5/20(土)成田11時20分発スリランカ航空─→コロンボ……アヌラータブラ……ボロンナルワ……キャンディ……コロンボ─→5/25(木)成田着7時40分
スリランカはずっと以前から行きたいと思っていた国だ。若い頃、海外旅行のパンフレットで目にした横たわった大きな金ピカの仏陀像と異様な形をした岩山の写真はいまだに強い印象として残っている。新婚旅行ではスリランカを所望したが、結納やら指輪で貯金は消え、旅費そのものが出せない立場だったため、口も出さず、今の女房の意向のままにカナダに行った。以来、スリランカとは縁が切れた。もっとも、今回行って改めて感じたことだが、インドを挟んで南西にあるモルディブならともかく、スリランカは新婚旅行で行くような国ではない。まして数十年前の自分のような感覚でいる若いのが今でもいたとしたら、アンタ変わっているね、よした方がいいよと言うところだ。
2月中旬のこと。勤務先の近くにある旅行代理店のチラシを眺めていると、<海外一人旅>企画ツアーなるものを見つけた。ツアーとはいっても一人で気軽に参加できる雰囲気だ。これはいい。「地球の歩き方」的な歩きをするのでは頭と時間、さらに言葉も使う。不本意ながらも、お仕着せにくっついて歩くのは至って楽だ。まして寺院やら廃墟の世界遺産回りに苦痛はない。連休明けだろうし費用も安い。即、参加申し込みをした。
(一日目・5月20日)
成田発11時20分のスリランカ航空。事前にスリランカ航空のオンラインチェックインをし、同時に、ここなら少しはましだろうと思える席を指定している。さも海外の一人旅には慣れています風な感じで成田を飛び立った。座席の列にはだれもいず、エコノミーながらも楽な姿勢でコロンボ空港に着く。現地時間17時20分。ほぼ定刻のフライトタイム。その間、2回の機内食では、ホワイトワインを頼んだのに赤いのがきたりして苦笑いして黙って飲んだりしている。言葉はテキスト通りには通じない。フライト時間は9時間半。時差は3時間半逆戻りだ。新着映画を観たり、成田でちょい読みのつもりで買った西村京太郎を読んだりと、さほどの長さは感じなかった。
(成田にて)
(機内食はカレー)
話が前後する。成田空港で、こちらはオンラインチェックイン済みだったから、ビジネスクラスの列に並んでさっさと荷物も預けることができたが、エコクラスの行列を眺めながら、あのカップル、ネエチャン達と同じツアーなのかなと不安に思いつつ、いずれにしても、このオッチャン一人ではさぞ浮いた存在になるだろう、もしかすると家に帰るまで口を開くことはないんじゃないのかと懸念しはじめると、思考は次第に萎縮し、やがて、今回の海外一人旅、これは失敗したかななんて後悔も出てきている始末だった。
ちなみに、スリランカ航空の乗客の4/5は浅黒い顔をした人たちで、これがまたどでかい段ボールやらスーツケースを一人でいくつも預けていたが、これは爆買い土産なのかどうかは窺い取れない。日本人観光客は20人はいたろうか。実際のところ、コロンボ空港は中継で、さらにアラブの方に乗り継ぐ人が多かったようだ。
さらに前後した話だが、コロンボ空港に着き、入国審査の手続きになると、事前に取っていたビザを挟んでパスポートを出すと、一瞥もせずにビザを返してよこした。せっかく取ったのになぁと思いはしたが、おそらく、パスポートNOでビザの有無は登録されているのだろう。前の日本人娘は何やら滞っていたが、スマホの画面を提示してパスしていたから、彼女も直前にビザを取得したのだろう。
空港では現地のガイド氏が手書きのプラカードを持って待っていた。なぜか他にツアー客はいず、すぐに日本語で「●●さんですか? では行きましょうか」と言われた。つまり、このツアー参加者は自分一人ということ。現地での5日間、最初から最後まで、同じガイド氏、ドライバー氏、そして自分と、3人での観光巡りになった。余談だが、このガイド氏、おばさんが日本人と結婚し、千葉に住んでいると言っていたが、そのおばさんと、テレビでおなじみだった<ワンポイント英会話>のウィッキーさんとは友達とかで、日本に旅行した際に会ったこともあるそうだ。
ガイド氏の日本語レベルはまあまあ程度。独学で覚えたらしい。そのためか、ローマ字で日本語を記せばわかってくれるものの、かな、漢字、カタカナはてんで読めない。難しい日本語、とはいっても例えば「たむろしている」といった程度のものだが、「TAMURO?」と首を傾げ、「gather without purpose」と適当な英語に直して説明する。それを彼がローマ字でメモをしては覚えるというシチュエーションが何回か続いた。そのやりとり、それはそれで自分にはおもしろいものだった。
空港の外に出ると、熱気でムッとした。メガネがすぐに曇った。迎えの車はカローラのアクシオ。現地では日本円で700万円もするそうだ。なぜか、あと一年は残っている日本の陸運局の車検ステッカーが窓に貼ってあったりしている。ここも以前はイギリス領土。日本と同じに車は左通行・右ハンドルだ。
(ホテルのロビー。翌日撮影)
車を1時間ほど走らせて今夜の宿に着く。結婚式を2組やっていて賑わっている。部屋はすぐそこだったので、荷物を自分で運ぼうとするととがめられた、ベルボーイなんてスマートなものではないが、ヒゲのオッサンに運ばれた。ここでチップ100スリランカルピーを払う。
夕食は機内食だったし、腹も空いてはいない。浴槽もあり、まずは風呂にでも入るかと、蛇口をひねったが、何分待っても水は湯にならなかった。水のシャワーを浴び、半端なすっきり気分でホテル内をブラブラしてみると、早速、蚊にさされた。部屋に戻る。成田の免税店で買ったウイスキーをストレートで一杯飲み、明日の予定地をガイドブックで読み、テレビでトランプが中東に行ったらしきニュース番組をダラダラと見ていたら、そのうちにコテッといってしまった。
