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政治単位統合の要因

2011-11-13 | 日記
水野和夫・萱野稔人 『超マクロ展望 世界経済の真実』 ( p.140 )

萱野 ドイツの社会学者ノルベルト・エリアスは、封建的な政治単位が近代においてもっと広い単位へと統合されていった要因について、ふたつのことを指摘しています。ひとつは貨幣経済の広がりであり、もうひとつは軍事技術の発達です。
 まず、貨幣単位の広がりについてですが、それまでの封建制では、国王は戦争に勝つと、奪った土地を臣下たちに分け与えていたわけですよね。日本でもそうです。徳川家康は対立勢力を倒して全国を平定すると、大名たちに領地を分け与えました。その土地の分与は、臣下たちがその土地をみずからの武力で支配し、それによってそこに独立した権力圏ができるということを意味します。ヨーロッパ中世の国王というのは、そうした各地域を割拠する封建領主をまとめて、戦争を指揮する存在でした。しかし、ひとたび戦争が終われば、諸侯たちはみずからの領地に帰っていく。つまりそこでは権力の遠心化作用が働いて、各地域は自立的な権力空間として分立するのです。
 しかし、中世も後期になり貨幣経済が発達すると、国王は俸禄として貨幣を与えるようになる。この時期、国王になるような有力な封建領主は、広範な支配権のもとでいち早く市場経済にむすびついて貨幣を蓄積するようになるからです。その貨幣を給与として自分の臣下に与えるようになるんですね。
 そうなると、それまでの権力の遠心化作用は止まり、集権化が進むようになる。そしてその集権化によって国王は権力を増大させていき、それまで群雄割拠されていた地域をひとつの政治単位として支配できるようになっていくんです。

(中略)

 もうひとつの軍事技術の発達というのは、具体的には火器の発明と普及ということです。それまでは、戦士貴族が鎧をきて馬に乗って、重騎兵部隊をつくって戦うというのが、戦争の基本的な形態でした。その場合だと、たとえ国王が部隊を統率しているといっても、戦士たちの独立性はものすごく高い。国王が戦争をやめようと思っても、戦士たちが戦うといったら国王はそれに従うしかない。しかし、銃が発明されると、状況はまったく変わってくる。銃器をいち早く取り入れることができた国王は、銃をもたせた歩兵部隊をみずから指揮することで、戦士貴族たちを相対的に無力化し、彼らの独立性をなくしていくことに成功するからです。その結果、国王の権力のもとに戦士貴族たちは統合されていき、彼らが割拠していた土地も国王のもとに統合されていく。こうして絶対主義王政の原型が生まれてきたのです。

水野 なるほど。銃という軍事テクノロジーの発達が政治の枠組みを拡大したというのはおもしろいですね。

萱野 おそらく同じことは現代にもあてはまるのではないでしょうか。現代では軍事的なテクノロジーがあまりに発達しすぎて、その生産が一国だけで完結することはほとんどなくなりましたから。

(中略)

 そういったことを考えると、いまや先進国が連合しなければ、軍事力を維持することができなくなってしまった。EUなんてその典型例ですね。ヨーロッパの主権国家って、日本と比べてもものすごく小さい。フランスのような大国だって、日本の半分の人口ですからね。ドイツが最大で八〇〇〇万ぐらいですね。
 そうなると、いまの時代に一国だけで軍事力を運営しようとしても、どうしても無理がでてきます。そこで、もっと大きな規模で軍事力を運営しましょうという話になって、ユーロ軍という構想ができてくる。EU大統領(欧州理事会常任議長)や、外交・安全保障の上級代表である外務大臣のポストを新設することなどを定めたリスボン条約(二〇〇七年)はその象徴的なステップです。


 貨幣経済の発達、および軍事テクノロジーの発達によって、封建的な政治単位が統合されていった歴史がある。現代においても同様に、政治単位が統合される流れがあるのではないか。EUはその典型例である、と書かれています。



 政治単位が統合されつつある場所としては、EUのほかには思いあたらないのですが、

 経済単位に限れば、そのような現象は現にあちこちでみられます。いま話題になっているTPPなどは、その典型例だと思います (「私は日本のTPP交渉参加を支持します」) 。



 しかし、欧州諸国に話を限れば、著者らの指摘は完全にあてはまります。

 ヨーロッパはいま、軍事面でも統合されつつあります。欧州ではいま、一国の経済力のみで空母を維持することは困難になってきたことから、空母の共同運用を模索する動きもあるようです。これが実現すれば、欧州軍の創設に大きく近づきます。

 また、経済面ではすでに、欧州統一通貨ユーロを導入しており、かなり統合されているといってよいと思います。

 したがって、ヨーロッパについては、政治単位統合への道を歩んでいる、とみてよいでしょう。



 けれども、これがアジアにもあてはまるかといえば、話は別だと思います。

 アジアはヨーロッパとは異なり、文化的・宗教的背景が異なりすぎるために、政治的統合は考え難いと思います。言語的にも違いが大きすぎます。ヨーロッパでは(たとえば)スペイン語がわかればポルトガル語はもちろん、フランス語やイタリア語も「だいたいは」わかると言われていますが、アジアではそもそも、文字そのものが大きく異なります。政治的にも、アジアには中国のような独裁国家もあれば、日本のような民主主義国家もあるわけで、アジアではヨーロッパのような「統合」は、とても考えられません。

 あり得るとすれば、中南米諸国の統合でしょうが、いまのところ、そのような歩みは報じられていません。おそらく、中南米は統合を目指していないのでしょう。

 したがって、欧州は統合への道を歩んでいるが、他の場所ではそのような歩みは考えられない、と考えておけばよいのではないかと思います。



 なお、現在、欧州金融危機が大々的に報道されていますが、大局的な趨勢(すうせい)としては、統合への道を歩んでいるヨーロッパが元に戻ることは考えられないと思います。したがって現在、モメにモメていますが、最終的には、ヨーロッパが一丸となって(必要とあらば)ギリシャやイタリアを支援・救済することになるのではないかと思います。



■関連記事
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 「軍事力を伴わない世界覇権はあり得ない
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■追記 ( 2011-12-04 )
 中南米における政治的統合に向けた動きは存在していたようです。その詳細については、「「中南米カリブ海諸国共同体」が発足」をご覧ください。
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