仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

ディア・ドクター

2013年02月06日 | ムービー
『ディア・ドクター』(2009年/西川美和監督)を見た。
物語は、「四方を山に囲まれた神和田村。コンビニも無いその小さな村に研修医・相馬啓介(瑛太)がやって来た。かつて無医村だったその村には曽根村長(笹野高史)自慢の医師・伊野治(笑福亭鶴瓶)がおり、診療所に付帯する公宅に住みつつ、日夜その重責を担っていた。あらゆることを引き受ける献身的な姿に医師としての本分を見出した相馬だったが、ある日突然伊野が姿を消してしまう。失踪事件として届出が出され、波多野刑事(松重豊)と岡安刑事(岩松了)の捜査が始まったのだが・・・」という内容。
村長が「神様や仏様より頼りになる先生」と最大の賛辞を贈る通り、伊野先生は日々の診療はもとより患者さんの弱った心のケアまでしている様子だった。
それは、その有様を間近で見ていた研修医が研修期間終了後またこの診療所に戻って来たいと言い出すほどだったが、実はこの伊野という医者は(年老いて現役の医者を引退したと思われる)父親への自分なりの抵抗として、そのように生きているらしかった。
決して自分が志していたことではなく、"親への抵抗"という何とも子供じみた感情が出発点であるらしいことが描かれている。
ただ、村長すら伊野の素性を知らなかったし誰も知ろうともしていなかったという点から、そのような理由やきっかけはこの地域の住民達にとってどうでもよい類いのことだったと推測できる。
うすうすと伊野の"うそ"を感じながらも一緒に地域医療に従事していた看護師の大竹朱美(余貴美子)以外は・・・。
例えば、『巨人の星』(梶原一騎作)の主人公・星飛雄馬は父・一徹が思い描いた人生を歩むこととなり苦悩したが、この物語の主人公・伊野は残念ながらプロにはなれなかった。
そういう別の種類の苦悩が、彼を小さな村での"医療行為"に走らせたのだろうか。
ちょっと面白い不思議な話だった。