たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

アブに惹かれて日留賀岳

2011年08月07日 | 近所じゃない栃木県の山
◎2011年8月6日(土)

<小山氏宅駐車場(6:45)……鉄塔(7:05)……林道終点(7:30)……木の鳥居(9:00)……日留賀岳山頂(10:20~11:00)…鳥居(11:50)…林道終点(12:50~13:00)…駐車場(13:40)>

 日留賀岳は真夏に歩く山ではないだろうと思っていた(実のところ確かにそうであった)。より涼しさを味わえる山に行きたかったが、梅雨に戻ったような天気が連日続き、考慮に入れていた信濃の山も谷川岳界隈も天気がよろしくない。会津から那須塩原にかけてのエリアだけが天気は比較的に安定していた。会津は先の豪雨で道路が寸断され、車を乗り入れられる状態にはない。結局、日留賀岳となった。いずれ大佐飛山、男鹿岳という想定がないわけでもないが、下地作りに日留賀岳もよろしかろう。展望が良ければ、山の位置関係も少なからず把握はできる。そんな気分で出かけた。

(高原山)

(林の中の道)


 6時前には歩き出したいところだが、人家の庭先に車を駐めるわけだから、5時台に到着というのも失礼だろう。常識的にせいぜい6時半だろうな。近くで草刈りをしているオッサンに道を聞いたりしながら、小山氏宅に着いたのは6時35分。正面に高原山が見えた。車を置く場所を指定していただき、軽く着替えをする。ここまで長袖で来たが、暑くなりそうだから、半袖にするか。記帳する。ペラペラめくると、さすが、この時期に歩く人は少ないようだ。今日は、今のところ自分だけ。お手製の地図をいただき、歩き出す。件の地図を見て驚いた。計算すると、何と、山頂まで185分となっている。昭文社版では260分。この75分もの違いは何だ?標高差はざっと1,200m。暑い時期だし、昭文社版の時間を基準に置いて歩ければいい。ちなみに、小山氏マップをよく見ると、「山頂まで4時間、下り3時間」という記載もあった。小山氏宅の裏手に回り、鳥居をくぐり、薄暗い林の中に入る。道はしっかりしているが、昨夜も雨だったのか、ところどころ滑って歩きづらい。次第に急になり、風も通わぬ林の中、一気に汗が吹き出す。人の気配に気づいたのか、汗の臭いに誘われたのか、アブが寄って来る。これはいつもの光景。今日は暑いからと半袖にしたのが失敗したかなとか、虫除けスプレーも効かないなと思う程度だった。日留賀嶽神社改築寄進の碑と上に小さな石祠。中には那智山青岸渡寺の御札。栃木の山を総ナメだ。現地での修行している間があるのかねぇ。

(林道終点)


 汗をたっぷりかいて鉄塔。地形図を見ると、この鉄塔の高圧線は蛇尾川ダムの塩原地下発電所を源に、弥太郎山の南ピークを経由して、ここを通過している。ここから林道歩き。視界は一気に明るくなった。林道はシラン沢林道。小山氏マップによれば、この林道は「進入禁止」となっている。ゲートもあるらしい。それ程荒れてはいないが手入れもされてはいない。東側の山並みがちらっと覗く。鉄塔のあるあたりは弥太郎山だろうか。林道の西側には比津羅山。これを今、巻いて歩いているが、帰りには登ってみるのが机上の計画。しかし、この林道歩きも、陽が照りつけて暑く、歩いて間もないのに体力が徐々に消耗いくのが分かる。すでに、汗拭きの手拭いはしぼれるまでになっている。林道終点に着いた時、そこまでの45分の歩きが2時間にも感じた。そして、この時点で、今日はバテると確信した。

(しばらくは平坦な道)

(こう見えても、結構な急登)


