たそがれオヤジのクタクタ山ある記

主に北関東の山を方向音痴で歩いています。山行計画の参考にされても責任は負いかねます。深慮せず軽く読み流してください。

「こんなはずではなかったのに…」の悪沢岳(その1)

2012年07月23日 | アルプス系
◎2012年7月19日(木)~21日(土)

(19日)畑薙ダム(12:00)―<バス>―椹島ロッジ(13:00)・泊
(20日)椹島ロッヂ(4:00)……鉄塔(5:13~5:24)……小石下(6:11)……清水平(7:22~7:34)……見晴台(8:33~8:45)……雨宿り(20分)……駒鳥池(10:00)……千枚小屋(10:45)・泊
(21日)千枚小屋(5:00)……千枚岳(5:42)……丸山(6:30)……荒川東岳(7:05)……千枚小屋(8:33~8:40)……清水平(10:16)……小石下(11:00)……鉄塔(11:54)……椹島ロッヂ(12:54)

 今年の夏季休暇は、鳥倉コースで赤石岳まで、避難小屋に2~3泊しながら往復歩きを楽しむつもりでいた。それをI男に話したら、「山小屋に泊まってビール片手に星空を眺めたい」の想いがいまだにあるのか、連れて行ってくれとせがまれた。彼を同行させれば、いろいろと制約がでてくることは分かりきっている。だが、泊まりゆえ、一人で行くよりは、話し相手がいていいだろう。仕方がない。承諾した。ただ、鳥倉コースを歩かせるのは何とも気の毒で、不本意ながら、東海フォレストバス利用のコースにせざるを得なくなった。畑薙ダムから椹島に入り、荒川三山、赤石岳を経由して椹島に下るコースは、ハイカーがわんさと入り、静かな歩きを楽しめる風情でないことは承知の上だ。そのためにも、休暇取得を前倒しにして、ピーク時の前に出かけることにした。今回の予定、椹島ロッジに前泊し、翌日、早々に出発。荒川三山を回って荒川小屋に泊まる。その翌日は赤石岳経由で椹島に下り、14時のバスでダムに戻るといったのが机上の計画。ちなみに、東海フォレストバスの畑薙ダム始発は8時。これでは、椹島からの歩きが9時からになり、千枚小屋から先には行けない。また、帰路のバスも、椹島からの最終が14時で、それに間に合わないと、椹島ロッジに泊まることになる。山中一泊で済ますには、足と天気が頼りだけのコース取りにならざるを得ない。逆回りにしても同じようなもの。まっ、バス運行タイムがちゃっかりとできているといえばそれまでのことだが、時間と出費を惜しまない方にはいいコースであろう。逆の立場の者には不便としかいいようがない。

(畑薙ダムの駐車場)


 群馬から静岡の畑薙ダムまで、どれくらいの時間がかかるのかまったく見当がつかない。とりあえず、朝5時に家を出た。高田馬場駅でI男を乗せ、首都高から東名に入った。以降の運転は以降、ずっとI男にさせた。御殿場から新東名に入り、静岡SAのスマート出口で下りる。ここからが長かった。車のナビは新東名を認識していないため、しばらくは、標識を見ながら行くしかない。何とか、畑薙ダムに向かう道に入るも、細いカーブの多い道が何10kmも続いた。ようやく、11時に畑薙第一ダムの駐車場に到着。半日がかりの距離である。駐車場には20台くらいの車が置かれていた。すでに皆さん、8時のバスでご出立だろう。すぐに宇都宮ナンバーの車が入ってきた。車から出ていらした単独氏と話をすると、同じ12時のバスに乗られるご様子。大田原からいらしたとのこと。続いて、山口ナンバーの車が到着。ご夫婦。バス乗り場の受付の方と話をしながら、車でさらに先まで行ってしまった。聞き耳を立てていたら、悪沢岳から赤石岳、聖岳を経由して茶臼岳まで縦走されるようで、下山口を考慮し、この先の登山指導センターに車を置き、そこからバスに乗るようにとアドバイスされていた。お年を聞いたわけではないが、見た目、大田原さんも山口さんも自分よりは確実に上。特に山口さんは、失礼ながらご高齢といった感じだ。バス出発までの間、時間を持て余し、I男が受付の方に、高速からの近道をいろいろと教わっていたが、地元の地名やらを連発するので、からきし理解できないとぼやいていた。さて、この時点で天気は上々。入山届けを書く際に、翌日、翌々日ともに「午後一時雨」と受付に書かれていたのが気になったが…。

(バスの中から聖岳。これが最初で最後の晴れ間の南アルプスの写真)

