士が、犯人と交流するうちに動機に疑念を抱くようになり、真実を知ろうとするさまを描く。弁護士や検事への取材に加え、作品の設定通りに実施した模擬裁判で出てきたリアルな反応や言動などを脚本に反映。福山ふんする主人公が弁護を担当する殺人犯を、役所広司が演じる。
あらすじ:殺人の前科をもつ三隅(役所広司)が解雇された工場の社長の殺害容疑で起訴される。死刑が確実なその弁護を担当する重盛(福山雅治)はなんとか無期懲役にしようと事件を洗いなおすが、その過程で被害者の妻・美津江(斉藤由貴)から依頼されたとする供述が三隅から飛び出す始末。動機も二転、三転し、さらに被害者の娘・咲江(広瀬すず)のおぞましい秘密が暴露され、事件の真相は〈藪の中〉の様相を呈していく。

<感想>「そして父になる」から4年、新作「三度目の殺人」では、ある殺人事件の裁判に関わることになった人々の行動を描いている。再び主演を任された福山雅治が演じるのは、裁判で勝つことだけを念頭に立ち回るやり手の弁護士、重盛である。解雇された会社の社長を殺した三隅の弁護を引き受け、死刑を回避し、無期懲役を狙うのだが、肝心の三隅の証言が二転三転していく。

法廷劇がメインの脚本となっていると思ったが、クライマックスも裁判内での答弁に置いていたのに、接見室でのやりとりに重さを置いているようにみえた。その間、重盛と三隅の二人の関係が時に逆転したり、侵食したり、揺さぶられたり、揺さぶったりしているのが印象的である。接見を重ねるごとに、三隅を起点にして「こうじゃないか」と、重盛が思っていたことがどんどん揺らいでいく、そうなると三隅が本当に殺したのか、そこから揺らぐのだ。もし殺しているんだったら、どういう気持ちで、どうして殺人したのかもわからない。
安っぽい人間として、安い金と安い動機でやっちゃったとも思えるし、そんなことはない、すごく崇高なる信念をもって行動しているんだとも思えて来る。その三隅の起点に、周りにいる人たちもどんどん疑わしくなってくるんですね。それも是枝監督の狙いなのだろうか?・・・。作品そのものまで、役所広司が演じている殺人犯の手の平で、持て遊ばれているということに。つまり役所広司は、劇中の人物でありながら、作品の世界を乗っ取り、真実という白紙のカードを、観ているこちら側に投げつけるのだ。

広瀬すずちゃんが演じる被害者の娘の咲江、斎藤由貴さん演じる咲江の母親もそうだし、吉田鋼太郎さん演じる手練れの弁護士でさえ、いつもなら「またいい加減なことを」ですむことが、「こいつ、何か隠しているんじゃないか」と思えてきてしまう。対するフレッシュマンの満島真之介の配置もいいスパイスになっているし、彼れらに対する検事役の市川実日子も「シン・ゴジラ」で発掘されたクールな個性を改めて発揮して脇を締める。

広瀬すずも「怒り」のような分かりやすすぎる熱演や、ラブコメでのお約束の演技とは違って、抑制的な強い演技に天才感がアリアリだった。そして、広瀬の母親役の斎藤由貴の天然じみたダメさ加減と図々しさの演技。このキャリアにして「わからなさ」を温存する女優は貴重でありますから。

ここでは、役所広司が壮絶な凄味で怪演する殺人犯の三隅が、時や場所に応じて別人のような態度になり、証言をころころと変えることから、劇中で「空っぽの器」という形容が用いられている。しかし演出のレベルで、状況や環境、あるいは心境の変化を素直に映し出していく「空っぽの器」的な使い方をしているのは、むしろ福山雅治の方ではなかろうか?・・・。今作では、役所さんの演技の巧さが光っていた。

だが、是枝作品の福山雅治の場合、起点が完璧なのは同じだが、露骨に足りないものがどんどん暴かれ、ちっぽけな人間性が剥き出しになっていくキャラクターなのである。だから、役所広司が扮する、やたら濃いライバルを対比的に置いている。その脅威の人物に“薄い主人公”は翻弄され、影響を受け、次第に自己変容を来していくのである。
さてこう書くと息苦しい作品に取られるかもしれないが、実際の作品はサスペンスフルな面白さに満ちており、何よりも是枝監督の意図を汲んだ出演者たちが全面的に素晴らしい。実に適材適所で無駄もなく、人物全員が非常に鮮やかに記憶に残るのだ。

かつて、自分の第一の殺人を裁いた裁判長の父親からも、「獣のような人間」呼ばわりされ、今回の第二の殺人についても、不可解な証言を繰り返す主人公役の役所広司は、様々な作品で熱演を重ねてきたので、もはや新味を掘るのも難しいかと思いきや、今回の激しさを抑制しての演技は圧巻であり、接見室で福山雅治の弁護士と対峙する場面、ガラスに映り込んだ二人の顔が重なり合う「天国と地獄」のシークエンスの境地は、凄まじきものがあると感じました。

監督が、顔と顔が対峙する映画だと言い切れるのは、それぞれの俳優の眼力の強さも関係しているのだろう。接見の場でも裁判の場でも、それぞれの思惑が優先し、個人の感情は事件の背後に隠されてしまう。意識的に心情を表現しない術が取られ、事件は起きるし、時間の経過も描かれるが、登場人物たちの本音は決して明かされないのだ。
こうした絶妙な演技陣を取りそろえ、本作は上々の社会派サスペンスとしても楽しめるのも良かった。

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