言語空間+備忘録

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オバマの「増税=公正」論

2011-02-14 | 日記
アーサー・B・ラッファー、ステファン・ムーア、ピーター・タナウス 『増税が国を滅ぼす』 ( p.20 )

 それではここで、二〇〇八年大統領予備選中のちょっとしたエピソードをご紹介しよう。これを読めば、いまの政策姿勢がいかに成長と逆方向を向いているか、おわかりいただけることと思う。フィラデルフィアで開かれた民主党の討論会で、ABCニュースのチャーリー・ギブソンがキャピタルゲイン課税についてオバマ候補に質問した。



ギブソン キャピタルゲイン税の引き上げに賛成だとお聞きしましたが、CNBCのインタビューに応えて、「ビル・クリントン政権のときの水準以上には上げない」と言われました。当時のキャピタルゲイン税の税率は二八%、現在は一五%ですね。ただし実際にはクリントン元大統領は一九九七年に、税率を二〇%に引き下げる法案に署名しています。

オバマ そのとおりです。

ギブソン その後、ジョージ・W・ブッシュ大統領が一五%に引き下げました。そして税率が引き下げられるたびに、税収は増えています。税率が二八%だった一九八〇年代の方が、税収は少なかった。となると、なぜ引き上げるのですか。しかも現在のアメリカでは一億人以上が株を買っていて、増税の影響を被るというのに。

オバマ 私が言いたいのは、引き上げを考えるとすれば、それは公正のためだということです。上位五〇人のヘッジファンド・マネジャーが去年一年間で稼いだ額は二九〇億ドルに達する、と今日の記事に書かれていました。たった五〇人で二九〇億ドルですよ。そんなことができるのも、キャピタルゲインには、彼らの秘書より低い税率しかかからないことが一因です。これは公正とは言えないでしょう。

ギブソン しかし過去の例を見れば、税率を下げると税収が増えているのですよ。

オバマ そうですね、そういうことはあるかもしれない。しかし、そうならない可能性もあるでしょう(*17)。



 この驚くべき会話を聞いて、私たちは頭をかきむしった。たぐいまれなる資質に恵まれ、七万人以上の熱狂的な支持者でスタジアムを満員にすることができ、「大いなる希望」を実現しようとしているこの政治家は、現実の世界で経済がどのように機能するかについて、ひょっとすると全然わかっていないのではあるまいか。どうすれば雇用が創出されるのか、起業する人、リスクをとる人がどのように富を生むのか、理解しているのだろうか。全国のテレビ視聴者の前で、たとえ税収が減るとしてもキャピタルゲイン税を引き上げるかもしれないとオバマは認めた。なぜならそれが「公正」だからだという。誰にとっての公正なのだろう。増税で税収が減ったら、誰もが、文字通り国民全員が、損をする。政府も、納税者も、経済も、労働者も。
 だがこれは、襲撃のほんの始まりに過ぎない。今後数年間で、キャピタルゲイン税だけでなく所得税、配当税、社会保障税、固定資産税などまで、広い範囲にわたる増税が行われるのではないかと私たちは懸念している。小さい政府に賛同する友人の多くでさえ、今後五~一〇年は増税やむなしと考えている。増える一方のメディケア(高齢者向け医療保険制度)とメディケイド(低所得層向け医療扶助制度)、さらにその他諸々の社会福祉コストをまかなうためには、それしかないというのだ。また、あのいやらしい代替ミニマム税(AMT)は、いまのところ高所得層五〇〇万人が納めているが、二〇〇九年には課税対象が中間所得層二五〇〇万人にまで拡大しそうである。ここ数十年ほどは、世界では減税が主流だった。アイスランド、アイルランド、英国、スウェーデン、そしてフランスでさえも減税を実施している。だがアメリカは二〇一〇年までに、投資、貯蓄、企業利益、株式保有にかかる税金が世界一高い国になりそうだ。そんな重石を載せられたら、グローバルな競争にどうやって打ち勝つことができるだろう。高い税金がアメリカ経済を健全化するとは思えない。
 一つ確実なのは、政府が経済政策の方向性を誤ったら、経済成長を生み出すエンジンはストップしてしまうということだ。朝が来れば日が昇るのと同じぐらい、これは確実である。政策は一国の経済を左右するからこそ、私たちは本書を書いた。繁栄は偶然の産物ではなく、成長は成り行きで実現するものではない。大切なのは経済政策であり、企業努力や労働意欲を高めるようなインセンティブである。


 過去のデータは、税率を下げると税収が増えることを示している。それにもかかわらず、オバマ候補(現大統領)は税率を上げると主張している。なぜならそれが「公正」だからだという。誰にとっての公正なのか、増税で税収が減ったら、誰もが、文字通り国民全員が、損をする。政府も、納税者も、経済も、労働者も、損をするというのに、と書かれています。



 税率を下げると税収が増えるという(著者の)主張の是非は、今後、この本を読み進めていく過程で検討します。

 今回は、オバマの主張の是非について、意見を述べます。



 オバマ候補(現合衆国大統領)は、次のように述べています。
ギブソン しかし過去の例を見れば、税率を下げると税収が増えているのですよ。

オバマ そうですね、そういうことはあるかもしれない。しかし、そうならない可能性もあるでしょう(*17)。
 このオバマの回答は、どう考えるべきなのでしょうか。

 「税率を下げると税収が増える」という経済学者の研究成果をオバマは理解していない、とも受け取れます。

 常識的に考えれば、税率を下げれば税収が減ってしまうはずであり、税率を上げれば税収が増える、ということになるはずです。日本で消費税増税論が出ているのも、「税率を上げれば税収が増えるはず」だという前提があります。

 とすれば、オバマは経済理論を理解しておらず、常識的な発想にとらわれているにすぎないとも考えられます。



 しかし、この本を読み進めればわかるのですが、「税率を下げると税収が増える」場合もあるけれども、「税率を下げると税収が減る」場合もあることがわかります。

 つまり、オバマの「そうですね、そういうことはあるかもしれない。しかし、そうならない可能性もあるでしょう」は、理論的にみて「正しい」発言です。もちろんオバマが経済理論を知らず、常識的な発想で「そっけない返事をした」可能性も否定しきれませんが、オバマは経済理論を理解しており、そのうえで「理論が成立する範囲」を考慮しつつ「的確な返事をした」可能性もあるわけです。



 著者は「全員が損をする」にもかかわらず、オバマは「公正」を理由に「全員が損をする」政策を主張しているが、それは「誰にとっての公正」なのか、それは本当に「公正」といえるのか、を疑問視しているのですが、

   増税で「全員が損をする」場合もあれば、
      「全員が損をしない」場合もある

わけで、著者の主張は「公平さを欠く」のではないか、著者の主張のほうが「おかしい」のではないか、と考える余地があります。

 オバマは「そうならない可能性もあるでしょう」=「増税で税収が減らない可能性もあるでしょう」と言っているにもかかわらず、著者は「たとえ税収が減るとしてもキャピタルゲイン税を引き上げるかもしれないとオバマは認めた」と述べています。たしかに、このように言えないこともないのですが、オバマは「的確な返事をした」可能性もあります。その可能性を考慮すれば、著者のオバマ批判は一面的にすぎるのではないかと思います。
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