時評が語るその時代

思うままに日々感じたことを掲載

日本は反面教師の価値だけ?

2008年12月27日 | インポート

ポールソン米財務長官は、上院予算委員会で証言し、米国の法人税制について「非効率的であり、米国企業の競争上不利だ」と語り、大胆な改革が必要と主張した。特に「日本は米国よりも唯一高い法人税率を採用している」と指摘し、日本を反面教師にして法人税率の引き下げを急ぐべきだと訴えた。米財務省は、法人税の改革案を提示。税率の引き下げも選択肢に挙げた。議会では企業の負担軽減に前向きな共和党に賛同者が多い。

グローバル化する世界の中で自国が遅れをとり存在感を失わないよう、各国はいろいろな対策を実施している。欧州を中心に主要国では法人税率を引き下げが必須課題として、ドイツは国税と地方税を合わせた実効税率を2008年から現行より約9%低い29%台にするほか、フランスも5年間で20%への引き下げる。オランダなど法人税減税を実施する国も多く、実効税率は20%台が主流になりつつある。企業の競争力を高めないと、国全体の成長と雇用を維持できないとの共通の危機感がある。日本は、法人税率が40%程度で高止まりしており、国際競争力で後れをとって、日本の優良企業の海外移転、外国資本の流失、企業の国際競争力の低下となって現れている。共産党や社民党は、口を開けば自民党の大企業優遇政策はケシカラン、法人税を引き上げ所得税減税をとお題目の様に云うが・・・。グローバル政策を持たない今の日本は、高い法人課税やバブル期対応、金融破綻収拾策の遅れなど、日本のような対応ではダメという世界の反面教師としての価値だけである。

また、企業は過去最高といわれる営業利益を上げていたのに、労働分配率(労働者への利益還元)が低く、従業員の賃金が上昇していない云々といわれる。事実を見るとその通りである。法人税や労働分配率の低さは大企業だけで無く、中小企業など全事業体に共通である。統計では、中小企業の方が労働分配率は低い。労働分配率の低さは、国内消費の減速を呼ぶ。企業は、利益を上げていても人件費を切り詰めるため、正社員を必要としない仕事は、賃金の安い派遣や非正規社員の準社員に切り替えている。これが労働分配率が低い原因となった。日本もグローバル化を反映して、実力実績評価社会になった結果、個人の能力評価がシビアになったのである。グローバル経済の下では、スキルが同じなら労働価値は国を超えて同一水準に収れんする。キャリアやスキルのない人、就業能力が低くやる気もない人は、それなりの評価しかされなくなったのだ。

法人税の低い国に世界の優秀企業が集まり、雇用が増え給料も上がる。国の税収も増え全国民がうるおう。反対に世界で競争できる日本企業でも、法人税を上げ賃金を上げれば、成り立たなくなり日本国外に移籍する。日本の国内企業が、世界との競争に負けた時や日本国内の賃金が上がり過ぎて優良企業が外国へ移籍すればどうなるか?企業は、実力のない日本人の雇用をやめて優秀な外国人の採用に切り替え、日本人の就職難低賃金の時代となるのは間違いない。法人税引き下げは企業優先の問題でなく、その様な事態を回避して日本の社会体制を維持するに必要な措置であり、早急な実施は不可欠といえる。

上場企業は利益の約4割、国外から得ている。今までの日本の景気は、日本のグローバル企業が支えていた。日本の優良企業の繁栄は、日本全体の繁栄に直結している。


労働市場の怪

2008年12月19日 | インポート

世界経済の失速で、一転買い手市場となった雇用関係。しかし今世界の企業は、有能な人材の獲得には死力を尽くしている。いわゆるヘッドハンティングだけでなく、将来の幹部候補生も含め有能な人材を求めているのだ。一定基準の能力を持った人を正規社員として定期的に多人数採用しているが、その人材だけでは企業は生き残れない厳しい状況なのだ。有能な人材は定期採用と関係なく、不定期に採用して企業は生き残りを図っている。有能な人は、単なる正規社員でなく、有利な条件で独自に企業と契約する契約社員として入社する。能力さえあれば正規社員でなく、それより有利な契約内容で契約社員や派遣社員として雇用するのが、世界では当たり前の採用就職方法である。有能な人材を獲得できるか否かが、企業の存続を決めるとして、有能人材獲得市場は今までにない過熱状態にある。

一方、売れる能力を何も持たず、単純労働しかできない人たちは、世界的に今までにない厳しい状況にある。世界景気の大幅後退で企業による解雇や内定取り消しが急増している。仕事がなくなって業績が悪化した企業は、必要のなくなった低質の派遣社員や契約社員を中心に解雇し、生き残りをかける。能力ある契約社員や派遣社員は逆により大切にされているが、自分の意思で企業を選ぶことが出来るので、より有利な企業へ移籍する。自分の意思で辞めるか企業に解雇されるかは、その人と企業の力関係。実力あるプロ野球選手は高額有利な条件で契約できるが、実力のない選手は低額か解雇となるのが当たり前だが、一般労働者も雇用関係は同じ原則である。