それにしてもこのホテルはきれいとは言い難い。翌日、明るくなって気づいたことだが、長い髪の毛があちこちに落ちていたし、足拭きマットも汚れている。来た時にはトイレにペーパーが浮いていた。格安の海外一人旅はこんなものか。
(二日目・5月21日)
翌朝、起きてトイレに行くと、何やら、水槽の脇にハンドシャワーがある。昨夜は気づかなかった。これ、尻洗いのシャワー。必要もないのに試してみた。着ていたシャツが水浸しになった。これは前ではなく、後ろから回さないといけないようだ。しかし、外国だからと、携帯ウォッシュレットを持参してきていたが、外のどんな汚いトイレでもこの尻洗い機は備え付けてあり、持参ウォッシュレットに水を入れることはなかった。
そういえば、この尻洗い、ネットで、歯磨きに使ったという話を見たことがある。いくら何でも、上の口に使うものではないだろう。
(海)
昨夜はさっさと寝たので薄暗いうちから目が覚めた。濡れたシャツも乾かしたく、散歩に出かけた。海も見たかった。外に出ると、早速、メガネが曇った。湿度が半端ではない。ハンカチで拭ってもすぐにまた曇る。カメラのレンズはさらに曇りっぱなし。
この散歩で、あろうことか、気の良い日本人ぶりを早々にやらかしてしまった。
(こんな沼に連れて来られた)
ボーイさんに言われるままにホテルのプール脇を通って海辺に行く。さほどきれいなインド洋ではなかった。波も高い。サーフィンにはベストかもしれない。向こう側に工場地帯も見えているからロケーションも悪い。こんなものかとホテルに引き返そうとしたら、30代前半と思しき男に英語で声をかけられた。こちらが日本人だとわかったらしい。写真を撮ってやると言う。背景がきれいでもないので断わったが、あまりにしつこいので撮ってもらった。こいつ、カメラを返さないのでないかと警戒したが、あっさりと返して寄こしたので、少しは警戒も解いていた。もっときれいな海を見せてやると言う。ついて行った。やけに親切な男だ。今日は日曜日だからヒマなのか。ゴミの散乱するヤシの林を通ってちょっとした集落に出ると沼が現れた。その間、その辺でうろついている人たちとあいさつを交わしたりしているから、彼はここに住んでいるのだろう。
この沼を先に行くと、海がきれいなスポットがあると言い出す。そこまでしてたかが知れた海を見たくもないので、ホテルに帰ろうとすると、ボートに乗せてやるそうな。ちゃちな泥だらけのボートだった。これではボートというよりもボードだろう。櫂はただの板キレ。まぁこちらもヒマつぶしになるからいいやと乗り込む。
(どこにワニがいるんだい)
きたない沼を一周しただけのこと。沼は海に切れてもいなかった。途中で、林の中にワニがいると見せられもしたが、そんなもの見えやしない。まさか沼に突き落とされやしないだろうなと警戒感が再び出てきたが、その危険はなく沼からは無事に解放された。
(こんな演出もあった)
こんなところに長居は無用。ムダな時間を費やした。朝食の時間だからホテルに帰ると言うと、そこまで送ると言いつつ、ヤシの木に器用に登ってヤシのジュースを振る舞ってくれるサービスぶり。そして、ダメ押しでJapaneseは大好きだと言い出す。結局、こちらにしてみれば有難迷惑なことだったが、こんなに余計な親切にしてくれたのでは2000ルピー(日本円で1500円ほど)も払おうと差し出すと受け取らない。
これは本当に親切心でやったんだなと大甘に思っていたら、いきなり家族の話をしはじめた。子供が3人いて、親が入院しているそうだ。こちらにしてみれば、あっそうといった聞き流しだが、ここで険しい顔をして7000ルピーを要求してきた。やはりこれか。旅行に先だって、現地のこんな事前情報は得ている。。親切なんてもんじゃない。こりゃ、イタチかハイエナだな。毅然として断ればいいだけのことだが、ここは彼のテリトリー。たやすく仲間を呼ぶだろう。その結末は丸裸…で済めばいい方だろう。しかたなく7000ルピーを払うと、今度は別途、チップ代1000ルピーを要求してきた。本当にタチが悪い。都合8000ルピー。日本円で6000円。30分足らずのタカリ仕事。まっとうに働いて家族を養ったらどうだと説教をたれたかったが、命令形で「Work 何とか」と言おうとしたものの、堅実に、地道にとは英語で何だっけ、steadyか? はてまた、ここはYou shouldにするか、mustにするか、had betterでは弱すぎてわかりゃしないなと悩んでいるうちにタイミングを逸してしまった。こいつ、当初は米ドルを要求してきたから、日常的にこんなことをやっているのだろう。始末が悪い。
Richになって愛想良くホテル近くまで送って来て、別れ際に図々しくも握手を求めてきたが、無視して睨みつけてやった。
コロンボ空港で1万円を13500ルピーに両替していた。ゴミだらけのきたない所で半分近くをあっという間に捨ててしまった。こちらにもノコノコくっついて行った落ち度はあるが、スリランカの印象がここで悪くなった。以降、あちこちの観光スポットで物売りに声をかけられても、目を合わせないようにした。
この件、迎えに来たガイド氏に車の中で話すと、さすがにタチが悪いと思ったのか、ホテルに電話して問い合わせをしていた。どうも、海への行き先を教えてくれたホテルのボーイとヤツがグルになっているのじゃないのかということで終わったが、帰ったらメールで写真を送ってくれというので、30分の間に撮ったヤツの顔写真を3枚ほど帰国後に送った。その後、ホテルに写真を持って行くと返信はあったがどうなったのか。ホテルで、この男にカモられたJapaneseがいるから要注意の張り紙でもしてくれるのか。とんだ海外一人旅の始まりだ。
