まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

身近な問題でして 『老父よ、帰れ』久坂部羊著『カモナマイハウス』重松清著 

2024-01-28 09:00:52 | 

この挿画好きでして。これを見て選んだようなものです。
久坂部さん、初めてです。

45歳の矢部好太郎は有料老人ホームから認知症の父・茂一を、一念発起して、
自宅マンションに引き取ることにした。

認知症専門クリニックの宗田医師の講演で、認知症介護の極意に心打たれたからだ。
勤めるコンサルタント会社には介護休業を申請した。妻と娘を説得し、大阪にいる
弟一家とも折にふれて相談する。好太郎は介護の基本方針をたててはりきって取り組むのだが……。
隣人からの認知症に対する過剰な心配、トイレ立て籠もり事件、女性用トイレ侵入騒動、
食事、何より過酷な排泄介助……。(略)
懸命に介護すればするほど空回りする、泣き笑い「認知症介護」小説。

宗田医師の講演内容というのが、
「認知症の介護で重要なのは、感謝の気持ちです。それと敬意。今は認知症になって
しまっていても、みなさん、親御さんに感謝すべきことはありませんか」
恩返しのつもりの介護ですって。

さあ大変、この問いかけを聞いてからの好太郎さんは父親の介護のことを考え直し始めた。
「認知症の介護を難しくしているのは、自分の都合が紛れ込むからです。いい介護をしたい、
だけど、自分の生活は乱されたくない、これではいつまでたっても問題は解決しません」
なんて言われては、父親を施設に入所させていることが心苦しい。

ってなわけで、介護施設にいる父を自宅に引き取って、自分で介護し始めたわけよ。
冷静な奥さんの泉さんはしぶしぶでも協力することに、大阪に住んでいる弟夫婦も
客観的な意見を持ちつつも、好太郎さんの介護を応援するわけ。それぞれが、はっきり
自分の考えを言いつつも好太郎さんの意志を尊重する素敵な家族で、好太郎さん、恵まれている。
が、老父の介護はそうは好太郎さんの思ったようには進まない。
てんやわんやの騒動がほぼ毎日起きる。いやはや、それは自宅介護を決めた時からの想定内の
あるあるなはずで。

認知症介護の現実は厳しいことは承知の上で(頭の中だけ)読後感はまことにあたたかいのよ。
好太郎さんの考えていることや行動が可笑しくて、ついぷっと吹き出しそうになるのよ。
ユーモアたっぷり。それって、取り巻く家族が思いやりがあり優しいってことが根底に
あるのね、きっと。

私は夫の認知症介護を想定しつつ読んでいったので、速攻で施設入所にいたします、と決めたわ。
もちろん、そうなったら自分もよ。

 

 

空き家の数だけ家族があり、家族の数だけ事情がある――。
不動産会社で空き家メンテナンス業に携わる水原孝夫。妻・美沙は、両親の看取り後、
怪しげな「お茶会」にハマっており、31歳になった元戦隊ヒーローの息子の将来も心配だ。
そんなとき、美沙の実家が、気鋭の空間リノベーターによる「空き家再生プロジェクト」
の標的になるのだが…実家がきわどい「空き家再生策」の標的に!?
空き家をめぐる泣き笑いの家族劇、いざ開幕!

全国の空き家は849万戸で、人口がそれより少ないブルガリアやデンマークなら、
〈一つの国がそっくり引っ越してきても受け容れられるほどの空き家が、いまのニッポンにはある〉
そうだ。主なき家は無用に見えるが、柱の傷は住んでいた家族の歴史でそれぞれに思い出がある。

うーん、まあそうね。でもまあそうは言ってもやっぱり空き家になった自宅はほっておけない。
どこかでけりをつけなくてはいけない。
そのけりをつけるまでの過程が大事なんだろうな、と経験者の私は語る、なんて。

この物語も空き家をテーマにしつつ家族の関係を見つめなおしているから、重松清さんらしい。
中の登場人物70代の3人娘「追っかけセブン」(息子の追っかけね)
「夫婦関係は愛情→友情→人情→根性」というのが笑えて。なかなかいいよね。

 

小説なのか啓蒙本なのか分からない本2冊、面白かったのだけれど。
読み終わったら、物語らしい長編小説を読みたくなったことは内緒。

コメント (2)
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