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中国軍、50年間の租借権をもつ羅津港に進駐

2011-01-28 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.152 )

 いま金総書記は事実上、北朝鮮の国土を中国に切り売りしているのである。東北アジア資料センター代表の花房征夫氏の研究報告によれば、金正日政権は05年9月には朝鮮半島最北端の不凍港、羅津港の50年間の租借権を中国に渡した。この港は1932年に日本が満州国と日本本土を結ぶ最短交易港として開港したもので、戦略的に非常に重要な意味を持つ。65年には旧ソ連が同港を租借してベトナム戦争の軍事物資の輸送拠点とした。その戦略的拠点の使用権を中国は50年間の長期にわたって確保したのだ。しかも使用形態は、中国が北朝鮮の国土を借り上げ、そこで中国が行政権を執行するというもので、紛れも無い租借である。帝国主義と植民地主義を現代に蘇らせた、まさに現代の植民地なのである。
 中国は中国国内から羅津港に通ずる幹線道路の拡幅工事を行う約束でその道路の使用権も得た。周辺一帯の開発も広く行われ、中国資本と中国企業の進出が相ついで予定されている。羅津港の租借により、中国はこれまで手にしたことのない日本海への直接の出口を、はじめて得たことになる。これで日本は、日本海への中国の本格的進出と戦略的活用という厄介な問題に直面せざるを得なくなった。中国は必ず、日本海を中国の物流、貿易のために利用するであろうし、それは日本海が中国の内海になりかねない危険性を示唆するものだ。さらに、これまでの中国の日本に対する振る舞いをみれば、東シナ海も日本海も、本来は中国の海だという主張につながっていくことを私たちは覚悟し、その危機に備えなければならない。
 北朝鮮が中国に渡しているものは他にも数多くある。北朝鮮最大の鉄鉱山、茂山鉱山の独占的採掘権も中国が手に入れた。中朝国境周辺地域には、北朝鮮の未開発の地下資源が眠る鉱山が散在する。北東アジア最大の銅山である恵山青年銅鉱山にも、満浦亜鉛鉱山や、会寧の金鉱山にも中国の資本が投入された。
 花房論文によると、これらの地下資源鉱山は、中朝国境近くにあるため、中国が自力で電力を持ち込むことが可能で、物流も容易だという。


 北朝鮮の金正日政権は05年9月には朝鮮半島最北端の不凍港、羅津港の50年間の租借権を中国に渡した。羅津港の租借により、中国はこれまで手にしたことのない日本海への直接の出口を、はじめて得たことになる。日本海が中国の内海になりかねない危険がある、と書かれています。



 中国東北部は海に面していませんが、海への出口が得られれば経済発展が容易になります。したがって、中国としては、海に出たいと考えるのは当然だと思います。

 中国は海に出たい。北朝鮮は援助がほしい。両者の利害が一致していると考えられます。



 しかし、著者が問題視しているのは中国東北部が経済発展することではなく、日本海が中国の内海になりかねないことです。その危険性は、いま、さらに高まっているようです。

 今年、1月16日付のニュースを引用します。記事の引用元(リンク先)には地図もありますので、ぜひご覧ください。北朝鮮とロシアの境界部分、朝鮮半島のつけ根の部分に羅津港があることがわかります。



大紀元」の「中国軍、北朝鮮・羅先に進駐 日本海側の港施設を確保か」( 11/01/16 08:06 )

 【大紀元日本1月16日】韓国紙朝鮮日報1月15日付けの報道によると、中国吉林省に隣接する北朝鮮の経済特区羅先特別市に最近中国軍が進駐していたことが判明した。1994年に中国軍が板門店の軍事停戦委員会から撤収して以来、中国軍の北朝鮮駐屯は17年ぶりとなる。北朝鮮で突発事態が生じた際に中国軍が介入する可能性が指摘される中、注目を集めている。

 朝鮮日報が中国の対北朝鮮消息筋からの情報を伝えたところによると、昨年12月15日深夜、中国製の装甲車、戦車約50台が中国吉林省の三合から豆満江(中国名・図們江)を超え、羅先特別市から50キロ離れた北朝鮮の会寧に入ったという。また、同時期に中国遼寧省丹東市から軍用四輪駆動車が北朝鮮の新義州に入るのを目撃したという情報もあるという。

 駐屯した中国軍の規模は明らかになっていないが、韓国大統領府関係者は同日、朝鮮日報に対して、「少数の中国軍を駐屯させることを中朝が話し合ったと聞いている」とコメントした。中国が羅先市にある羅津港に投資した港湾施設を警備するためで、政治や軍事目的ではないとしている。

 一方、羅先市に隣接する中国吉林省琿春市は今年初め、同市で生産した石炭約2万トンを、羅津港の1号埠頭から上海に向けて輸送することが、中国メディアにより伝えられている。

 昨年3月、中国遼寧省大連市の企業が羅津港1号埠頭の最低10年間の使用権を獲得した。当時これを報道した中国共産党系紙「環球時報」は、羅津港の借用は「日本海への通路を開拓するためである」と報道し、日本海への出口がない中国にとって大きな意味を持つと伝えていた。

