「植草一秀の『知られざる真実』」
2018/10/20
水道民営化推進首長は金権腐敗利権政治屋だ
第2167号
ウェブで読む:https://foomii.com/00050/2018102015082049185
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拙著『「国富」喪失』(詩想社)
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あとがきに次のように書いた。
「私たちの命と未来を支える根源的なものを三つあげるとすれば、「水」、
「種子」、「教育」ということになるだろう。日本では、水を「湯水のよう
に」扱うが、飲用可能な水資源は世界的に希少になっている。水は命の源であ
り、いま、世界における最重要の戦略物資のひとつになっている。ハゲタカ
が、この水に狙いをつけると同時に、ハゲタカにこの水を献上する愚かな行動
が現実のものになり始めている。
「種子」がなければ「果実」は得られない。日本では、コメ、麦、大豆の、主
要農作物について、法律によって公的に種子を管理してきた。このことによっ
て世界でも賞賛される優れた品種が開発され、広く国民の利用に供されてきた
のである。ところが、ハゲタカは、この種子にも狙いを定めている。種子の知
的所有権を強化し種子を独占支配しようとする民間巨大資本が、日本において
も種子を独占支配することを目論んでいる。自国を愛する為政者なら、体を
張ってハゲタカの策謀に立ち向かうべきであるが、その為政者があろうこと
か、ハゲタカの利益のために体を張ろうとしている。本末転倒と言うほかな
い。」
10月15日に開催したオールジャパン学習会
「私たちの命の源が危ない-水・種子・食の安全を守ろう!-」
https://bit.ly/2pXrr0V
には、平日開催にもかかわらず、多数のみなさまにご参加賜り大変ありがたく
感謝している。
安倍政治によって、私たちの命の源がハゲタカ資本に売り渡されようとしてい
る。
学習会でも紹介させていただいたが、
堤未果さんの新著
『日本が売られる』(幻冬舎新書)
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がベストセラーになっている。
ハゲタカ資本は日本からの収奪を加速させようとしている。
その日本収奪に全面的に協力しているのが安倍内閣である。
この路線は、2001年に発足した小泉純一郎内閣が敷いたものだ。
「改革」の言葉に惑わされてはならない。
利権政治屋や取り巻きの御用学者、政商の口から美辞麗句が出てきたら身構え
る必要がある。
彼らは私たちの骨の髄まで食い尽くすことをたくらんでいるからだ。
第2次安倍内閣が発足した2012年12月の総選挙では、日本のTPP参加
是非が争点のひとつだった。
安倍自民党は「TPP断固反対」、「TPP交渉への参加に反対」と大書きし
たポスターを貼りめぐらせて選挙を戦った。
その安倍内閣が選挙から3ヵ月も経たぬ2013年3月15日にTPP交渉へ
の参加を発表した。
詐欺罪で刑事告発され検挙されないのがおかしいほどだ。
安倍内閣は米国にひれ伏してTPP交渉に参加させてもらった。
米国は安倍内閣からTPP交渉参加の法外な入場料を徴収した。
TPPで日本にメリットがあるとすれば、それはただひとつ、日本の対米自動
車輸出の関税率を撤廃してもらうことである。
これ以外は、日本の農産物などの関税率を引き下げて、日本農業などが破壊さ
れるなどの被害しか予測されていなかった。
ところが、安倍内閣はTPP交渉に参加させてもらうために、日本から米国へ
の自動車輸出について、乗用車の関税率は14年間、売れ筋のSUVなどの車
種は29年間、関税率を一切引き下げないことを呑んだ。
唯一のメリットである自動車輸出関税を長期間引き下げないことを確約させら
れた上でTPP交渉に参加させてもらったのだ。
このことが、TPP交渉への参加の「売国性」を象徴している。
日本の為政者が、なぜ日本に不利益になる行動を取るのか。
不思議に感じる国民が多いだろう。
しかし、これが現実なのだ。
彼らが国を売るのは、国を売ることによって、自分自身に利得があるからなの
だ。
「いまだけ、金だけ、自分だけ」の三だけ主義者は、躊躇なく国を売る。
見返りに巨大な報酬を得ているのだと考えられる。
