MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

楽器の顎当て (3) ~ "厚み" と身体の寸法

2009-02-20 00:00:48 | 音楽演奏・体の運動

02/20   楽器の顎当て (3) ~ "厚み"と身体の寸法






 『楽器の顎当て』 シリーズには、これまでに

(1) 邪魔な厚み  (2) 材質の差?

の二回分があります。



 『運動の神秘』 シリーズ

(1) 深奥部の筋  (2) 筋肉の協調

と併せてお読みください。







 前回、顎当てを選ぶ際に、私が気になったのは、

①厚み②形状③取り付け位置 だと書きました。




 今回はそのうち、"①厚み" について、ご一緒に考えて
みましょう。




 レッスンについて学ばれた方は、「楽器を上げろ」と言われた
ことはありませんか。 また逆に、先生によっては、「下げろ」と
指示する方もおられます。

 この問題については、今ここでは触れません。 一旦
書き始めると、膨大な字数が必要ですし、音質など、
このような場で論じるのが不可能な要素もあるからです。




 ここでは、仮に

楽器を上げようとすると、どのような課題がつきまとうか

その場合に限定して書いてみます。





 今、この文をお読みになりながら、一つ実験をしてみてください。




 Violin か Viola を手にして、構えていると仮定しましょう。
楽器を持ったつもりで、(左)手を持ち上げてください。

 そして、手がどのぐらいの高さにあるか、まず確認して
みましょう。

 (1) 爪の高さを眼で確認してもいいし、

 (2) 何か背景の横線を基準にしても構いません。

 あるいは、

 (3) 宙空の卓上ランプなどに指先を触れておく

 (4) 身体全体を移動し、肘がテーブルの上面に触れるか
  触れないか
、ギリギリの位置を探して座っていただいても
  結構です。





 それでは始めます。 顎を上げてください

 視線は上を向き、鎖骨と顎骨の距離が離れますね?

 すると、先ほどの手の高さは、どうなっていますか?
上の (1)~(4)を基準にして判断しましょう。




 もしあなたが、「何か変化があった」と感じたなら、
「手が上がった」という方は、おそらくおられないでしょう。



 ただし、(1)、(2) は眼で確認しなければなりませんが、
顔が動いてしまっているので難しいかもしれませんね。

 (3) では指先が、上のランプから離れ、

 (4) なら、肘がテーブルに付こうとするのが分ると思います。

 どなたか、周りにいる方に判断してもらえれば、もっと
確実でしょう。





 「高さの変化を感じない」とおっしゃるようでしたら、次のことに
感覚を集中してみましょう。

 肘の手前の、上腕部の外側、あるいは内側の筋肉の感覚に、
何か変化は無いでしょうか? 顎を引いた場合と、顎を上げた
場合とで。

 私の場合は、顎を上げた場合に、かなり緊張を感じます。
言い換えれば、手を同じ高さに保つのが、若干苦痛になります。





 「それも感じない」という方もおられるでしょう。 その場合は、
残念ながら、もともと脱力がうまくいっていないのです。

 最初から力が入っているので、顎の動きに伴って生じる、
僅かな感覚の差が感じられないのです。




 以上に関しては、「お前の言うことはおかしい」と、反論も
おありでしょう。

 「このぐらいの力は、最低限、必要だろう!」

 私もこれまで、そのような自問自答の連続でした。

 しかし、残念ながらこの場では "対話" が出来ないので、
「はいはい、分かったよ、それで何が言いたいの…?」
と、半ば諦めていただき、先へ進ませてください。





 もし手が下がったとしたら、なぜそうなったのでしょうか?

 それは、顎を上げると、手を上げたままにしているのが
きつくなったからですよね。 "からだ" は正直です。



 言い方を変えれば、

腕の有効な長さが、一時的に短くなった

だから自然に下がってしまうのではないでしょうか。





 もし疑問に思われるようでしたら、それでは逆のことを
試してみましょう。

 引いていた顎を上げながら、同時に、手をさらに高く
上げようとしてみてください! 上腕部の筋肉、つまり
肩の先の部分が、悲鳴を上げるはずです。





 結局は、顎を引き、鎖骨に近づけた方が、

"手の長さに余裕があるように感じる"


とは言えないでしょうか?





 もしそう感じていただけるなら、

(1) "邪魔な厚み"で記した、「顎を引け」、「脇を締めろ

という、スポーツの専門家の教えの意味が、よくお解り
いただけるのではないでしょうか?





 "最短距離" で済むかどうかは、身体の脱力、疲労に

関わるとともに、運動効率上、大変重要な問題です。




 (続く)




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   運動の神秘

   (1) 深奥部の筋
   (2) 筋肉の協調
   (3) 筋肉の反目
   (4) 指先を広げる ①
   (5) 指先を広げる ②
   (6) 指先を広げる ③
   (7) ヴァイオリンで叩く?
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  (10) 三塁ベースは右折禁止



   楽器の顎当て

   (1) 邪魔な厚み
   (2) 材質の差?
   (3) "厚み"と身体の寸法



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