 2007年3月、中国は琿春市のある貿易会社を通して、北朝鮮に対して357億人民元を投資して羅津港の埠頭や道路建設を始めた。これにより、同港の50年にわたる共同開発と使用権を獲得したという。

 今回の中国軍駐屯について、韓国外交通商部の南柱洪(ナム・ジュホン)国際安保大使は、「羅先駐屯を契機として、中国は有事に際し、自国民保護などを名目として、兵力を大量に投入し、韓半島(朝鮮半島)問題に介入する可能性がある」との見方を示した。

 昨年末に北朝鮮が韓国の延平島に砲撃した事件の際、中国「環球時報」は、北朝鮮が有事の場合、中国として最も恐れることは脱北者の大量流入で中国の情勢が混乱することだと指摘した。北朝鮮に軍隊を駐在させることが急務であるとの軍事専門家の意見を報道した。

(趙莫迦Zhao Mojia)


 北朝鮮の経済特区羅先特別市に最近中国軍が進駐していたことが判明した。韓国外交通商部の南柱洪(ナム・ジュホン)国際安保大使は、「羅先駐屯を契機として、中国は有事に際し、自国民保護などを名目として、兵力を大量に投入し、韓半島(朝鮮半島)問題に介入する可能性がある」との見方を示した、と報じられています。



 報道では、羅先市・羅津港への中国軍進駐によって「中国(軍)が朝鮮半島問題に介入する可能性」が憂慮されていますが、

 それとともに、「羅津港が中国人民解放軍の軍港(海軍基地)になる可能性」も考えなければならないと思います。



 日本にとっては、(韓国も含む) 朝鮮半島全体が中国の勢力下に入る場合はもちろん、そこまでいかなくとも、(羅津港が) 中国海軍の基地になれば、

 (日本は日本海側に「曲がった」形をしているので) 日本海に面した地域全体が危険にさらされることになります。当然、沖縄レベルの基地が何か所か、日本海側にも必要になるでしょう。日本にとっての負担は、かなり大きなものになることが予想されます。

 しかし、逆に中国にしてみれば、日本海に面した海軍基地があれば、すくなくとも日本海の制海権の半分(大陸側)は中国の手に入ります。したがって軍事的にはもちろん、経済的にも (中国にとって) 大きなメリットがあるのではないかと思います。

 となれば、「中国は何としても、羅津港を軍事基地化したいはず」で、今回はその第一歩、とみることができるのではないかと思います。



 日本にとっていいことは何もなく、中国にとってはいいことづくめの「羅津港の軍事基地化」です。日本としては、これを阻止しなければなりません。

 阻止するためには、中国側の「口実」をなくすことが必要です。

 したがって「日本は早急に、朝鮮半島における対立(紛争)を終わらせるべく、手を打たなければならない」と結論されます。

4 コメント

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ロシアの視点も忘れないように (四葉のクローバー)
2011-05-27 14:46:37
>日本にとっていいことは何もなく、中国にとってはいいことづくめの「羅津港の軍事基地化」です。日本としては、これを阻止しなければなりません。

中国による「羅津港の軍事基地化」は、日本や韓国だけでなく、ロシアにとっても見過ごせない脅威です。

中国が羅津港にこだわる理由は、清国が帝政ロシアに、アイグン条約(1858年)や北京条約(1860年)で、沿海州とアムール州(中国人は外満州と呼んでいる)を奪われ、日本海への出口を失ったことにあります。

ロシアにとっても、中国海軍が、ウラジオストックと目と鼻の先にある羅津港に進出することは、中国から沿海州やアムール州を守るためにも、反対すると思います。

尚、現在でも、中国の地図では、ウラジオストック(海参蔵)、ハバロフスク(伯力)、ウスリースク(双城子)、というように、清国時代の名称も、しっかりと併記しております。

ですから、中国は、完全にはあきらめていないのです。

日本も中国を見習い、日本で発行する地図では、
サハリン(樺太)の地名についても、
ユジノサハリンスク(豊原)
ホルムスク(真岡)
アレクサンドロフ・サハリンスキー(落石)
というように、しっかりと併記すべきです。





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Unknown (memo28)
2011-05-28 13:38:44
 「日本で発行する地図」でも、「しっかりと併記」しているものもあったと思います。
 日本の場合、国家が併記を「強制」するのは難しいでしょうね。


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私が指摘したいのは (四葉のクローバー)
2011-05-28 18:09:15
私が最も指摘したいのは、「ロシアからの視点」が重要である、と言うことです。

しかし、櫻井氏は、ロシアについて、一言も言及してません。

その点で、この文章は「零点」です。
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Unknown (memo26)
2011-05-29 05:28:53
 あなたが指摘なさりたいことはわかりました。

 引用元は櫻井氏の本ですが、あの本は櫻井氏が雑誌かなにかに書かれた記事を「集めて本にした」ものです。したがって個々の記事は、当然、「分量(文字数)制限」を課されたうえで書かれているはずです。

 したがって櫻井氏がロシアについて言及していなくとも、とくに問題にはならないと思います。
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