原子爆弾 その理論と歴史
著者 山田克哉
講談社 1996.7.20 (BLUE BACKS B-1128)
北朝鮮の核実験で一時大分騒がしかったのに、各国の制裁が効いたせいかは定かではありませんが北朝鮮が6者協議再開への姿勢を示し、各国間で最終調整中のために現在は何となく落ち着いているようにみえます。
この後も、北朝鮮が核の廃棄に進むのか、更なる強硬路線をとって核実験の再開に進むのか、目の離せない状態が続きます。
本書は大分以前に購入したものですが、今回の北朝鮮の核実験うけて改めて読み直してみました。講談社から出ているこの「BLUE BACKS(ブルーバックス)」は、科学全般を扱う定評のあるシリーズです。
本書のまえがきに次のような記述があります。
「現在、原子爆弾製造技術に関する「秘密事項」は事実上皆無に近い状態にあり、したがって条件さえそろえばどこの国でも原子爆弾製造は不可能ではなくなってきている。」
本書の題名にも「その理論と歴史」とあるように、原子爆弾の構造と製造方法も詳しく記述されています。
素人なりに考えてみても、「北朝鮮は、まだ人工衛星を打ち上げる技術を持たないのに、核実験には成功した」ことから見ても、原子爆弾の開発はその程度の技術レベルでも可能であると判断できるわけです。
(本書によるプルトニウム爆弾の材料と構造)
ポロニウム 爆弾の芯に起爆剤としてアルミ箔に包まれて置かれる。
ベリリウム粉 ポロニウムを球状に覆う。
プルトニウム ベリリウム粉を球状に覆う。主爆発物。
天然ウラン プルトニウムを球状に覆う。(ウランタンパーと云う)
爆発初期に放射線を反射して内部に閉じこめ、爆発の効率を高める。
爆 薬 32個に分割した爆薬で天然ウランを球状に覆う。
起爆装置 各爆薬にセットする。
丈夫な外装 爆薬の爆発力を外側に逃がさないため。
ポロニウムは今テレビを騒がせている「ロシアの元スパイの殺害」に使われたと云われる、非常に放射能の強い物質です。
基本的な構造は、打ち上げ花火の構造と同じです。ただ、爆薬を外側に置き、中心部を爆縮しプルトニウムを臨界状態にして爆発させるだけの違いです。
技術的に一番難しい部分は、爆発を同時に、かつ中心部に向けて均一圧力になるようにすることであると云われています。爆発に時間的なずれがあったり、爆発力に違いが発生すると、中心部の爆縮が不完全になり、未熟爆発と云う状態になります。
爆縮が始まると同時に一部で核分裂も始まります。その核分裂の力も非常に強いので、爆縮が完了する前に核分裂の力で爆縮の力が削がれてしまって、未熟爆発が起こることもあると解説されています。
そのため、「各材料の量、爆薬および起爆装置の性能と組み合わせ」がノウハウとなっているのでしょうか。
このため、実際に爆発させてみて爆縮技術の確立を確認する必要があり、北朝鮮も実験に踏み切ったものと思われます。
【読書感想】
本書を読むと、原子爆弾の開発技術はほぼ公開されており、極端な言い方をすれば、材料さえ揃えば誰でも作れる状態にあると思われます。
現在の我が国の技術レベルからすれば、原子爆弾の製造は簡単なことかもしれません。
我が国では、原子力発電所の燃料棒の再処理の結果、既にプルトニウム爆弾を数百個分作れるだけのプルトニウムを保有しています。
勿論、常時国連の厳しい監視を受けていますが、核保有国以外でプルトニウムを保有することを認められている国は、世界中で我が国だけです。
世界中にも原子爆弾を開発できる技術を持ちながら、核拡散防止のために核開発を抑制している国は沢山あります。
その中で、北朝鮮が世界を敵にまわしてまでも核開発を続け、とうとう核実験まで実施してしまいました。その事実をもとに、核保有国としての待遇を6者協議の各国に求めているのは、明らかに情勢を読み違っていると云えるのではないでしょうか。
各国が北朝鮮を核保有国として認めず、核開発関連施設の廃棄を求めているのは当然と思われます。
また、北朝鮮などから、テロリストにプルトニウムが拡散するのをなんとしても防がなければなりません。テロリスト支援国などにわたり、密かに核兵器を作られたりしたら大変なことになります。
プルトニウム爆弾の構造
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著者 山田克哉