(椹島ロッジ)


 バスの乗客は7人くらいだったろうか。運転手氏が案内してくれた聖岳と赤石岳が見えた。自分が登った聖岳はあんなに尖った山だったのだろうか。不思議な感じ。茶臼岳から下山する際に渡る畑薙大吊橋がえらく長いのには驚いた。椹島ロッジに到着。まだ1時。個室は2千円+ということで、初日だからと、個室にした。個室といっても何もない。4畳半程度の部屋に布団が2組あるだけ。早速、周辺をぶらついたり、ビールを飲んだり、本を読んだりで時間をつぶす。I男はギターを弾いていた。引き続きのバスで客が入り、さらに釣客も含めて30名近く泊まっていた。そのうちの団体さんは14名と7名くらいの2ツアーグループだろうか。17時からの夕食の際、聞くとはなしに皆さんの会話を聞いていたが、ほとんどが百名山のお話ばかりだ。お隣に座った山口さんも、今回の悪沢、赤石、聖で96になるようなことをおっしゃっていた。平ヶ岳は未踏のようで、登ったことがあると言ったら、いろいろと聞かれた。年代がかなり違いながらも、こういう話になると、会話が延々と成り立つのが無性に悲しい感じがしないでもない。余談だが、山口さんは光岳を今回は見送ることにされたようで、それでいてやたらと光岳にこだわるご様子なので、つい、「山口の光市からいらしたのですか?」と尋ねたところ、「あんた、光市に行ったことあんの?」と、話がかみ合わない部分もあった。夕食後にまた風呂に入って8時には寝る。I男の寝息が早々に聞こえた。

(登山口。すぐに鉄の橋がある)


 さて当日。4時にロッジを出る。早い時間ながらも、シャワートイレのお陰で快便であった。うれしい限り。外はまだ暗い。山口さんもご出発だ。その他の方々は、5時からの朝食をとっての出発だろう。ここから千枚小屋までかかる時間だが、昭文社マップと畑薙ダムの受付にあった案内書では6時間50分、40分と、ほぼ同じだが、ヤマケイのアルペンガイドでは、5時間10分となっている。この1時間半もの差はどこからくるのだろうか。まっ、6時間を目安としよう。千枚小屋10時、悪沢岳12時で昼食、荒川小屋には遅くとも15時到着と甘い予測を立てている。ヘッデンを点けての林道歩き。登山口の看板を過ぎると、すぐに鉄の橋を渡る。易老渡から光岳に行った際も、暗い中、こんな橋渡りで始まったことを思い出す。あの時もI男が同行していた。その先、右側は切れて川に落ち、左も急なガケ状で沢が落ち込み、狭隘になっている。足元はぬかるんでいる。吊り橋を渡って、樹林の中に入る。

(岩頭見晴らしからの見晴らし)


 急な登りがはじまった。クネクネと上に向かう。あっという間に汗ダク。ペンキマークが豊富で、薄暗くとも間違えることはない。鉄塔に出て休憩。ようやく明るい所に出たのだが、何だかすっきりしない天気になっている。「午後一時雨」も早々にやって来てもおかしくはないだろう。その先の「岩頭見晴し」から見る展望は、雲が低く立ちこめ、山の中腹しか見えない。ここから先、岩場の悪路の下りになる。何とも嫌な歩きだ。そして林道に出た。林道の向かいにはハシゴが取り付けられている。しかしながら、きつい登りだ。2時間ほど経過したところで「標高1,500m」の案内板が結わえてあるのを見る。2時間もかけて、標高差300mしか稼げなかったとはどういうこった。案内板には「残念ながらまだ急登が続きます」と記されている。歩く気力が早々に失せてきた。千枚小屋の高さまでまだ1,100mもある。

(傾斜も緩くなり、気持ちの良い歩きがある程度は続く)


 小石下にある案内板には「千枚小屋4時間30分 椹島1時間30分」とあった。この1時間30分とは下りのことだろう。椹島からここまで2時間10分かかっている。下りよりも40分余計にかかっているじゃないの。今のところ、息切れしながらも普通に歩いている。I男に足を引っ張られることもない。むしろ、スタスタと先に行くI男を自制させている状態だ。これでは、荒川小屋泊なんてのは絵に描いたモチか?せめて行きたい中岳避難小屋。目標を1ランク下げるか。千枚小屋泊まりにでもなったら、ロッジに前泊した意味がない。気持ちだけは急かすが、身体が従ってくれない。急登はまだまだ続いている。ここで、後続の朝食組やらグループに追い越されたら完全にアウトだ。背後には千枚小屋泊まりの山口さんが迫っているはず。そういえば、大田原さんは荒川小屋泊まりの予定とおっしゃっていたな。やがて勾配は幾分緩くなり、シャクナゲなんぞ花を咲かせ、気分が少しは上向きになった。しかし、それも束の間、頭にポツリと雨があたった。それどころか、遠くで、飛行機音に混じって雷の音すら聞こえてきた。

