言語空間+備忘録

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橋本郵政改革の評価

2009-09-29 | 日記
紺谷典子 『平成経済20年史』 ( p.110 )

 橋本郵政改革は、何を行ったか。それまでは法律で、郵便貯金は大蔵省に預託すると定められており、それを大蔵省が財投資金として分配していた。
 つまり、財投にお金を垂れ流していたのは、郵政省ではなく、大蔵省だったのである。橋本改革は、その「預託義務」を廃止した。郵便貯金は、郵政公社が自主運用することになり、財投の資金源として、自動的に財投に流れ込むルートは閉ざされたのである。
 代わりに、財投機関はそれぞれ、市場で「財投機関債」を発行することになった。必要な資金は債券発行によってまかなう、とされたのである。
 この「改革」のねらいは、財投の事業の必要性を市場に判断させる、という点にあった。債券の買い手がいるということは、投資家(市場)が、その事業は見込みがある、採算がとれると評価したことになる。
 債券が売れない事業は、「市場が評価しない事業=ムダな事業」という考え方なのだ。投資家の判断をゆがめないために、財投機関債には政府保証をつけない、政府保証をつければ、事業のリスクが正しく評価されないからだという。

(中略)

 財投機関であれ、なんであれ、政府の事業は、公共目的を持っている。そして、それは民間の投資採算とはまったく別の基準で判断されるべきものである。たとえ、投資採算が悪くても、公的に必要なら、実行しなければならない事業がある。逆に言えば、採算が合わないからこそ、公的に行うのである。
 自力で債券を発行できるような特殊法人は、逆に存続させるべきではない。市場が要求する金利を払える事業なら、民間ベースで採算がとれる事業であり、公的に行う必要がないからだ。それこそ「民にまかせるべき」なのだ。それなのに財投機関債を発行できる機関を残す、というのは、まったく逆なのである。
 財投事業において判断すべきは、それが採算がとれるかどうかではなく、公的な必要があるかどうか、である。
 そして、ひとつひとつの財投機関の事業が、必要かどうかを決めるのは、国民(政治)であって市場ではない。財投機関債の発行は、マスコミから学者までこぞって後押しした改革だったが、大間違いだったのである。
 財投機関債に政府保証をつけないとしたことも、大きな誤りだ。政府保証もつかないのに、基本的に採算のとれない事業の資金調達に、応じる者などいるだろうか。
 必要なことをできるだけ低いコストで行うのが、公的事業の効率性のはずである。だとしたら、資金調達も、できるだけ低い金利で行うべきだろう。それなのにわざわざ政府保証をはずして高い金利を払うのは、改革逆行ではないだろうか。


 橋本郵政改革は、公的事業に市場メカニズムを導入することを目指し、郵便貯金の預託義務を廃止して財投機関が財投機関債を発行する、とした。しかし、市場が判断するのは事業の採算性であって、必要性ではない。この改革は、大間違いである、と書かれています。



 著者は、公的事業とは本来、採算のとれない事業であり、財投機関債を発行するというのは、改革どころか、かえって改革に逆行していると説いています。

 たしかに、市場は投資採算を評価するのみであり、事業の必要性は判断しません。採算のとれる事業なら、それこそ民間にまかせるべきであり、採算がとれないからこそ、公的事業として行わなければならない。この考えかたには、異論の余地はないと思います。



 しかし問題は、いかにして 「必要なことをできるだけ低いコストで行う」 か、です。いかにして、「公的事業の効率性」 を高めるのか。それを考えるとき、市場メカニズムを導入する、という発想は、自然なものだと思います。

 効率性、というとき、通常は、市場メカニズムを考えると思います。市場メカニズムは、人類が生みだした ( おそらく ) もっとも効率的なシステムだからです。



 著者の意見 ( 橋本郵政改革批判 ) は正しい。けれども、批判を述べるのみでは意味がないのであり、「それでは、どうすべきか」 こそが、重要です。

 その部分を、著者は述べていない。著者は、「女性投資家の会」 の代表幹事、と本の奥付に書かれており、その立場であれば、述べる必要はないかもしれない。「どうすべきか」 を考えるのは政治家や官僚の役割であり、著者は、その立場にはない。しかし、批判するなら、「それでは、どうすべきか」 も、併せ、述べるべきではないかと思います。

 橋本改革には問題があった。私も、それには同意しますが、なにかを変えなければならない、というとき、たとえ問題・欠陥を抱えた方法であれ、改革の一歩を踏み出したことそのものは、評価されてよいのではないかと思います。
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