- 絵本『あおいとり』を推奨します
メーテルリンクの『青い鳥』の本は多い、そのなかで1冊を選ぶとすれば、幼い子には立原えりかさんが訳した絵本『あおいとり』を、小学生には高田敏子さんが訳した童話『青い鳥』をわたしは推奨しています。挿絵はいずれもいわさきちひろさんが描いています・・・水に溶けた淡い色彩と情感に誰もが魅了されます・・・。いわさきちひろさんの挿絵が、メーテルリンクの『青い鳥』に隠されている『智恵』を美しい形で示しています、優れた画家のひとりです。
わたしたちにとって『ほんとうの幸福』とはなにか、目には見えない・・・目に見えるのは欲望とその成果(姿)であり、心の内にあるものは見えてこない・・・『青のイメージ』は古くから『智恵』を意味します・・・。
メーテルリンクの『青い鳥』は、夢幻劇の脚本として書かれました、それは象徴的でかなり哲学的な演劇でした・・・メーテルリンク婦人がこの『青い鳥』を子ども向けのお話にアレンジしました・・・これがよく知られる『あおいとり』です。
ヨーロッパの伝統的なお話(寓話を含む)には、象徴的なお話が多く、さまざまな教訓や記号(わかる人にはわかる伏せた言葉)が意図的に入れられています。ペローやグリムで育ったヨーロッパ知識人の多くがトランプさんやアベさんを嫌うのは、その発想の背景にあるのです。大人のみなさんにはメーテルリンクの作品(原作)を推奨します。
- 『Contes de Madame d'Aulnoy 』
マリー・ドォルノワ(d'Aulnoy1650 - 1705)の童話
Garnier Frères, Libraires-éditeurs (1882年刊)
マリー・ドォルノワの『青い鳥』とメーテルリンクの『青い鳥』とはストーリーも読後感も違いますが、これらのお話に『寓話』共有の色影(青のイメージ)が見られます。
17世紀末フランスで巻き起こった童話ブームは、貴族の女性たちの文芸サロンから始まった。サロンの常連シャルル・ペローに先駆けて、最初に文芸化された童話を出版したのがドォルノワです。conte de fées(妖精物語) という表現を初めて用いたのもドォルノワです。...
16歳で50歳近い貴族と結婚、賭博好きで放蕩者の夫から逃げ出し、フランス各地を逃避行、若い頃は苦難の連続でした。1685年パリに戻り、文藝サロンを開きます。作家として自立します、体験から《スペイン宮廷の記録》(1690)など宮廷秘話、旅行記や、恋愛小説《イポリット》(1690)などを発表しました。96年から99年にかけて出版された《仙女物語》をはじめとする8巻の童話集は、子どもばかりかおとなにも好評でした。
1882年に出版されたこの本『Contes de Madame d'Aulnoy 』(初版)は、Staal、Ferdinandus、H. Cottinの実験的装幀が素晴らしく、赤と黒、そして金による奇抜な構成、天金(小口)、表紙デザインだけでなく内部フルページクロモリトグラフ(平版)、黒のビネット(周辺装飾)と豪華な仕様になっています。