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貨幣の中立性

2011-08-15 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.359 )

 これまでは、貨幣供給の変化によって、財・サービスの平均的な価格水準がどのように変化するのかを学んだ。それでは、貨幣量の変化は、他の主要なマクロ経済変数、すなわち生産、雇用、実質賃金、実質利子率などにはどのような影響を及ぼすのだろうか。この問題は長年にわたって経済学者をとりこにしてきた。たとえば、18世紀の偉大な哲学者であったデービッド・ヒュームも、この問題に関して本を書いている。今日、この問題に与えられる解答も、実はヒュームの分析に負うところが大きい。
 ヒュームと同時代の学者たちは、すべての経済変数を二つのグループに分けるべきであると考えた。第1のグループは名目変数(貨幣単位で測られた変数)であり、第2のグループは実質変数(物質的な単位で測られた変数)である。たとえば、トウモロコシの農家の所得は、金額で測られているので名目変数である。他方、彼らの生産するトウモロコシの量はブッシェル(重量)単位で測られているので実質変数である。同様に、名目GDPは経済の財・サービスの生産を金額で測っているので名目変数である。実質GDPは財・サービスの総生産量を測定し、財・サービスの現在の価格に影響されないので、実質変数である。このように、経済における諸変数を二つのグループに分類することを、古典派の二分法と呼ぶ(二分法とは二つのグループに分けることであり、古典派とは初期の経済学者たちを指す)。

(中略)

 ヒュームの考え方では、貨幣供給の変化は名目変数には影響するが、実質変数には影響を与えない。中央銀行が貨幣供給を2倍にすると、物価水準が2倍となり、名目賃金も2倍となり、他のすべての金額も2倍になる。しかし、生産、雇用、実質賃金、実質利子率といった実質変数は変化しない。このように、貨幣量の変化が実質変数と無関係であることを、貨幣の中立性と呼ぶ。

(中略)

 貨幣の中立性の結論は、われわれの住んでいる世界をどの程度現実的に描写しているだろうか。その答えは、完璧な描写ではない、ということになる。…(中略)…今日の多くの経済学者は、(約1~2年の)短期においては、貨幣量の変化は実質変数に重要な変化をもたらすと考えるに足る理由があると信じている。またヒューム自身も、貨幣の中立性が短期にあてはまるということについては、疑いを抱いていた(短期における貨幣の非中立性については次章で扱う。非中立性を学ぶことは、中央銀行が貨幣供給を変化させる理由を理解するのに役立つ)。
 それでも、今日の多くの経済学者が、ヒュームの議論は長期における経済を描写していると考えている。たとえば、10年ぐらいの時間が経過すれば、貨幣量の変化は、(物価水準のような)名目変数のみに重大な影響を与え、(実質GDPのような)実質変数にはほとんど影響を与えないだろう。経済の長期的な変化を研究する際には、貨幣の中立性が世界の仕組みを上手に描写してくれるのである。


 貨幣供給量の変化は、(長期においては)実質的なマクロ経済変数には影響を与えない、と書かれています。



 これは要するに、マクロ経済変数の「(実質的な)単位」が変わっても、経済の実体は変わらない、ということです。当然の主張です。

 もっとも、「抽象的な思考」によれば「当然の主張」であるといえるのですが、貨幣量は徐々に増えていくので、その過程で実体経済に影響が現れます。著者も、
今日の多くの経済学者は、(約1~2年の)短期においては、貨幣量の変化は実質変数に重要な変化をもたらすと考えるに足る理由があると信じている。またヒューム自身も、貨幣の中立性が短期にあてはまるということについては、疑いを抱いていた
と述べています。



 とすると、ここでひとつ、疑問が生じます。貨幣量が増えていく過程で実質変数に生じた影響が「(長期的にみれば)なぜ、消えるのか」ということです。

 もちろん最初に述べたように、「抽象的な思考」に基づいて考えれば「長期的にみれば影響は消える」ということになるのですが、「短期的には、たしかに影響がある」わけで、「長期的な経済現象は、短期的な経済現象の積み重ね」である以上、「(長期的にみれば)なぜ、効果が消えるのか」が問題になります。



 これは難しい問題なので、今後の課題とし、すこしずつ考えたいと思います。
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