パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

共喰い ★★★★

2013年11月15日 | た行の映画
小説家・田中慎弥による人間の暴力と性を描いた芥川賞受賞作を、『サッド ヴァケイション』『東京公園』などの青山真治が映画化した人間ドラマ。昭和の終わりの田舎町を舞台に、乱暴なセックスにふける父への嫌悪感と自分がその息子であることに恐怖する男子高校生の葛藤を映し出す。主演は、『仮面ライダーW(ダブル)』シリーズや『王様とボク』の菅田将暉。名バイプレイヤーとして数々の作品に出演する光石研と田中裕子が脇を固める。閉塞感漂う物語がどう料理されるか、青山監督の手腕に期待。
あらすじ:昭和63年。高校生の遠馬(菅田将暉)は、父(光石研)と父の愛人・琴子(篠原友希子)と暮らしている。実の母・仁子(田中裕子)は家を出て、近くで魚屋を営んでいた。遠馬は父の暴力的な性交をしばしば目撃。自分が父の息子であり、血が流れていることに恐怖感を抱いていた。そんなある日、遠馬は幼なじみの千種(木下美咲)とのセックスで、バイオレンスな行為に及ぼうとしてしまい……。

<感想>前から観たいと思っていて、地方ではミニシアターで上映。15日で終了というので急いで観に行った。原作者は芥川賞受賞の記者会見で「もらってやる」発言の田中慎弥で、こんなことテレビの会見で言っていいものかと、何だか自分の小説に自己満足していて、賞を取って当たり前だと言わんばかりに聞こえた傲慢な態度にむかつく。
だが、映画は思っていたよりも良かった。こういう世界もあるんだなぁと、夢中になって見てしまった。17歳の少年の性的な悩みを父母との関係の中に描いているが、お話の基本的な骨格は、田中慎弥の原作小説に基づいている。
自分の性欲の強さを、父親の道に外れた女とのセックスの行為ぶりと結びつけ、自分も父親のように相手を殴るようになるのかと、不安がる主人公。難しい役を体当たりで演じていた菅田将暉。父親の光石研は、前から注目していた俳優さんだったので、この人の活躍は嬉しいですよね。

特に、主人公の遠馬の母親に扮した田中裕子の存在感に圧倒された。後半のシーンで、同居をしていた琴子が妊娠をして家をでるという。それで父親が半狂乱となり探し回り、挙句に遠馬の恋人を神社でレイプして、それも殴る首を絞めるの暴行を加え、その時、普通だったら警察へ行き、父親を暴行罪で逮捕させることもできたのに、遠馬は彼女を連れて母親の所へ行く。
怒った母親は、父親を殺すといい出刃包丁を持ち刺すのだが、抵抗する父親。男だから暴れると力もあり仁子も吹っ飛ばされる。それでも、慢心の力を込めて自分の義手で夫の胸を刺し、彼はそのまま川の中へと。これが致命傷だったようだ。
母親は逮捕され、面会に行った息子に、義手を外したのでスッキリしたと笑う。そこで原作は終わるのだが、映画はその後、昭和63年という原作の設定を踏まえ、母親はすっきりしたといい、あの人が始めた戦争で本当は殺してしまいたかった。遠馬が生まれ、その後にも妊娠して家を出たが、そのお腹の子共は産みたくなかったという。あの男の血を引いた子供はお前でたくさんだ。あの人より先には死にたくなかった。

昭和64年の正月を迎え、昭和天皇の崩御を伝える放送。そういえば、今更ながらに思い返した。国民の皆が涙を流し、テレビは昭和天皇のことばかりでCMもなし、繁華街も営業を止め、賑やかなことは一切なしという。国民全体が1週間の間喪に服した。

少年の性的な悩みを軸にした話が、一気に時空を超えて拡大するさまは、スリリングな勢いをおび、さらには主人公に父親から去った琴子と再会させ、お腹の大きな琴子とのセックスを描く。その時琴子は、実はお腹の子供は父親の子ではないと言うのだ。
いずれにせよ、男のサディスティックな行為には、多少卑劣なことだと女の目線で感じるものの、そういう人たちも世の中に存在することを思えば、サドマゾ、SMプレイのようにも受け取れる。好んでやっている人たちもいるようで、この間「R100」を観たばかりなので、卑下するような発言は控えたい。
しかし、遠馬がよく母親に作ってもらう、アジの叩きのようなものに刻んだネギをのせて、そこへ醤油をかけて食べる料理は美味しそうに見えた。
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