講談社 1996.7.20 (BLUE BACKS B-1128)
北朝鮮の核実験で一時大分騒がしかったのに、各国の制裁が効いたせいかは定かではありませんが北朝鮮が6者協議再開への姿勢を示し、各国間で最終調整中のために現在は何となく落ち着いているようにみえます。
この後も、北朝鮮が核の廃棄に進むのか、更なる強硬路線をとって核実験の再開に進むのか、目の離せない状態が続きます。
本書は大分以前に購入したものですが、今回の北朝鮮の核実験うけて改めて読み直してみました。講談社から出ているこの「BLUE BACKS(ブルーバックス)」は、科学全般を扱う定評のあるシリーズです。
本書のまえがきに次のような記述があります。
「現在、原子爆弾製造技術に関する「秘密事項」は事実上皆無に近い状態にあり、したがって条件さえそろえばどこの国でも原子爆弾製造は不可能ではなくなってきている。」
本書の題名にも「その理論と歴史」とあるように、原子爆弾の構造と製造方法も詳しく記述されています。
素人なりに考えてみても、「北朝鮮は、まだ人工衛星を打ち上げる技術を持たないのに、核実験には成功した」ことから見ても、原子爆弾の開発はその程度の技術レベルでも可能であると判断できるわけです。
(本書によるプルトニウム爆弾の材料と構造)
ポロニウム 爆弾の芯に起爆剤としてアルミ箔に包まれて置かれる。
ベリリウム粉 ポロニウムを球状に覆う。
プルトニウム ベリリウム粉を球状に覆う。主爆発物。
天然ウラン プルトニウムを球状に覆う。(ウランタンパーと云う)
爆発初期に放射線を反射して内部に閉じこめ、爆発の効率を高める。
爆 薬 32個に分割した爆薬で天然ウランを球状に覆う。
起爆装置 各爆薬にセットする。
丈夫な外装 爆薬の爆発力を外側に逃がさないため。
ポロニウムは今テレビを騒がせている「ロシアの元スパイの殺害」に使われたと云われる、非常に放射能の強い物質です。
基本的な構造は、打ち上げ花火の構造と同じです。ただ、爆薬を外側に置き、中心部を爆縮しプルトニウムを臨界状態にして爆発させるだけの違いです。
技術的に一番難しい部分は、爆発を同時に、かつ中心部に向けて均一圧力になるようにすることであると云われています。爆発に時間的なずれがあったり、爆発力に違いが発生すると、中心部の爆縮が不完全になり、未熟爆発と云う状態になります。
爆縮が始まると同時に一部で核分裂も始まります。その核分裂の力も非常に強いので、爆縮が完了する前に核分裂の力で爆縮の力が削がれてしまって、未熟爆発が起こることもあると解説されています。
そのため、「各材料の量、爆薬および起爆装置の性能と組み合わせ」がノウハウとなっているのでしょうか。
このため、実際に爆発させてみて爆縮技術の確立を確認する必要があり、北朝鮮も実験に踏み切ったものと思われます。
【読書感想】
本書を読むと、原子爆弾の開発技術はほぼ公開されており、極端な言い方をすれば、材料さえ揃えば誰でも作れる状態にあると思われます。
現在の我が国の技術レベルからすれば、原子爆弾の製造は簡単なことかもしれません。
我が国では、原子力発電所の燃料棒の再処理の結果、既にプルトニウム爆弾を数百個分作れるだけのプルトニウムを保有しています。
勿論、常時国連の厳しい監視を受けていますが、核保有国以外でプルトニウムを保有することを認められている国は、世界中で我が国だけです。
世界中にも原子爆弾を開発できる技術を持ちながら、核拡散防止のために核開発を抑制している国は沢山あります。
その中で、北朝鮮が世界を敵にまわしてまでも核開発を続け、とうとう核実験まで実施してしまいました。その事実をもとに、核保有国としての待遇を6者協議の各国に求めているのは、明らかに情勢を読み違っていると云えるのではないでしょうか。
各国が北朝鮮を核保有国として認めず、核開発関連施設の廃棄を求めているのは当然と思われます。
また、北朝鮮などから、テロリストにプルトニウムが拡散するのをなんとしても防がなければなりません。テロリスト支援国などにわたり、密かに核兵器を作られたりしたら大変なことになります。
プルトニウム爆弾の構造
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