気を取り直して朝食。あまり食欲もなく、鶏肉のカレーで簡単に済ます。
さて、スリランカはチップ天国のようで、空港での両替はチップ代とビール代のつもりでいたが、8000ルピーも捨ててしまったので、また5000円をホテルで両替する。結局、以降、両替することはなかったが。
(英領であっただけに鉄道網は整備されている。ただ、電車ではない)
今日の予定は、日程表によればアヌラータブラ観光をしてシーギリヤに泊まるということになっている。シーギリヤのホテルは2泊だ。くつろげそうだ。
長いドライブ。行き交う車は、インド車と日本車が多い。日本車は中古車が結構走っていて、□□レンタカー、〇〇幼稚園、△△工業なんてボディに記したままのを目にする。面白いなと思ったのは三輪自動車。トゥクトゥクというのか、道路を走っている圧倒的多数がこれだ。自動車を含めて運転は概して荒っぽく、すぐに追い越しをかける。また、ウインカーを点滅したままで走っている車が多く、ガイド氏に聞けば、ウインカーの点滅音が出ないため、戻さないままで走っている車が多いのだそうだ。これでは危なくて現地でレンタカーなんぞ借りて自分で運転するなんてことは考えない方が無難だろう。
さらに、たまに野生の象が道端をノソノソと歩いていたりするし、ウロウロしている犬が多いのにも驚く。飼い犬なのかノラなのかも定かではない。そしてサルも横切るし、人も多い。ずっと人家が途切れることもなく続いているためだろうが、あちこちにヒマそうにたむろしていたり、道路工事をじっと眺めているような人もいる。
自分にはインド人と、スリランカの圧倒的なシンハラ人との区別はつかなく、大方が哲学者の顔に見えるが、現地の人には、少数のタミル人も含めて識別はできるらしい。このシンハラ人のガイド氏、タミル人のことを良く思っていないようで、タミル人のことをずっと「テロリスト」と言い続けていた。
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5。これは不動明王)
4時間かけてアヌラータブラに到着。寺院回りが始まる。実際のところ、何という寺に行ったのかは覚えぬままに歩いていて、後で写真とガイドブックを照らし合わせ、この先もまた、そういえばここに行ったなといった感じになってしまった。元々、スリランカの雰囲気、空気、自然に触れてみたいというのが目的だったから、世界遺産だの寺院の仏像や彫刻などを事前に調べて出かけたわけでもなかったし、苦にはならないが、それほどに見たいと思ったわけではない。したがって、記憶もまたその場限りのようなものだ。頭の中に地図もない。
最初はイスルムニア精舎。これは寺院の大方はそうなのだが、中に靴で入るのは禁止。さりとて靴下では汚れもする。サンダルを借りて、裸足になった。仏陀の涅槃像があった。あちこちの寺院に涅槃像と寝ている像があって、目をつむっているか、足指の位置がずれているかで見分けがつくそうだが、こんなのをダラダラ記していてもつまらないだろう。
続いてスリー・マハー菩提樹、ルワンウェリ・サーヤ大塔。どこに行っても、犬とサル(ハイイロオナガザル)がいる。たまにリスと九官鳥も見かける。ガイド氏に「犬猿の仲」という言葉を教えると、スリランカでも同じように仲が悪く、犬は仏様の使い(あるいは逆だったか?)だというようなことを言っていた。日曜日だからか、熱心に礼拝する人々がいる。
(蓮池)
(ここにも)
ドライブの途中でタバコタイムを取ってもらったが、スリランカの人に喫煙する人はまずいない。そして、メガネをかけた人も見かけない。たまたまガイド氏はメガネだったが、これは、以前勤めていたゴム加工工場でガスにやられたとのこと。タバコを吸っている間、ガイド氏がその辺に捨てられた空のヤシの実をひっくり返していた。何をしているのか尋ねると、開け口を上にしたままで捨てると、雨水が入り込み、そこから蚊が発生してデング熱を引き起こすのだそうだ。
(昼のカレー)
ランチタイムをはさむ。地元のライオンビールを飲む。食事はカレー。朝晩と続いた。
(サルの親子)
(その6)
(その7)
(その8)
(その9)
ホテルに着くまでの次のメニューは柄にもなくエステ。何遍ともなく仕事で行っていた台湾なら足裏マッサージとなる。アーユルヴェーダというスリランカエステなのだが、これは今回のツアーで行って失敗した例だ。エステは何でも体験とばかりに、あぁいいですよと、ここまで来る途中で気安くオプションに入れてもらった次第だが、日本円で12000円ほど払ったかと思う。ガイド氏にどれくらいのキックバックがあったのか、つい後にしてみれば考えてしまうのだが。
連れて行かれたエステの施設、きれいな建物ではなく、日本なら築50年見当のボロいもの。裏長屋といった感じだ。これからフランス人の観光客40人の団体が来るからと、急かせられ、まずはさっさと入った。
事前にマッサージ師を男女のいずれにするかと聞かれ、陽が出ているのに下心丸出しにするわけにもいかず、男の方が強くやってくれるというので男のマッサージ師をチョイスする。
個室に入ると、オッサンにパンツ一丁になれと言われる。パンツとはいっても自前のもので、昨夜、冷たいシャワーの後に履き替えたとはいえ、ここまで汗もかき、薄汚れてもいる。何となく不快な感じになりそうな気配。足裏マッサージですら、パンツ込みで全部あてがわれるものだし、普通、エステの後なら心身ともにすっきりしたいものだ。何だか、その辺に違和感がある。