首切りの順番は、単純労働しかできない派遣社員と契約社員、次に請負社員、正規社員、残るのは能力ある契約社員や派遣社員となる

企業の定期採用方法にも変化がみられる。新学卒者採用の縮小だ。企業は、必要とする能力を持った人を必要人数採用すれば良く、定期に実施する採用試験も新学卒者と社会人の区別することなく募集採用する方式だ。。大阪府の知事もこの方式で公務員を採用すると示唆している。日本の企業が、定期方式で新学卒者採用試験をしているのは世界的には例外で、終身雇用制の名残である。能力もないのに短期間で職場を転々とする自己中若年者の風潮が、日本企業の人材育成負担を増大させ、雇用方式を国際基準に変化させたと言われている。

能力のない派遣社員や契約社員の救済は、福祉政策として政府が行わねばならない。例えば厚生労働省は、年長のフリーターを人材の不足する介護分野へを誘導する狙いで、雇用事業者への助成金制度を導入するという・・・でもね、最もコミュニケーション能力を必要とする医療や介護分野へ、最もコミュニケーション能力に欠けるフリーターを誘導するとは・・・驚きの机上論。介護と雇用の思想がバラバラの厚生労働行政である。もっとも、いつも労働運動を抑えていた政府や自治体が、猫のような労働者を見るに見かねて後押しとは、前代未聞。踏まれ叩かれ不当な扱いを受けても、従順で抵抗する力のない労働者。日頃から労働者意識を持って行動した事もない。解雇され家を追い出されてやっと立ち上がるのか?労働者に正規も非正規もない。労働者の身は労働者自身が守るもの。労働者は何の抵抗も示せず労働組合も堕落し、労働運動は地に落ちた感じ。行動力も迫力も感じられない労働者を雇用している企業も気の毒にみえる。戦後の日本を復興させたのは労働者の活力だったのに、今は昔の感あり。

途中で止まった小泉構造改革。不況や格差の発生を小泉改革原因論で逃げているが、本当の原因は既成概念や既得権から抜けられず改革に対応できなかった経営者やその人自身にある。この状況の中でも小泉改革を続ける政治家が待たれる。必要のなくなった従業員を解雇すると、企業の一方的首切りだと社会の批判が湧き上がる。公務員の首切りや給与引き下げを一方的に主張していた人達が、手のひらを返して企業の一方的首切りに抗議するとは、ずいぶん滑稽で身勝手なこと。公務員か非正規労務者かは本人の選択で、同じ労働者だ。


生活資金の確保

2008年12月13日 | インポート

国民年金や厚生年金などの公的年金では「老後の生活費をまかなえない」と82%の人が思っている事が、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」で明らかになった。私的年金を含め年金保険は掛け金に比例した年金額しか受取れないのが当然でしょう。生活費を年金でまかなえる範囲内に切り替えるほかありません。甘ったれるんじゃネー。老後に必要となる生活費の事を若い時に考え、それに見合った年金が受取れるよう、私的年金保険や公的年金保険を掛け、積み立てるのが当たり前です。8割以上の人が生活費をまかなえないと云うことは、8割以上の人の見通しが甘かったと云う事になります。足らないと云うのであれば「もっと年金保険料を払っていればよかったですね」と云う以外にない。現在の国民年金保険料は月額2万円にも満たない。2万円の保険料を支払って、いったい月額いくら受取るつもりでいたのか。厚生年金保険料は、所得のおよそ1割、共済年金保険料はそれより高いです。他人の受取る年金額と自分の受取る年金額を問題にしますが、払った年金保険料も比較しましょう。年金保険だけでなく、医療保険も同じような状況にあり、それらの保険料すら納入しない輩が増えています。医療が必要になった時や年金の必要な年代になった時どうして生活していくつもりでしょう。生活保護を当然のように受け取り、国家の厄介者になるつもりかな~。厚生労働省の調査によると、2007年時点で生活保護を受けている高齢生活保護受給者(65歳以上)約60万人のうち、53%の約30万人が公的年金を受け取れない「無年金者」である。そういう人は若い時にも厄介者であった確率が非常に高い。一生厄介者人生なんていやだね~。なお、生活保護支給額(8万8千円)は公的年金を支払ってきた人の受ける年金(6万6千円)の8割(5万3千円)以下に設定して当然でしょう。それが公平社会です。5万3千円で生活できないなら、公的年金支給額を上げるほかありませんが、生活保護費以外収入がないのですから、その範囲内で生活するのが原則です。とにかく、基本は、収入がなくなる事態になった時のことも考え対策を採っていなかった人の自己責任です。世界には生活費1日1ドル以下の人が2割以上います。5万円の生活保護費をもらって海外移住すれば豊かな生活ができるでしょう。被生活保護者移民政策です。血も涙もない言い方ですが、これは公平公正社会論です。変な平等論を持ち出した被害者意識を捨て、自省、自助努力しましょう。

