パピとママ映画のblog

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あの日 あの時 愛の記憶 ★★★

2012年10月13日 | あ行の映画
実在する1組の男女の数奇な体験をベースにしたラブストーリー。ナチスの強制収容所で運命的な出会いを果たし、共に脱走を図るものの、生き別れてしまった男と女が奇跡のような巡り合わせで再会する姿を映し出していく。メガホンを取ったのは、テレビ映画などを手掛けてきたアンナ・ジャスティス監督。共にドイツ出身のダグマー・マンツェルとアリス・ドワイヤーが、30年も封印してきた愛に翻弄されるヒロインを熱演。波瀾万丈な展開もさることながら、凄惨な収容所内の描写も観る者の胸を打つ。

あらすじ:1976年、ニューヨーク。夫と娘と幸せに暮らすハンナ(ダグマー・マンツェル)は、テレビから聞き覚えのある声が流れていることに気付く。画面に目をやると、トマシュ(レヒ・マツキェヴィッチュ)がインタビューを受けている姿が映っていた。1944年、ポーランド。アウシュビッツ強制収容所へ送られたハンナ(アリス・ドワイヤー)は、そこで出会った政治犯トマシュ(マテウス・ダミエッキ)と恋に落ちる。所内の様子を捉えた写真ネガをレジスタンス仲間に渡す任務を遂行していたトマシュは、ハンナを連れて脱走を敢行し……。(シネマトゥデイ)

<感想>この映画の原題は「記憶」、まさにそのとうりなのだが、「あの日 あの時 愛の記憶」という邦題がうまいと思った。時代に翻弄され、運命に引き裂かれ、また思いがけない形で結ばれる男女の物語なのだ。
ともすればラブストリーととられがちだが、そこには30年以上前の、第二次世界大戦時の、ユダヤ人のハンナとポーランド人のトマッシュが、ナチスの強制収容所で出会う。二人は収容所の過酷な状況下で密かに愛し合い、命を懸けて脱走した仲だった。このシーンでは、絶対にこんなこと有り得ないと思いつつ見いってしまった。
二人は森の中へと追手をまいて、トマシュの故郷へなんとか逃れたものの、幸せは長くは続かなかった。トマシュはハンナを母親のもとへ預け、レジスタンスの兄の元へと行く。だが、ユダヤ人嫌悪感を隠そうとしないトマシュの母親は、ハンナが洋服ダンスの中に隠れていることをドイツ兵に告げようとするが、ハンナは間一髪のところで助かる。
自分の大事な息子の花嫁に、ユダヤ人の女なんか認めないという強い信念と反感。ここにいるのは無理だと思ったハンナは、トマシュの兄嫁の家へと。ハンナは、収容所を逃げ出す時に、妊娠をしていたのを夫になるトマッシュに隠していた。その妊娠に気づいた母親は、ユダヤ人の嫁に子供なんてとんでもないと拒否する。

兄嫁は優しくハンナを迎え、ポーランド語も覚えながらトマシュを待ち続けた。ところが、トマシュの兄だけが戻り、そこへソ連軍が進軍してきて、兄夫婦は連行されてしまう。仕方なくハンナは、ベルリンへと。この時のハンナは、お腹が大きくなっていたわけではなく、もしかして流産したのでは?・・・その後NYで夫と娘がいるのだが。
そして一足遅くトマシュが戻って来たのだが、母親が「ハンナは病気で死んだ」と聞かされる。二人の再会は絶望的と思われたが、運命は二人を見捨てなかったのだ。

なんとこれは実話なんだそうだ。ニューヨークで主婦として暮らすハンナが、テレビで見たのは戦時中の体験談を語るトマシュ。もう死んでしまっていると思っていたのに、動揺するハンナ。トマシュの方は電話で調べてきたハンナの声で、これまた驚きを隠せない。
ホロコーストを生き延びた一組の男女の愛の物語。と単純に考えるとつまらなくなるが、ナチスのユダヤ人迫害をまざまざと見せつけられ、この二人は本当に幸運としか言いようがない。それに、ポーランドの上流階級だったトマシュの家は、ドイツ軍に略奪され、その後ソ連軍がやってきて息子夫婦を連れて行くという、トマシュの老母親の怒りも、悲しみも分かる。
ポーランドという国の、悲劇的というか、皮肉な歴史も、あらためて思い知らされ、戦争が終わり平和になり、アメリカに住むハンナとポーランドのトマシュが、30年以上過ぎて再会する幸せそうな二人を見て、老いてはいるがこんなにも愛が強く感じたことはなかった。
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