全身にオイルを塗りたくられ、うつぶせで頭のてっぺんから足指先まで揉まれる。男のくせに力が弱い。尻は外すのだろうなと思っていたら、パンツに手を入れて両臀部を揉まれた。もちろんオイル付き。続いて仰向け。さすがにパンツに手は入れない。やられたら立場もない。
身体がオイルでテカテカし、ヌルヌルで気色が悪い。まして頭もマッサージされているから、抜けた毛が肩に複数本へばり付いているのが感触としてわかる。自分の手で取りたいが、手を出せる状況にはない。個室から出され、温いサウナルームへ。2人しか入れない。次の人は外で待機。隣にフランス人のオッチャン。別に不快な顔はしていない。
サウナで汗をかき始めると、隣のオッチャンが連れ出され、次のフランス人オッチャンが入る。そのうちに、半端な状態でこちらも出された。自分が来る前に団体さんはまだ来ていなかったから、彼らは低料金のショートコースかねぇなんて思ったりしている。
次は蒸し風呂のようなところ。ヤシだかバナナの皮で作ったような囲いに首だけ出して入れられるのだが、フランス人のオバちゃんがそこから出たところで、間髪入れずに放り込まれた。トドみたいなオバちゃんだったが、さすがに女性は上下のタオルをあてがわれている。囲いの中にはハーブを敷きつめている。とはいっても敷き方はまばらで、バナナの皮床が半分さらけ出ている。赤の他人が出た直後だ。せめて、敷き物のハーブを交換くらいはして欲しい。
このスチームバスに5分ほど横たわり、個室に連れ戻される。手も出せず、オイルが目に入って痛かった。自前のパンツはオイルと汗で汚れがひどくなっているはずだ。これでコースはお終い。オッチャンにシャワーを浴びろと言われ、隣のトイレに案内され、ここでシャワーを浴びる。シャワーそのものもすごい場所にあるが、これで少しはすっきりすると思っていたのは甘く、シャワーからは少量のぬるま湯がポタポタと流れているだけ。もちろん、ここで汚れたパンツは脱ぎ、変色したタオルを初めてあてがわれはした。
着替える。パンツはシャワーで一時的に脱いだが元のものをそのまま履く。南国だから嗅覚も鈍ってはいるものの、せめてパンツをタオル代わりにして洗えばよかった。石鹸を使ってもオイルは半分も流せずに下着のシャツとズボンにベタベタ感が移り、極めて不快。頭の髪もどういうことになっているのやら。クシやらブラシすらなかったし、シャンプーしたつもりでも何だかベトベトしている。
ざっと1時間半コース。ガイド氏に、オッサンに500ルピーばかりのチップをはずむように言われていたので握らせたが、外に出た時は何だかなぁといった感じになっている。かなり覚めていた。フランスの団体さんは賑やかに待っていたが、しょんぼりした顔はなく、皆、こんなのに慣れているのだろうか。
後のツアーメニューは何もなく、ホテルに入るだけだからいいものの、とにかく、確実なシャワーを今すぐにでも浴びてオイルを落としたかった。
このアーユルヴェーダ・エステ、東京あたりでやると4万円ほどするらしい(本当かねぇ)とガイド氏が言っていたが、当然、着替えもあって、タオルや湯もふんだんに使え、自前のパンツ一丁で通すということはまずないだろう。スリランカの片田舎でやるからこうなのか、まさか大都会のコロンボでやってもこのスタイルというわけではないだろう。失敗したとはいっても、これが本物かもしれないな。本物なら、この一回ぽっきりの体験でいいわ。それにしても、男客の場合はこうだったが、女客の場合はどんなやり方になるのだろうか。潔癖な女性ならいたたまれなくなるだろう。
(九官鳥)
(道端を象が歩いている)
(夕暮れのシーギリヤロック)
ホテルに向かう。途中で夕暮れのシーギリヤロックを眺める。これが、自分の若い頃に魅きつけられた岩山か。感慨はあるものの、まだ外は暑く、身体のオイルが汗をはじいてズボンのベルトあたりに溜りそうだ。さっさと車を出してもらい、ホテルに到着。
とにかく、すぐにシャワーを浴びたかったが、ここは浴槽もなくシャワーだけ。まっとうに湯が出てくれればいいが、ずっとぬるま湯のままで、しまいには水になった。それでも日本から持参のアカこすりを使ったから、少しは気分も良くはなった。
このホテルは2泊。スーツケースの中味をさらけ出して荷物整理。セフティボックスがあったので、パスポートくらいは入れようとしたがマニュアルはない。日本式に数字を入れて適当にボタンを押して開け閉めしていると、そのうちにけたたましいアラーム音が鳴り響いた。これはやばいと、フロントに電話しようとしたが、内線案内の電話表なんかどこを探してもない。5分ほど鳴らしっ放しにすると、ようやくアラーム音は消えたが、その間にホテルスタッフが気づいて駆け込んで来ることはなかった。こちらとてボーっとしていたわけでもなく、電気作動かなと思ってボックスを持ち上げて電気コードを探してみたり、毛布をかぶせて、音の鳴りを少しは低くしようと必死だった。
何食わぬ顔をしてレストランへ。今日は客が少ないというので、セットメニューしかない。ライオンビールを頼み、適当に選んだメニューは魚介ながらもこれまたカレー。カレーからは逃れられないようだ。まぁ、好きだからいいが。
食事の間に蚊に刺され、部屋に戻ってキンカンを塗りたくる。明日の行き先の予習をガイドブックでと思ったが、昨日の続きが気になって、西村京太郎であっという間に睡魔に襲われる。今夜もまた10時前の就寝。つけっ放しのテレビ、CNNでは昨日と同じトランプの中東訪問をやっていた。
しかし、今日は朝から、そしてこのホテルに着いてからも波乱だったわ。
