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佐藤忠良と安野光雅の対談「ねがいは普通」の紹介

2008-12-10 | 本の紹介

佐藤忠良と安野光雅の対談「ねがいは普通」の紹介

佐藤忠良さんと安野光雅さんの対談をまとめた一冊、「ねがいは普通」の紹介。佐藤忠良さんは彫刻家、安野光雅さんは絵本作家です。わたしの好きな作家たちです。もちろん作品もいいのですが、それぞれの考えていることがいいのです。このような生き方ができるといいなと思いながら、それとなくこの2人を意識してきました。その2人が対談している本ですので、楽しく幾度も読みかえしたものです。自然のこと昆虫や生物のこと、そして教育のことなど話は多岐にわたります。この2人が以前、教科書(図工・美術)の編集に携わったことがあります。多くの美術教師や作家が推薦していましたが、この美しい教科書はほとんど採用されることがありませんでした。それぞれの教育委員会の裁定によるものでしたが、おかしなこととわたしは思いました。わたしたち美術作家の多くは、幼稚園から大学まで教育現場に関わっています(芸術だけで生活が成り立ちませんから)。そうです、安野光雅さんも図工の先生でした。振り返ってみても、このときほど悲しい気持ちになったことはありません。この時を起点に、図工・美術の現場からわたしたちの仲間が去り始めたようにも思います。奇しくも図工・美術の時間が削られる時期と、一致するのです。この本を読んでいると、わたしはいつも悲しくなります、絵や音楽が育てる領域が狭くなってきているのを感じます。

◇佐藤忠良(さとう・ちゅうりょう)
1912年宮城県生まれ。彫刻家、東京造形大学名誉教授。シベリヤ抑留生活の後、日本人の顔を主題に作品を発表。その後今日まで、瑞々しく気品に溢れる作品を制作し続け世界的に評価されている。すぐれたデッサンにも定評がある。

◇安野光雅(あんの・みつまさ)
1926年島根県生まれ。画家・絵本作家。教員生活のかたわら装丁などを手がけ、最初の絵本「ふしぎなえ」を出版。以来今日まで、子供にも大人にも親しまれる数々の絵本を制作し、国際的に高い評価を受ける。すばらしいエッセイストでもある。

 



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