(清水平。水場はこの先)


 また、林道に出る。そして「標高1,700m」の標示。ゆるやかなままで歩いてはいるが、正直のところきつい。とうとう、I男に追いつけなくなる。今回の荷物はとにかく重い。ザックは55リットルで中味はパンパン。避難小屋に泊まる可能性を考え、食料と水が多い。ザックを背負う度に肩にズシリとくる。これでは歩程も遅くなっても致し方ない。ようやく清水平。「平」の字がついても、見晴らしの良い平地ではない。ただの薄暗い斜面の水場。しばらく休む。上から人の声がする。それでいて、なかなか下りて来ない。歩き出したら、6人のオッサングループが固まっていた。お一人、足をくじいたらしく、テーピングの作業中だ。この急な下り、あれでは大変だな。これを契機に、下る方、何人かと行き交う。上の天気を聞くと、どうもさっぱりらしい。以降、聞くのはやめにした。

(こんな標識が随所にあるが、疲れた身体には先が長い感覚だけになってしまう)

(見晴台からの遠望。右端は千枚岳だろうか)


 とうとう、雨が本降りになってきた。取りあえず、ザックカバーだけで済ます。右下に林道が見える。この林道、やがては、千枚小屋の荷揚げロープウェイ基地につながっているようだ。雨の降りは、今のところ弱いが、雨粒は大きい。合羽の上を着る。蕨段に着くと、雨は一旦収まり、合羽を脱ぐ。しかし、ムシムシする。林の中、風の通り抜けはまったくない。千枚小屋も椹島もそれぞれ3時間の標識。今、8時16分。単純に3時間加えると、千枚小屋は11時16分か。目標の10時着はよその世界の話になっちまった。ようやく2,100mを越え、見晴台に着く。岩に登ってみると、上は高台になっていて、林道が通っている。また合羽を着て、景色を見やる。正面に、山の峰が続いているのが見えるのだが、山頂は隠れ、どれが何山なのか不明。右端に見えるのは千枚岳のようだが。すぐに真っ白になってしまった。林道には「8.5km」の標識があった。起点からの距離だろうか。

(雨で写真も白くなってしまった)

(左下に駒鳥池が見える。決してきれいな池ではない)


 石がゴロゴロして歩きづらくなった。標高2,300m付近だ。ついに、雨が厳しくなった。ずっと樹林の中の歩きなのだが、登山道の真上だけは空が抜けていて、雨がもろにあたる。登山道から外れて、茂みの中でしばらく雨宿りをする。その間、合羽の下を履こうとしたが、靴がひっかかってうまく足が抜けない。靴を脱ぐのも面倒で、スパッツだけで済ませることにした。しかし、こういう時は、泣きっ面に蜂というか、急いては事をし損じるといったもので、スパッツのチャックを締めようとしたら、力任せにやったため、ファスナーがバカになってしまった。20分以上は雨宿りしただろうか。雨は一向に止む気配はなく、歩き続けるしかあるまい。駒鳥池に到着。下に池が見える。わざわざ見に行く気が起きない。「千枚小屋1時間」とあった。この大粒の雨の中、さらに1時間はしんどい。

(ようやく千枚小屋)

(周辺の花1)

(周辺の花2)


 管理道路への分岐を過ぎると、今度は、手書きで「お疲れさま 小屋まで15分 ガンバ!」とあった。もう限界だわ。この時点では、まだ、千枚小屋で休憩して昼食をとり、再起を図るつもりでいた。ようやく小屋に到着。いやぁ長かった。周りがお花畑だということを思い出した。確かに、小さな花があちこちに見える。小屋は工事中。手ごろな屋根付きベンチでもと探したがない。中で休むか。小屋のお兄さんが忙しそうにしていた。「まだこの時間ですから、荒川小屋には行けますが、この雨ではねぇ…」と、つれない反応。そのうちに雨はますます激しくなってしまった。小屋のトタン屋根を叩く音がすごい。あ~ぁと、ため息交じりで宿泊決定。赤石岳は消えてしまった。小屋の気温は12℃。吐く息は白い。

※続編の「その2」は前記事としてすでにアップ済みです。

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