<その2に続く>
スリランカはずっと以前から行きたいと思っていた国だ。若い頃、海外旅行のパンフレットで目にした横たわった大きな金ピカの仏陀像と異様な形をした岩山の写真はいまだに強い印象として残っている。新婚旅行ではスリランカを所望したが、結納やら指輪で貯金は消え、旅費そのものが出せない立場だったため、口も出さず、今の女房の意向のままにカナダに行った。以来、スリランカとは縁が切れた。もっとも、今回行って改めて感じたことだが、インドを挟んで南西にあるモルディブならともかく、スリランカは新婚旅行で行くような国ではない。まして数十年前の自分のような感覚でいる若いのが今でもいたとしたら、アンタ変わっているね、よした方がいいよと言うところだ。
2月中旬のこと。勤務先の近くにある旅行代理店のチラシを眺めていると、<海外一人旅>企画ツアーなるものを見つけた。ツアーとはいっても一人で気軽に参加できる雰囲気だ。これはいい。「地球の歩き方」的な歩きをするのでは頭と時間、さらに言葉も使う。不本意ながらも、お仕着せにくっついて歩くのは至って楽だ。まして寺院やら廃墟の世界遺産回りに苦痛はない。連休明けだろうし費用も安い。即、参加申し込みをした。
(一日目・5月20日)
成田発11時20分のスリランカ航空。事前にスリランカ航空のオンラインチェックインをし、同時に、ここなら少しはましだろうと思える席を指定している。さも海外の一人旅には慣れています風な感じで成田を飛び立った。座席の列にはだれもいず、エコノミーながらも楽な姿勢でコロンボ空港に着く。現地時間17時20分。ほぼ定刻のフライトタイム。その間、2回の機内食では、ホワイトワインを頼んだのに赤いのがきたりして苦笑いして黙って飲んだりしている。言葉はテキスト通りには通じない。フライト時間は9時間半。時差は3時間半逆戻りだ。新着映画を観たり、成田でちょい読みのつもりで買った西村京太郎を読んだりと、さほどの長さは感じなかった。
(成田にて)
(機内食はカレー)
話が前後する。成田空港で、こちらはオンラインチェックイン済みだったから、ビジネスクラスの列に並んでさっさと荷物も預けることができたが、エコクラスの行列を眺めながら、あのカップル、ネエチャン達と同じツアーなのかなと不安に思いつつ、いずれにしても、このオッチャン一人ではさぞ浮いた存在になるだろう、もしかすると家に帰るまで口を開くことはないんじゃないのかと懸念しはじめると、思考は次第に萎縮し、やがて、今回の海外一人旅、これは失敗したかななんて後悔も出てきている始末だった。
ちなみに、スリランカ航空の乗客の4/5は浅黒い顔をした人たちで、これがまたどでかい段ボールやらスーツケースを一人でいくつも預けていたが、これは爆買い土産なのかどうかは窺い取れない。日本人観光客は20人はいたろうか。実際のところ、コロンボ空港は中継で、さらにアラブの方に乗り継ぐ人が多かったようだ。
さらに前後した話だが、コロンボ空港に着き、入国審査の手続きになると、事前に取っていたビザを挟んでパスポートを出すと、一瞥もせずにビザを返してよこした。せっかく取ったのになぁと思いはしたが、おそらく、パスポートNOでビザの有無は登録されているのだろう。前の日本人娘は何やら滞っていたが、スマホの画面を提示してパスしていたから、彼女も直前にビザを取得したのだろう。
空港では現地のガイド氏が手書きのプラカードを持って待っていた。なぜか他にツアー客はいず、すぐに日本語で「●●さんですか? では行きましょうか」と言われた。つまり、このツアー参加者は自分一人ということ。現地での5日間、最初から最後まで、同じガイド氏、ドライバー氏、そして自分と、3人での観光巡りになった。余談だが、このガイド氏、おばさんが日本人と結婚し、千葉に住んでいると言っていたが、そのおばさんと、テレビでおなじみだった<ワンポイント英会話>のウィッキーさんとは友達とかで、日本に旅行した際に会ったこともあるそうだ。
ガイド氏の日本語レベルはまあまあ程度。独学で覚えたらしい。そのためか、ローマ字で日本語を記せばわかってくれるものの、かな、漢字、カタカナはてんで読めない。難しい日本語、とはいっても例えば「たむろしている」といった程度のものだが、「TAMURO?」と首を傾げ、「gather without purpose」と適当な英語に直して説明する。それを彼がローマ字でメモをしては覚えるというシチュエーションが何回か続いた。そのやりとり、それはそれで自分にはおもしろいものだった。
空港の外に出ると、熱気でムッとした。メガネがすぐに曇った。迎えの車はカローラのアクシオ。現地では日本円で700万円もするそうだ。なぜか、あと一年は残っている日本の陸運局の車検ステッカーが窓に貼ってあったりしている。ここも以前はイギリス領土。日本と同じに車は左通行・右ハンドルだ。
(ホテルのロビー。翌日撮影)
車を1時間ほど走らせて今夜の宿に着く。結婚式を2組やっていて賑わっている。部屋はすぐそこだったので、荷物を自分で運ぼうとするととがめられた、ベルボーイなんてスマートなものではないが、ヒゲのオッサンに運ばれた。ここでチップ100スリランカルピーを払う。
夕食は機内食だったし、腹も空いてはいない。浴槽もあり、まずは風呂にでも入るかと、蛇口をひねったが、何分待っても水は湯にならなかった。水のシャワーを浴び、半端なすっきり気分でホテル内をブラブラしてみると、早速、蚊にさされた。部屋に戻る。成田の免税店で買ったウイスキーをストレートで一杯飲み、明日の予定地をガイドブックで読み、テレビでトランプが中東に行ったらしきニュース番組をダラダラと見ていたら、そのうちにコテッといってしまった。
