佐藤忠良と安野光雅の対談「ねがいは普通」の紹介 佐藤忠良さんと安野光雅さんの対談をまとめた一冊、「ねがいは普通」の紹介。佐藤忠良さんは彫刻家、安野光雅さんは絵本作家です。わたしの好きな作家たちです。もちろん作品もいいのですが、それぞれの考えていることがいいのです。このような生き方ができるといいなと思いながら、それとなくこの2人を意識してきました。その2人が対談している本ですので、楽しく幾度も読みかえしたものです。自然のこと昆虫や生物のこと、そして教育のことなど話は多岐にわたります。この2人が以前、教科書(図工・美術)の編集に携わったことがあります。多くの美術教師や作家が推薦していましたが、この美しい教科書はほとんど採用されることがありませんでした。それぞれの教育委員会の裁定によるものでしたが、おかしなこととわたしは思いました。わたしたち美術作家の多くは、幼稚園から大学まで教育現場に関わっています(芸術だけで生活が成り立ちませんから)。そうです、安野光雅さんも図工の先生でした。振り返ってみても、このときほど悲しい気持ちになったことはありません。この時を起点に、図工・美術の現場からわたしたちの仲間が去り始めたようにも思います。奇しくも図工・美術の時間が削られる時期と、一致するのです。この本を読んでいると、わたしはいつも悲しくなります、絵や音楽が育てる領域が狭くなってきているのを感じます。 ◇佐藤忠良(さとう・ちゅうりょう) |
|