公的年金への不信感が強まったと言われるが、ポピュリズム(大衆迎合主義)のマスコミや民主党が消えた年金記録などとあおって、年金不信が終息しないようかき回し、国民を大切にする正義の政党を装っています。マスコミや民主党に踊らされる事なく自分の生活感を改め、バカな国民にならないことです。


救急医療なにが問題か・・その2

2008年12月05日 | インポート

救急医療の問題を、医師の教育体制、診療科、地域の偏在や二階経済産業大臣のように医療従事者のモラルの問題と誤った解釈をする意見が多い。

医療従事者のモラルを問題にする前に、救急医療体制の維持には患者のモラルの向上が急務である。救急医療受診患者の内、救急病態でない患者が9割を占めている事実がある。本来救急患者でない9割の患者がいなければ、あらゆる救急患者を受け入れるに十分な救急医療体制は確保されているといえる。患者数に合わせ救急医療体制を膨らせば、医師などの医療要員も必要で益々医師などの不足に拍車がかかり、通常の医療体制維持そのものが危うくなる。なぜ救急医療を受診しているのかを、全く意に介さない自分勝手、自分中心の不良患者(患者でないものを含む)が救急医療を閉塞させている実態は深刻である。救急医療体制の維持には患者のモラルの向上が急務なのだ

また、麻生首相は「医師という集団には社会的常識の欠落した者や価値判断基準の違う人が多い」と発言したが、この発言には同意できるな~と思うところがある。例えば、映画「三丁目の夕日」を観てもわかるように、昭和30年代まで地域の開業医は、交番と同じように目立つ赤色の門灯をつけていた。が、今の開業医は自分の利益とリスク軽減のみを考え、医院と住居を分けたりして時間外・深夜休日診療、救急医療に参加しようとしない(医師会会員が多い)。救急医療体制維持のためには、医師の多数を占める開業医が時間外・深夜休日診療に参加する政策の実施が欠かせない。また、病院の管理者医師は、看護師等の勤務が時間的不規則勤務で通常勤務者に比し、精神的肉体的および社会的負担が数倍あることを専門知識として充分知っていながら、平気で連続不規則深夜勤を強要する状況に常識やモラル、罪の意識が全くないなどである。二階経済産業大臣は、「政治の立場で申し上げるならば、・・・」というのであれば、政治家として開業医のモラル、病院経営者のモラルそして患者モラルの向上に取り組むべきである。麻生首相は「たらたら飲んで食べて何もしない人の分の医療費をなんで私が払うんだ」とも発言している。循環器系疾患の患者の多くは、生活習慣改善や健康維持の自己管理をせず重篤な救急患者になっている率が極めて高い。その上病気に対する自覚が低く、入院してからも他疾患患者にくらべクレーマーになる困った人たちが多いのです。ただし、現役首相が言うのはチョット・・・??本来マスコミが啓蒙することだが、悪者いつも政治家、高級官僚と公務員、医師、教師そして警官という決まったパターンの報道ばかり。その姿勢が国民の判断を狂わせているが、マスコミにその自覚もない。

そもそも、日本は資本主義、自由主義経済の国である。医療業界も例外でなく、医療は福祉的行為であっても、公私の別なく病院は営利事業体である。救急医療を、いつでもどこでも安心して受けられるようにするには、それなりの経費負担が求められる。欧米のように高い負担をして安心高度な医療が提供される制度にするかどうかは、国民の選択である。今日本で国民の求めている救急医療体制は、わかりやすく言うなら、予約もせず安宿の料金で泊っていながら、高額高級旅館に予約宿泊したと同じ処遇や環境を要求しているようなもの。それは無理です。今の世界に日本ほど所得に関係なく平等に高い医療を受けられる国は存在しない。米国ならお金がなけれが救急車も利用できません。医療内容も厳格に区別されています。GM社が経営破たんに陥っているのも、従業員の医療経費の増大が原因の一つと言われているほど高負担なのです。国民皆保険に守られた日本人は、医療体制や医療費用に対する意識が欧米人に比しきわめて低い。まるで共産主義国家の国民か?と思うほど・・・日本の病院は共産主義国家のように国が管理する事業体ではありません。

日本の優れた医療を享受できる環境を維持するためには、患者のモラル向上は必須のことです。患者になる前に日頃から医療環境に深い関心を持ち、維持改善のため行動することが大切だと、医療界と直接関係ない私ですがそのように願っています。