 日陰の林道終点でしばし休憩。ここは風通しがいい。アブがまた寄ってきた。さっきと違って数も増え、10匹ほどになっている。観察していると、まずは、置いたザックの、汗をたっぷり吸った背中あて部分にやって来て、あてが外れたように、こちらの身体に寄って来る。やはり汗の臭いか。緑色の目をした獰猛そうなのもいる。大きいのは攻撃してこないのにうるさくてかなわない。遠巻きにしてがなり立てるだけ。いずれ離れるだろうと、先に行く。ここから樹林帯の歩きが続く。比津羅山からの尾根が下る部分までは平坦な歩き。合流から上りになる。登山道は沢寄りに大きく迂回している。広く、わりとなだらかな尾根。迂回せずに直登してもさほどの労苦はないと思うが、踏み跡はさだかでない。さほどのヤブにもなってはいない。それなりの迂回事情があるのだろう。初めての山だから、冒険はやめておく。アブは離れるどころか、30匹ほどの輪にまでにふくれ上がってしまった。様子を見ながら、攻撃して来る。刺すところはほとんど同じ。首後ろと左右の手首。こちらも反撃に出るが、やっつけたと思っても、下に落ちては息を吹き返して、またすぐに攻撃に回る。こちらも少しはコツを覚え、つぶすほどに叩きのめすか、ダウンしたのをさらに踏んづける。こんな格闘が山頂までずっと続く。その間、15匹ほどお陀仏にしたが、その分、輪が半分に縮まるわけではなく、次々にどこからともなく補充される。さながら、アブのベールに包まれて山歩きをしているようなもの。歩きながら、気もそぞろで、何とかアブを撃退する方法しか頭にはなく、ほとんど、ルート上の記憶がない。大弛峠のアブジイさんのように、顔面を刺されることはなく幸いではあった。こんな山での半袖歩きは大失敗だった。ここまで来て、車に置いている長袖を取りに行くわけにもいかず、近づいたら殺されるとアブ群に印象づけるしか手はない。アブジイさんの姿を見てホームセンターで購入した顔面アミも、車の中に置き去りだった。もっと輪が広がったら、合羽を取り出すしか手はない。

(木の鳥居が2基)


 登山道は尾根筋をずっと行くのかと思っていた。ところが、樹林帯の中、尾根の下を沿って歩くように付いている。尾根に上がってみた。ジリジリと暑そうな陽がさす笹ヤブになっていた。その昔はここを歩いたのだろう。残雪期ならいいかもしれない。これを見ただけで早々に退散した。昭文社のガイドには、標高1100mから1400mにかけての上りが苦しいかのような記載があるが、1400mを過ぎても、急登は一向に緩くならない。樹林の中、少しは風通しのいいところを歩くとほっとする。ここはしばらく佇んで休みたいところだが、長い休憩は禁物。アブの攻撃にさらされる。スローなテンポですぐに歩き出す。さっき、腰掛けて休んだばかりに、ズボンの上から尻を刺された。全身汗だくで、ズボンすら、上から流れる汗で膝までにじんで濡れている。樹木の根が外に張って、滑って歩きづらい。木の鳥居を2基過ぎる。次第に空が上に出てきた。花もちらほら。ようやく、どこにでもある登山道に出たといった感じ。笹道になった。傾斜も次第に緩くなった。

(アルミの鳥居)

(こんなのや)

(こんなのや)

(そして、こんな花が咲いていた)

(長者岳と右後ろに小佐飛山)


 アルミの小さな鳥居を過ぎてから、日留賀岳の姿を目にした(実際のピークはさらに奥だったが)。花も増えた。すべて、知らない。きれいだと思っただけ。アザミのトゲが、手首の痒みに心地よくあたる。つい、こすってしまった。右手には長者岳と小佐飛山。まだかまだかと思いながら、ようやく山頂に到着した。3時間35分。どえらく長い距離を歩いて来たように感じた。

(そして山頂)

(山頂の一角に、ヤブ天への誘いが)

(北のピークまでは何とか行けなくもないような気がするが)

(左奥・男鹿岳、右奥・大佐飛山、正面に鹿又山)


 つきまとっていた30匹のアブは、山頂に着くや、どこかに散ってしまった。ようやくほっとして大休止。雲がかかって、展望は良くない。日光の山々はまるきし見えない。男鹿岳と大佐飛山がちらっと見えた。間近に見えると思っていたが、ここからの距離はかなりありそうだ。鹿又岳の下にはぐるりと塩那スカイラインが通っている。山頂からは、北に向かう踏み跡があった。その先には北側のピークがあり、そこから、東に尾根伝いにスカイラインに辿り着けそうな気がする。一筋縄ではいかないことは重々に承知しているから、踏み跡の先を見に行く気持ちにはさらさらなれない。自分には無理だと悟っただけのこと。残雪期に行くにしても、泊まりを想定した大量の荷物を背負っての延々歩きは、自分には耐えられないだろう。

(鉄塔)


