言語空間+備忘録

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キャピタルゲイン減税の効果

2011-04-27 | 日記
アーサー・B・ラッファー、ステファン・ムーア、ピーター・タナウス 『増税が国を滅ぼす』 ( p.264 )

 一九〇〇~九八年にアメリカの実質賃金は六倍になった。言い換えれば一九九八年の労働者は、一九〇〇年の労働者が一時間かけて得た賃金を、わずか一〇分で稼ぎ出す(*6)。何がアメリカの労働者の所得水準をこれほど押し上げたのか。答えは、資本と生産性である。
 資本に対する懲罰的な課税は、誤解に基づいて支持されることが多い。そうした税金に賛成する人は、資本から上がる収益が資本家のものになり、資本家だけが労働者よりも裕福になると思い込んでいる。キャピタルゲイン減税が往々にして「金持ち減税」とみなされるのは、そのためだ。だが先ほどの例でも明らかなように、労働者の生産性は、どれほどの資本を与えられるかによって大きく左右される。これは、どんな経済学者も同意する点だ。たとえば、ケネディ政権下で経済諮問委員会のメンバーを務めたノーベル賞受賞経済学者のポール・サミュエルソンは、労働者の生活向上において資本形成がいかに重要かについて、次のように論じている。
「労働者がより多くの資本財を与えられると、賃金水準はどうなるだろうか。仕事に使う資本財が増えれば、その労働者の生産高(または生産性)は上がる。したがって、資本家にとって労働者の価値が高まり、競争環境では実質賃金は上昇して、市場の賃金水準まで押し上げられることになる」(*7)
 資本形成が労働者に利益をもたらすという、サミュエルソンが述べたこの経済の原則は、事実によっても裏付けられている。過去五〇年間における賃金水準の変動の九〇%は、資本労働比率で説明できるのである。この比率が上がれば賃金は上がり、横這いなら賃金も横這いになる。したがって資本形成は、賃金上昇の主要因だと言うことができる(*8)。
 財務省で働いた経験を持つヘリテージ財団のギャリー・ロビンスは、資本蓄積の影響について、さらに驚くべき発見をしている。「資本ストックの増加がもたらす利益の大半は、資本家ではなく労働者のものになる。なぜなら、より多くの資本を手にした労働者の賃金は上がるからだ」(*9)

(中略)

 それではここで、キャピタルゲイン減税がどのような経路をたどって平均的な労働者に恩恵をもたらすのか、簡単にまとめておくことにしよう。税率が引き下げられると、次のことが起きると予想される。
 1 キャピタルゲイン税が引き下げられると、税引き後投資収益が拡大する。
 2 投資収益の拡大は、起業意欲を高める。また既存企業でも、機械設備や新技術など資本財への投資意欲が高まる。
 3 資本コストが低くなるので、生産コストも下がる。
 4 労働者にはより多くの物的資本が与えられるので、労働生産性(一時間で生産できる財やサービスの量)が向上する。
 5 賃金は究極的には生産性に比例するので、賃金も上昇する。
 このように、資本形式が増えれば大勢が恩恵を被る。では、どうすれば資本形成を増やせるのか。一つの答えが、資本に対する税金を下げることだ。一九六四年のケネディ減税と七八年のスタイガー減税は、こうした意図から実施された。レーガン減税、クリントン減税、ブッシュ減税も、すべてそうである。

(中略)

 図10・1に、キャピタルゲイン税率と課税対象キャピタルゲインの関係をグラフ化した。最近では一九八一年、一九九七年、二〇〇三年にキャピタルゲイン減税が行われているが、その後に必ず税収が増えていることがおわかりいただけるだろう。となれば、当然の疑問が湧いてくる。増税をすれば国庫に入ってくる税金は減るとわかっているのに、なぜオバマ大統領は税率を引き上げようとしているのだろうか。私たちにはどうしても理解できない。
 政府の税収予想担当者は、毎度のようにこのラッファー・カーブ効果に驚く。どうやら政府の経済モデルは、減税の成長促進効果をすこしも取り込んでいないらしい(あるいは、減税には何の効果もないという前提になっているのかもしれない)。キャピタルゲイン税を引き下げれば株取引が活発になるが、引き上げれば手持ちの株をそのまま保有する傾向が強まることも、計算に入れていないようだ。株にせよ他の資産にせよ、投資家は売るのをやめさえすれば、キャピタルゲイン税を払わずに済むのである。そうなったら、政府には一銭も税金は入ってこない。


 キャピタルゲイン税にも、ラッファー・カーブ効果が認められる。それにもかかわらず、なぜオバマ大統領は税率を引き上げようとしているのか。キャピタルゲイン減税は、資本家のみならず、労働者にも (賃金上昇という形で) 利益をもたらす、と書かれています。



 「オバマの「増税=公正」論」は、要はキャピタルゲイン税を引き上げるのは、「損得」計算に基づくものではなく、「公正」のためである、というものです。増税こそが公正なのだ、とオバマ大統領は考えているわけです。

 ところが著者はキャピタルゲイン「減税」によって、投資家も労働者も政府も「得をする」にもかかわらず、なぜオバマ大統領は「増税」するのかと述べています。著者の主張には、強い説得力があると思います。



 「ラッファー・カーブ理論」は、減税によって税収が増える場合・減る場合の両方があることを示しています。「オバマの「増税=公正」論」のところで、私がオバマ大統領の主張に理解を示した理由はここにあります。

 しかし考えてみれば、キャピタルゲイン税の場合には、投資家には「売らない」という選択肢があり、投資家は「売らなければ、キャピタルゲイン税を負担しなくてすむ」わけです。ここのところが、他の税とは決定的に異なります。

 「(個人) 所得税を払いたくないので、働かない」という人は (おそらく) 一人もいないと思いますが、「キャピタルゲイン税を払いたくないので、売らない」という投資家は多いはずです。とすれば、キャピタルゲイン税については (他の税に比べて) ラッファー・カーブが大きく偏った形をしていると考えられます。税率ゼロの近くにカーブのピークがきているはずです。

 したがって、(いまでも) 私はオバマ大統領の主張が「完全に」つまり「理論的に」誤っているとは思わないものの、(キャピタルゲイン税についてのラッファー・カーブの特徴を考慮すれば)「事実上」誤りであると言ってよいのではないかと思います。



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