また、米国支配者の命令に従っていれば、身が安泰になる。
逆に米国の支配者の意思に反する行動を示せば、必ず、人物破壊工作の標的に
される。
鳩山一郎、石橋湛山、田中角栄、細川護熙、鳩山由紀夫、小沢一郎の系譜がこ
れだ。私もこの系譜に含まれている。
そのTPP交渉への参加認可が下りるかどうかと言うタイミングで麻生太郎氏
が米国のCSISで講演して、「日本の水道をすべて民営化します」と宣言し
た。
これほど分かりやすい図式はない。
10月15日のオールジャパン学習会で、拓殖大学教授の関良基氏が水道民営
化について講演された。
日本では水に対する需要が減少し、市町村が運営する水道事業は経営的な厳し
さを増している。
また、施設、設備が老朽化しており、その修復や更新が必要になっている。
関氏は、この事実認識は正しいが、これは水道民営化の根拠にはならないと指
摘した。
水道は価格が高くても低くても、どうしても使用しなければならない「生活必
需品」である。
まさに「命の源」である。
しかし、世界では水道水を安全に飲用に利用できる国は圧倒的に少ない。
国土交通省が発表している水道水を飲める地域は、アジアでは日本とアラブ首
長国連邦の2ヵ国のみ。
その他は、ドイツ、オーストリア、アイルランド、スウェーデンのストックホ
ルム、アイスランド、フィンランド、ニュージーランド、オーストラリアのシ
ドニー、クロアチア、スロベニア、南アフリカ、モザンビーク、レソトの15
ヵ国だけだ。
世界の196ヵ国中でこれだけしかない。
世界的に見ても非常に貴重な日本の水資源。
ここにハゲタカが狙いを定めている。
水は生活必需品だから公的に管理する必要がある。
水道事業は規模のメリットが働く事業であるため、自然独占が生じやすい。
必ず独占事業になる。
この独占事業が営利目的の事業者に委ねられてしまうと、事業者が営利追求に
走り、独占利潤が生み出されてしまう。
だから、公的に管理することが必要なのだ。
ただし、公的企業だと企業努力が不足して「親方日の丸」の放漫経営に陥ると
の批判がある。
この批判を踏まえれば、公的管理に置きつつ、同時に、この公的事業を監視す
る市民による監視システムを構築することが有効である。
現在推進されている民営化では、「守秘義務」を契約に書き込んで、事業者が
情報公開に応じない。
価格統制も設定されていないから、結局、民間事業者の営利追求行動が野放し
になってしまい、住民によるチェック機能も働かなくなる。
老朽化した設備を更新するには資金調達が必要だが、地方自治体の借金を増や
せないと言われる。
これも完全な間違いだ。
学習会で三雲崇正弁護士が指摘されたが、民間事業者の資金調達コストよりも
地方自治体の資金調達コストの方が低い。
地方自治体が資金調達した方が安上がりなのだ。
そして、水道設備のようなインフラ整備においては、借金をしても見合いの資
産が残存するから、債券発行による資金調達は合理的なのだ。
マイホームを建設する個人は、若い時点でローンを組んで家を購入する。
そして、退職するまでに完済する。
借金は禁止ということになれば、マイホーム資金をようやく調えた退職の時点
で初めて家を購入し、翌年には逝去するという事態が発生し得る。
まったく非合理的なのだ。
水道インフラのような極めて公益性の高い事業は公的管理下に置き、自治体が
債券発行によって資金を調達して設備を維持することが正しい。
その債務返済は利用者の利用料金によって長期の時間をかけて行えば何の問題
もない。
そして、公益事業の経営が放漫にならぬよう、市民による監視システムをしっ
かりと整備する。
これ以外に適正な対応はない。
民営化が強行されるのは、民営化で利益を上げるハゲタカ資本に政治屋が買収
されているからだけなのだ。
民営化を推進する議員や首長は、まず間違いなく、金権腐敗の利権政治屋であ
ると言える。
種子法廃止や種苗法運用改定は、ハゲタカの指令に基づくものだ。
そのハゲタカ利権の巣窟が「規制改革推進鍵」である。
政権を刷新して、日本から売国司令塔の規制改革推進会議を除去しなければ、
日本の払い下げ、ハゲタカによる日本収奪加速を止めることができない。
これまで詳述できていない教育の問題については稿を改めて論じることにした
い。
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