 空腹を満たし、全身に虫刺され用の薬を塗り、下山にかかる。山頂で、水をあっという間に500mlも飲んでしまった。また、アブが寄って来るかと思ったが、意外や意外、1匹も来なかった。ようやく、快適に歩ける。日留賀岳の自然も楽しめる。だが長い。下りも本当に長かった。木の根に滑って尻餅をついたのが2回。すでに気分は喪失。比津羅山の尾根取り付きで、どうするかと迷うこともなかった。素通り。林道終点で一息。またアブが寄ってきた。今度はケタ違いの2~3匹の世界で、払うとさっといなくなって始末はいいが、刺される命中率は高く、翌日、左右の腕を腫れ上がらせてくれたアブのほとんどが、帰りの林道だった。予測どおりにバテた。

(鳥居を過ぎて小山氏邸に)


 小山氏宅の駐車場に着き、戻り時刻を記帳した。やはり、今日の歩きは自分一人だけだった。気温も30℃を超えていた。この時期のこの山歩き、やはり物好きの部類だろうな。帰り道、温泉に寄って汗を流すが、汗は一向に引かない。仕方なく、水風呂にしばらく入ってから出た。温泉の効用はまったくなしになってしまった。今回の日留賀岳、短時間歩きの割には気分的にしんどい山だった。アブに好かれなくとも、結果は同じだったかも。

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4 コメント

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Unknown (ぶなじろう)
2011-08-07 22:31:46
こんばんは。
今回も、クソ暑い中、ご苦労様でした。
日留賀岳も先行されてしまいました。この山も前々から登ろうと思いつつ、先送りしておりました。狙いは秋ですが、その時期は行きたい所がが多すぎて現在に至っております。おいらも、ウッカリすると夏のこの時期に行きそうな雰囲気になっていたのですが、今回の記事で絶対に夏は避けようと思いました。その意味で、大変参考になりました。
実は、「山の怖い話」で、アブの事を取り上げようかなと思っていた所です。アブは大嫌いです。
30匹は半端ではありませんね。疲れたとは言え、快速のたそがれさんの足をさらに早足にしたのではないでしょうか。
ぶなじろうさん (たそがれオヤジ)
2011-08-08 05:46:23
たびたびの先行をお許しください。趣向が似かよっているのでは、山も限定されますし、致し方ないことかも。
さて、アブに刺されまくった腕は昨日のうちに腫れ上がり、見苦しいものですから、今日は長袖で出勤です。何ともはやの状況です。
あまり、特定の山の悪口は言いたくはありませんが、しばらくは、「日留賀岳=アブ攻撃」ですよ。
行かれるのなら、絶対にこの時期は避けるか、この時期でなければダメでしたら、複数で行って、アブを分散させることですね。あとは、ハエたたき持参です。
秋ならいいでしょう。あそこも、紅葉は見事だと思います。
例の「山の怖い話」、いつも楽しみに拝見しています。ぜひ、アブの逸話を取り上げてください。お待ちしています。
アブの日留賀岳 (ハイトス)
2011-08-08 12:56:08
なるほど、この時期は避けるが良しですね。
実は今回の山行の候補の一つでした。
予定していた山梨の山々の予報がさんざんで日帰りに変更し物色していました。
この山はレポが豊富でして、なるほど小山氏邸の駐車場にお世話になって・・・等と考えておりましたが、暑そうなのと距離が結構あるのでと言う理由で、2,000m以上の標高の山に変更なりました。
今回の記事で秋以降にします。
比津羅山への寄り道ですが、自分も復路で余裕があれば寄りたいと考えました。
ハイトスさん (たそがれオヤジ)
2011-08-08 20:42:25
こんばんは。
ハイトスさんもぶなじろうさんもしかりです。コメントを拝見し、自分だけ一人貧乏くじを引いてしまったような気になっています。
直近で日留賀岳に行った方のネット報告でもあれば、完全武装で行ったのですがね。古いものでも、アブのことを記しているものなんかありませんよ。それだけ、この時期に歩く方は珍しいということでしょう。
苗場山の記事、まだ拝見していませんが、山頂周辺にはまだ残雪があったのではありませんか。そちらの方が大正解ですよ。
今回のことで、日留賀岳の印象は、これまでの山の中でも下位になりましたから、もう比津羅山に行くこともないでしょうね。代わりに、余裕をつくって行って来てくださいよ。レポートだけ拝見しますから。

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