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中央銀行による貨幣注入の影響

2011-08-11 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.357 )

 今度は、金融政策の変更の影響を検討してみよう。そのために、経済が均衡にある状態において、突然中央銀行がヘリコプターで紙幣を国中にばらまいて、貨幣供給量を倍増させるとどうなるかを考えてみよう(ドラマチックではないが、より現実的な想定として、中央銀行が民間から国債を購入し、貨幣を注入すると考えてもよい)。こうした貨幣注入によって何が起きるだろうか。新しい均衡と元の均衡を比べるとどうだろうか。
 図11A-2は何が起こるかを示している。貨幣注入によって、供給曲線はMS1からMS2へと右方にシフトする。そして、均衡点はA点からB点へと移動する。その結果、(左側の縦軸に示されている)貨幣価値は、1/2から1/4に減少し、(右側の縦軸に示されている)物価水準は2から4に上昇する。つまり、貨幣供給の増大によって紙幣が余るようになると、その結果、物価水準は上昇し、紙幣1枚当たりの価値は低下する。


 貨幣供給量を増やした場合にどうなるかが書かれています。



 引用文中の図11A-2を示します。下図を見れば、著者が主張している内容が正しいことは「あきらか」です。



★図11A-2 貨幣供給量の増大

 貨幣価値(1/P)       物価水準(P)
(高い) *               * (低い)
   1 * x  MS1   MS2     * 1
    * x   x     x      *
    * x   x     x      *
 3/4 *  x  x     x      * 1.33
    *  x  x     x      *
    *   xx x A   x      *
 1/2 *・・・・・・・xxx・・・・・・・・x・・・・・・・・・・・* 2
    *    x xxx   x      *
    *    x   xxx x 貨幣需要 *
 1/4 *・・・・・・・・x・・・・・・・xxxxx・・・・・・・・・* 4
    *    x    B x xxxxx  *
    *    x     x      *
(低い) ******************************** (高い)
   0     M1    M2      貨幣量



 ところで、上記は「一般論」です。「デフレ経済の場合にも上記は成り立つのか」という疑問があることは、「政府が紙幣を印刷しすぎると、物価が上昇する」や「長期においては、貨幣の需要と供給が一致するように物価水準が調整される」に書いています。この疑問に対する「答えになりうる」記述が書かれていましたので、続けて引用します。



同 ( p.358 )

 貨幣注入の直接の効果は、貨幣の超過供給を生み出すことにある。貨幣注入の前には、経済は均衡(図11A-2のA点)にあった。そのときの物価水準では、人々は欲しいだけの貨幣をちょうど保有していた。しかし、ヘリコプターによってばらまかれた新しい紙幣を拾うと、人々は財布のなかに余分な貨幣を保有することになる。そのときの物価水準では、貨幣供給が貨幣需要を上回っている。
 人々は、この余分な貨幣供給をさまざまな方法で使ってしまおうとする。余分な貨幣で財・サービスを買う人もいるだろう。債券の購入や貯蓄性預金口座への預金を通じて、他の人々にお金を貸す人もいるだろう。この貸付けは、他の人々が財・サービスを購入するのに使われる。どちらの場合においても、貨幣注入は財・サービスの需要を増加させる。
 その一方で、財・サービスを生産する経済の能力は変化していない。生産と成長の章で学んだように、経済における財・サービスの生産量は、利用可能な労働量や物的・人的資本および天然資源と技術知識によって決定される。これらのなかで、貨幣の注入によって変化するものはない。
 したがって、財・サービスの需要の増加は、財・サービスの価格の上昇をもたらす。そして、物価水準が上昇することによって、貨幣需要が増加する。すべての取引において、人々はより多くの貨幣を使うからである。最終的に、経済は新しい均衡(図11A-2のB点)に到達する。新しい均衡点では、再び貨幣需要量と貨幣供給量が等しくなっている。このように、財・サービスの一般物価水準が調整されることによって、貨幣需要と貨幣供給が等しくなるのである。


 貨幣注入によって物価水準が変わるのは、人々が「財・サービスを買う」からである、と書かれています。



 要は、物価水準が変わるのは、「消費または投資が増える」からである、ということです。

 したがって、貨幣供給量を増やせば物価水準が上昇するというのは、あくまでも「一般論」であり、(特殊な場合である)デフレの場合については成り立たないと考えてよいと思います。つまり、デフレの場合には、論理の「前提」が現実に合致していないということです。

 とすれば、私が提起した疑問、すなわち、デフレの脱出策として中央銀行による資金注入は有効なのか、の答えは「ノーである」ということになります。もちろんまったく効果がないわけではないとは思いますが、事実上、「ノーである」と考えてよいのではないかと思います。

 したがって、日銀の態度、すなわち「資金供給はデフレの脱出策としては有効ではない」は「正しい」と考えてよいのではないかと思われます。



 なお、(一部の)経済学者によって「日銀が資金注入を行えばデフレは終わる」といった主張がなされていますが、これをどう評価するかは、考えかた次第だと思います。「ほとんど」効果がないとはいえ、「すこしは」効果があると考えられる以上、このような主張も「正しい」と評し得るからです。



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■追記
 記事のタイトルを「中央銀行による資金注入の影響」から「中央銀行による貨幣注入の影響」に変更しました。
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