それにしてもこのホテルはきれいとは言い難い。翌日、明るくなって気づいたことだが、長い髪の毛があちこちに落ちていたし、足拭きマットも汚れている。来た時にはトイレにペーパーが浮いていた。格安の海外一人旅はこんなものか。
(二日目・5月21日)
翌朝、起きてトイレに行くと、何やら、水槽の脇にハンドシャワーがある。昨夜は気づかなかった。これ、尻洗いのシャワー。必要もないのに試してみた。着ていたシャツが水浸しになった。これは前ではなく、後ろから回さないといけないようだ。しかし、外国だからと、携帯ウォッシュレットを持参してきていたが、外のどんな汚いトイレでもこの尻洗い機は備え付けてあり、持参ウォッシュレットに水を入れることはなかった。
そういえば、この尻洗い、ネットで、歯磨きに使ったという話を見たことがある。いくら何でも、上の口に使うものではないだろう。
(海)
昨夜はさっさと寝たので薄暗いうちから目が覚めた。濡れたシャツも乾かしたく、散歩に出かけた。海も見たかった。外に出ると、早速、メガネが曇った。湿度が半端ではない。ハンカチで拭ってもすぐにまた曇る。カメラのレンズはさらに曇りっぱなし。
この散歩で、あろうことか、気の良い日本人ぶりを早々にやらかしてしまった。
(こんな沼に連れて来られた)
ボーイさんに言われるままにホテルのプール脇を通って海辺に行く。さほどきれいなインド洋ではなかった。波も高い。サーフィンにはベストかもしれない。向こう側に工場地帯も見えているからロケーションも悪い。こんなものかとホテルに引き返そうとしたら、30代前半と思しき男に英語で声をかけられた。こちらが日本人だとわかったらしい。写真を撮ってやると言う。背景がきれいでもないので断わったが、あまりにしつこいので撮ってもらった。こいつ、カメラを返さないのでないかと警戒したが、あっさりと返して寄こしたので、少しは警戒も解いていた。もっときれいな海を見せてやると言う。ついて行った。やけに親切な男だ。今日は日曜日だからヒマなのか。ゴミの散乱するヤシの林を通ってちょっとした集落に出ると沼が現れた。その間、その辺でうろついている人たちとあいさつを交わしたりしているから、彼はここに住んでいるのだろう。
この沼を先に行くと、海がきれいなスポットがあると言い出す。そこまでしてたかが知れた海を見たくもないので、ホテルに帰ろうとすると、ボートに乗せてやるそうな。ちゃちな泥だらけのボートだった。これではボートというよりもボードだろう。櫂はただの板キレ。まぁこちらもヒマつぶしになるからいいやと乗り込む。
(どこにワニがいるんだい)
きたない沼を一周しただけのこと。沼は海に切れてもいなかった。途中で、林の中にワニがいると見せられもしたが、そんなもの見えやしない。まさか沼に突き落とされやしないだろうなと警戒感が再び出てきたが、その危険はなく沼からは無事に解放された。
(こんな演出もあった)
こんなところに長居は無用。ムダな時間を費やした。朝食の時間だからホテルに帰ると言うと、そこまで送ると言いつつ、ヤシの木に器用に登ってヤシのジュースを振る舞ってくれるサービスぶり。そして、ダメ押しでJapaneseは大好きだと言い出す。結局、こちらにしてみれば有難迷惑なことだったが、こんなに余計な親切にしてくれたのでは2000ルピー(日本円で1500円ほど)も払おうと差し出すと受け取らない。
これは本当に親切心でやったんだなと大甘に思っていたら、いきなり家族の話をしはじめた。子供が3人いて、親が入院しているそうだ。こちらにしてみれば、あっそうといった聞き流しだが、ここで険しい顔をして7000ルピーを要求してきた。やはりこれか。旅行に先だって、現地のこんな事前情報は得ている。。親切なんてもんじゃない。こりゃ、イタチかハイエナだな。毅然として断ればいいだけのことだが、ここは彼のテリトリー。たやすく仲間を呼ぶだろう。その結末は丸裸…で済めばいい方だろう。しかたなく7000ルピーを払うと、今度は別途、チップ代1000ルピーを要求してきた。本当にタチが悪い。都合8000ルピー。日本円で6000円。30分足らずのタカリ仕事。まっとうに働いて家族を養ったらどうだと説教をたれたかったが、命令形で「Work 何とか」と言おうとしたものの、堅実に、地道にとは英語で何だっけ、steadyか? はてまた、ここはYou shouldにするか、mustにするか、had betterでは弱すぎてわかりゃしないなと悩んでいるうちにタイミングを逸してしまった。こいつ、当初は米ドルを要求してきたから、日常的にこんなことをやっているのだろう。始末が悪い。
Richになって愛想良くホテル近くまで送って来て、別れ際に図々しくも握手を求めてきたが、無視して睨みつけてやった。
コロンボ空港で1万円を13500ルピーに両替していた。ゴミだらけのきたない所で半分近くをあっという間に捨ててしまった。こちらにもノコノコくっついて行った落ち度はあるが、スリランカの印象がここで悪くなった。以降、あちこちの観光スポットで物売りに声をかけられても、目を合わせないようにした。
この件、迎えに来たガイド氏に車の中で話すと、さすがにタチが悪いと思ったのか、ホテルに電話して問い合わせをしていた。どうも、海への行き先を教えてくれたホテルのボーイとヤツがグルになっているのじゃないのかということで終わったが、帰ったらメールで写真を送ってくれというので、30分の間に撮ったヤツの顔写真を3枚ほど帰国後に送った。その後、ホテルに写真を持って行くと返信はあったがどうなったのか。ホテルで、この男にカモられたJapaneseがいるから要注意の張り紙でもしてくれるのか。とんだ海外一人旅の始まりだ。
