新型コロナの影響で、観光業界は青息吐息と聞くと、特に日本を代表する「観光都市京都」は大変だろうな~と思う人は多いと思いますが、さにあらず・・・「財政破綻しません」「明るい展望を開ける予算」。2月9日に発表された京都市の2023年度一般会計当初予算。市長の口からは、前向きな言葉が次々と飛び出した。国際文化観光都市を標榜する京都市は、深刻な財政難に直面し企業の破産にあたる「財政再生団体」に2028年度にも転落する恐れがあるとして、コロナ禍以前の2020年には行財政改革をとらざるを得ない状況まで悪化していました。「財政破綻する」と市民に負担増を求めてからわずか2年後に出した「正常化宣言」の背景は・・・2023年度京都市財政当初予算編成について、借金返済のための基金取り崩しなど財源確保のための「禁じ手」を22年ぶりに使わずに編成したと発表した。京都市の2023年度の市税収入が、企業関係税、個人市民税が増収となるほか、住宅など増加に伴い固定資産税が増加。加えて、地方交付税も大都市への配分の算定基準が変わったことなどで増え、市税収入は過去最高の税収を見込めるためという。市民サービスや事業の見直しや人件費の削減の効果もあり、2023年度の京都市予算編成は、収支均衡のめどがたったという。
コロナ禍で観光客の激減した京都市が、ナゼ財政収支が改善したのか?それはコロナ禍で観光関係行事の自粛や観光関連必要経費の軽減で、観光関係支出が大きく減った事が、市の財政負担低減に大きな寄与した結果です。住民税増収は、観光客の激減でオーバーツーリズム(観光公害)が解消し、市民の日常的生活負担が改善され京都市の住居地としての見直しが進んだ事、運輸関係の効率改善が企業活動にプラスに働いたからです。
元々、観光関連業者はコロナ禍以前から過少申告などで納税せず、観光は市の財政的負担だけで観光関連納税が市財政に寄与していないのです。幸い?コロナ禍で観光関連業者が営業損になっても、さして納税額に変化はなく市財政には影響ありません。インバウンド効果で観光客が増え観光関連業者の売り上げが増えても、市の税収は増えず支出が増えるだけ。納税しない観光関連業者と広い土地や寄付(志納金)、拝観料などを有しながら納税免除団体の宗教法人等が財政圧迫の原因となっているのです。京都市は他自治体に比し非課税対象者が多く居住し、その上課税対象者や観光業者など小規模営業者が所得を過少申告し市民税を納付しないため、市民税納付者率は驚くべきことに30%程で、実に70%の住民等は税を支払う事なく恩恵だけを受けていると云うのが実体です。
そんな中で京都市の財政を支えているのは郷土愛溢れる地元企業群です。京都には地元京都で成長した京セラ、任天堂、オムロン、ニデック(日本電産)、ローム、村田製作所、島津製作所など優秀な地元企業がたくさんあり、今も本社を京都市に構えています。それら企業は、多くの企業関連税を納付し、関連企業群で働く人たちは職場に近く快適になった市内に移り住み、住居を購入したり住民税を納付したりする存在になったのです。25年前の市政権者(市長)が、京都市発展のため京都駅南側の地域に産業集積地域(副都心)を設ける事を策定しました。今多くの地元企業の本社軍が集まって来ています。しかし現市政権者はその計画に鈍感で意識できないのか、支援するどころか旧市内の建物高さ制限をほぼそのまま適用したりして、インフラ整備もなおざりに行政運営しています。また、京都市内の文化施設を北部地域にばかり集め南北格差も著明で、南部地区の中には市内で人口の多い地区でありながら市バスが走っていないなど、偏在市政を続けています。今の京都市財政を支えているのは南部地域の企業群や住民だという認識が出来なければ市財政は元の木阿弥になってしまいます。
京都市が財政危機を招いた原因は、国際文化観光都市を標榜して行政が文化や観光に偏重し、市民の日常的負担や地元企業を顧みなかった京都市の政策に大きな誤りがあったというべきでしょう。京都市や京都市民にとって観光関連事業や活動は、負担ばかりです。それでも、国際文化観光都市と標榜する市政は観光と文化に偏重し、産業地域の南区、右京区、伏見区の地域や企業の活動を今でも軽んじています。既成概念を捨て、文化観光事業や観光客のための行政を抑制し、南部地域と住民、地元企業群に軸足を置いた行政をしなければ、コロナ禍の効果は薄れオーバーツーリズムで再び「財政再生団体」の危機に陥るでしょう。