仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

シン・ゴジラ

2018年03月08日 | ムービー
『シン・ゴジラ』(2016年/庵野秀明総監督、樋口真嗣監督・特技監督)を見た。
物語は、「2016年。東京湾羽田沖で大量の水蒸気が噴出すると同時に、東京湾アクアラインでは亀裂事故が発生し、通行車両に被害が出た。政府は、巨大生物の存在を示唆する矢口蘭堂内閣官房副長官(長谷川博己)の意見を取り合わず、事故原因を海底火山か熱水噴出孔の発生と見て対応を進める。しかし、巨大生物の尻尾がテレビ報道されたことで、政府は対処方針を生物の駆除とし、上陸した未知の巨大生物に対し、自衛隊の害獣駆除を目的とした防衛出動が決定したのだが・・・」という内容。
東京に上陸した謎の生命体(ゴジラ)が作品内で進化し続けるのが、『ゴジラ』(1954年/本多猪四郎監督)以来、30作以上も制作されたこれまでのシリーズ作品と違う所で、さらには、主要な登場人物もこれまでは科学者や新聞記者であることが多かったのだが、本作では大河内清次内閣総理大臣(大杉漣)をはじめとする内閣の主要閣僚や各中央省庁の役人、多くの自衛隊員が出ずっぱりなのが特徴だ。
総理官邸の廊下で、「会議を開かないと動けないことが多すぎる」と嘆く官僚の台詞が面白い。
また、静観、捕獲、駆除の選択肢から"駆除"を選んだ際に問題になったのが、自衛隊の出動を"治安出動"にするか、"防衛出動"にするか。
総理大臣執務室で、花森麗子防衛大臣(余貴美子)、赤坂秀樹内閣総理大臣補佐官(竹野内豊)、郡山肇内閣危機管理監(渡辺哲)等から進言を受ける大河内首相がうろたえ、東竜太内閣官房長官(柄本明)から「総理、ご決断を」を決定を促された際には、「今ここで決めるのか!?聞いてないぞ」と、実に頼りない。
この辺りに政治家や官僚に対する監督のイメージが現れていると思うのだが、演出の最高傑作は、「おっしゃるとおりです」と言う安西政務担当秘書官(中脇樹人)だと思う。
(^_^)

風立ちぬ

2016年06月12日 | ムービー
『風立ちぬ(The Wind Rises)』(2013年/宮崎駿監督)を見た。
物語は、「大正時代の日本。堀越二郎(庵野秀明/声)は、兄の英和辞書を使って、教師から借りた英文の飛行機雑誌を翻訳しながら読もうとするほどの飛行機好きだが、目が悪いことがコンプレックスだった。ある夜、夢に現れた飛行機の設計家ジャンニ・カプローニ伯爵(野村萬斎/声)に励まされ、操縦士ではなく設計家になることを決心。数年後には東京帝大で飛行機の設計を学ぶようになっていた。関東大震災の日、列車で偶然に知り合った里見菜穂子(瀧本美織/声)と女中・お絹を助けるが、名も告げずに立ち去る。二郎は2人を気にかけてはいたものの、それきり彼女達とは会うこともなく大学を卒業し、名古屋の飛行機開発会社に就職したのだが・・・」という内容。
これは、日本海軍の零式艦上戦闘機(ゼロ戦)を設計した実在の航空技術者・堀越二郎(1903~1982年)氏をモデルにし、かつ、作家・堀辰雄(1904~1953年)氏の代表作の一つに数えられる作品『風立ちぬ』(1938年刊)からの着想を織り込んだ創作。
あくまでもフィクションである。
主人公らが関東大震災に遭遇する場面は、現実ではありえないような描写だけれども、まるで海面に広がる波紋のように大地震の波がどんどんと広がっていき、地面が上下に大きく揺れる表現が、これぞアニメーションという感じで素晴らしいと思った。
単に実写フィルムをトレースしたかのように現実を模して描くより、アニメならではのデフォルメやスピード感はやはり重要なことだろう。
再会した二郎と菜穂子のその後のエピソードは、まだ克服できていない"不治の病"が2人の人生に大きな影響を与えるという展開になっているので、少し悲しい。
物語は、二郎が少年時代に思い描いた「飛行機を作りたい。空に飛ばしたい」という夢を叶えようとひたすら頑張るとても前向きな内容なのだが、暗くて重い雰囲気が時代背景にあることから、何だか切ない思いが後に残ってしまった作品だった。
さて、この時代の日本で"国民病"とまで言われた"結核"という感染症も、第2次世界大戦後の昭和30年前後になって抗生物質での治療が普及し、必ずしも死を覚悟する病気ではなくなったようだ。
江戸時代や明治・大正時代なら諦めもつくだろうが、昭和の時代に結核で亡くなってしまった人達は、ほんの14~15年後だったなら死ななくて済んだのかもしれない人が多くいただろうから残念だ。
(もちろん会ったことはないのだが)仁左衛門伯母は1941(昭和16)年に18歳で結核によって亡くなっているらしく、その伯母の友人の方から「慶○ちゃんが最後の挨拶にうちに来た時、結核なんだから直接会うのは駄目だと父に言われて、玄関のガラス越しにさよならを言ったんだよ」というエピソードを以前に聞いたことがあって、この『風立ちぬ』を見ている時に突然その話を思い出したりもしたものだから、途中、随分と涙が出てきてしまった。