気を取り直して朝食。あまり食欲もなく、鶏肉のカレーで簡単に済ます。
さて、スリランカはチップ天国のようで、空港での両替はチップ代とビール代のつもりでいたが、8000ルピーも捨ててしまったので、また5000円をホテルで両替する。結局、以降、両替することはなかったが。
(英領であっただけに鉄道網は整備されている。ただ、電車ではない)
今日の予定は、日程表によればアヌラータブラ観光をしてシーギリヤに泊まるということになっている。シーギリヤのホテルは2泊だ。くつろげそうだ。
長いドライブ。行き交う車は、インド車と日本車が多い。日本車は中古車が結構走っていて、□□レンタカー、〇〇幼稚園、△△工業なんてボディに記したままのを目にする。面白いなと思ったのは三輪自動車。トゥクトゥクというのか、道路を走っている圧倒的多数がこれだ。自動車を含めて運転は概して荒っぽく、すぐに追い越しをかける。また、ウインカーを点滅したままで走っている車が多く、ガイド氏に聞けば、ウインカーの点滅音が出ないため、戻さないままで走っている車が多いのだそうだ。これでは危なくて現地でレンタカーなんぞ借りて自分で運転するなんてことは考えない方が無難だろう。
さらに、たまに野生の象が道端をノソノソと歩いていたりするし、ウロウロしている犬が多いのにも驚く。飼い犬なのかノラなのかも定かではない。そしてサルも横切るし、人も多い。ずっと人家が途切れることもなく続いているためだろうが、あちこちにヒマそうにたむろしていたり、道路工事をじっと眺めているような人もいる。
自分にはインド人と、スリランカの圧倒的なシンハラ人との区別はつかなく、大方が哲学者の顔に見えるが、現地の人には、少数のタミル人も含めて識別はできるらしい。このシンハラ人のガイド氏、タミル人のことを良く思っていないようで、タミル人のことをずっと「テロリスト」と言い続けていた。
(その1)
(その2)
(その3)
(その4)
(その5。これは不動明王)
4時間かけてアヌラータブラに到着。寺院回りが始まる。実際のところ、何という寺に行ったのかは覚えぬままに歩いていて、後で写真とガイドブックを照らし合わせ、この先もまた、そういえばここに行ったなといった感じになってしまった。元々、スリランカの雰囲気、空気、自然に触れてみたいというのが目的だったから、世界遺産だの寺院の仏像や彫刻などを事前に調べて出かけたわけでもなかったし、苦にはならないが、それほどに見たいと思ったわけではない。したがって、記憶もまたその場限りのようなものだ。頭の中に地図もない。
最初はイスルムニア精舎。これは寺院の大方はそうなのだが、中に靴で入るのは禁止。さりとて靴下では汚れもする。サンダルを借りて、裸足になった。仏陀の涅槃像があった。あちこちの寺院に涅槃像と寝ている像があって、目をつむっているか、足指の位置がずれているかで見分けがつくそうだが、こんなのをダラダラ記していてもつまらないだろう。
続いてスリー・マハー菩提樹、ルワンウェリ・サーヤ大塔。どこに行っても、犬とサル(ハイイロオナガザル)がいる。たまにリスと九官鳥も見かける。ガイド氏に「犬猿の仲」という言葉を教えると、スリランカでも同じように仲が悪く、犬は仏様の使い(あるいは逆だったか?)だというようなことを言っていた。日曜日だからか、熱心に礼拝する人々がいる。
(蓮池)
(ここにも)
ドライブの途中でタバコタイムを取ってもらったが、スリランカの人に喫煙する人はまずいない。そして、メガネをかけた人も見かけない。たまたまガイド氏はメガネだったが、これは、以前勤めていたゴム加工工場でガスにやられたとのこと。タバコを吸っている間、ガイド氏がその辺に捨てられた空のヤシの実をひっくり返していた。何をしているのか尋ねると、開け口を上にしたままで捨てると、雨水が入り込み、そこから蚊が発生してデング熱を引き起こすのだそうだ。
(昼のカレー)
ランチタイムをはさむ。地元のライオンビールを飲む。食事はカレー。朝晩と続いた。
(サルの親子)
(その6)
(その7)
(その8)
(その9)
ホテルに着くまでの次のメニューは柄にもなくエステ。何遍ともなく仕事で行っていた台湾なら足裏マッサージとなる。アーユルヴェーダというスリランカエステなのだが、これは今回のツアーで行って失敗した例だ。エステは何でも体験とばかりに、あぁいいですよと、ここまで来る途中で気安くオプションに入れてもらった次第だが、日本円で12000円ほど払ったかと思う。ガイド氏にどれくらいのキックバックがあったのか、つい後にしてみれば考えてしまうのだが。
連れて行かれたエステの施設、きれいな建物ではなく、日本なら築50年見当のボロいもの。裏長屋といった感じだ。これからフランス人の観光客40人の団体が来るからと、急かせられ、まずはさっさと入った。
事前にマッサージ師を男女のいずれにするかと聞かれ、陽が出ているのに下心丸出しにするわけにもいかず、男の方が強くやってくれるというので男のマッサージ師をチョイスする。
個室に入ると、オッサンにパンツ一丁になれと言われる。パンツとはいっても自前のもので、昨夜、冷たいシャワーの後に履き替えたとはいえ、ここまで汗もかき、薄汚れてもいる。何となく不快な感じになりそうな気配。足裏マッサージですら、パンツ込みで全部あてがわれるものだし、普通、エステの後なら心身ともにすっきりしたいものだ。何だか、その辺に違和感がある。
全身にオイルを塗りたくられ、うつぶせで頭のてっぺんから足指先まで揉まれる。男のくせに力が弱い。尻は外すのだろうなと思っていたら、パンツに手を入れて両臀部を揉まれた。もちろんオイル付き。続いて仰向け。さすがにパンツに手は入れない。やられたら立場もない。
身体がオイルでテカテカし、ヌルヌルで気色が悪い。まして頭もマッサージされているから、抜けた毛が肩に複数本へばり付いているのが感触としてわかる。自分の手で取りたいが、手を出せる状況にはない。個室から出され、温いサウナルームへ。2人しか入れない。次の人は外で待機。隣にフランス人のオッチャン。別に不快な顔はしていない。
サウナで汗をかき始めると、隣のオッチャンが連れ出され、次のフランス人オッチャンが入る。そのうちに、半端な状態でこちらも出された。自分が来る前に団体さんはまだ来ていなかったから、彼らは低料金のショートコースかねぇなんて思ったりしている。
次は蒸し風呂のようなところ。ヤシだかバナナの皮で作ったような囲いに首だけ出して入れられるのだが、フランス人のオバちゃんがそこから出たところで、間髪入れずに放り込まれた。トドみたいなオバちゃんだったが、さすがに女性は上下のタオルをあてがわれている。囲いの中にはハーブを敷きつめている。とはいっても敷き方はまばらで、バナナの皮床が半分さらけ出ている。赤の他人が出た直後だ。せめて、敷き物のハーブを交換くらいはして欲しい。
このスチームバスに5分ほど横たわり、個室に連れ戻される。手も出せず、オイルが目に入って痛かった。自前のパンツはオイルと汗で汚れがひどくなっているはずだ。これでコースはお終い。オッチャンにシャワーを浴びろと言われ、隣のトイレに案内され、ここでシャワーを浴びる。シャワーそのものもすごい場所にあるが、これで少しはすっきりすると思っていたのは甘く、シャワーからは少量のぬるま湯がポタポタと流れているだけ。もちろん、ここで汚れたパンツは脱ぎ、変色したタオルを初めてあてがわれはした。
着替える。パンツはシャワーで一時的に脱いだが元のものをそのまま履く。南国だから嗅覚も鈍ってはいるものの、せめてパンツをタオル代わりにして洗えばよかった。石鹸を使ってもオイルは半分も流せずに下着のシャツとズボンにベタベタ感が移り、極めて不快。頭の髪もどういうことになっているのやら。クシやらブラシすらなかったし、シャンプーしたつもりでも何だかベトベトしている。
ざっと1時間半コース。ガイド氏に、オッサンに500ルピーばかりのチップをはずむように言われていたので握らせたが、外に出た時は何だかなぁといった感じになっている。かなり覚めていた。フランスの団体さんは賑やかに待っていたが、しょんぼりした顔はなく、皆、こんなのに慣れているのだろうか。
後のツアーメニューは何もなく、ホテルに入るだけだからいいものの、とにかく、確実なシャワーを今すぐにでも浴びてオイルを落としたかった。
このアーユルヴェーダ・エステ、東京あたりでやると4万円ほどするらしい(本当かねぇ)とガイド氏が言っていたが、当然、着替えもあって、タオルや湯もふんだんに使え、自前のパンツ一丁で通すということはまずないだろう。スリランカの片田舎でやるからこうなのか、まさか大都会のコロンボでやってもこのスタイルというわけではないだろう。失敗したとはいっても、これが本物かもしれないな。本物なら、この一回ぽっきりの体験でいいわ。それにしても、男客の場合はこうだったが、女客の場合はどんなやり方になるのだろうか。潔癖な女性ならいたたまれなくなるだろう。
(九官鳥)
(道端を象が歩いている)
(夕暮れのシーギリヤロック)
ホテルに向かう。途中で夕暮れのシーギリヤロックを眺める。これが、自分の若い頃に魅きつけられた岩山か。感慨はあるものの、まだ外は暑く、身体のオイルが汗をはじいてズボンのベルトあたりに溜りそうだ。さっさと車を出してもらい、ホテルに到着。
とにかく、すぐにシャワーを浴びたかったが、ここは浴槽もなくシャワーだけ。まっとうに湯が出てくれればいいが、ずっとぬるま湯のままで、しまいには水になった。それでも日本から持参のアカこすりを使ったから、少しは気分も良くはなった。
このホテルは2泊。スーツケースの中味をさらけ出して荷物整理。セフティボックスがあったので、パスポートくらいは入れようとしたがマニュアルはない。日本式に数字を入れて適当にボタンを押して開け閉めしていると、そのうちにけたたましいアラーム音が鳴り響いた。これはやばいと、フロントに電話しようとしたが、内線案内の電話表なんかどこを探してもない。5分ほど鳴らしっ放しにすると、ようやくアラーム音は消えたが、その間にホテルスタッフが気づいて駆け込んで来ることはなかった。こちらとてボーっとしていたわけでもなく、電気作動かなと思ってボックスを持ち上げて電気コードを探してみたり、毛布をかぶせて、音の鳴りを少しは低くしようと必死だった。
何食わぬ顔をしてレストランへ。今日は客が少ないというので、セットメニューしかない。ライオンビールを頼み、適当に選んだメニューは魚介ながらもこれまたカレー。カレーからは逃れられないようだ。まぁ、好きだからいいが。
食事の間に蚊に刺され、部屋に戻ってキンカンを塗りたくる。明日の行き先の予習をガイドブックでと思ったが、昨日の続きが気になって、西村京太郎であっという間に睡魔に襲われる。今夜もまた10時前の就寝。つけっ放しのテレビ、CNNでは昨日と同じトランプの中東訪問をやっていた。
しかし、今日は朝から、そしてこのホテルに着いてからも波乱だったわ。
<その2に続く>
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