セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「そして父になる」

2016-09-06 23:05:11 | 邦画
 「そして父になる」(2013年、日本)
   監督 是枝裕和
   脚本 是枝裕和
   撮影 瀧本幹也
   美術 三ツ松けいこ
   音楽 松原毅 、 松本淳一 、 森敬
   出演 福山雅治
       尾野真千子
       真木よう子
       リリー・フランキー

 公開時、観たいと思いながら行けず、熱が冷めると今度は気が重くなり
何となく後回しにしていた作品、漸く、盆休みを利用して観る事が出来まし
た。
 話の内容から、中盤以降「ずっと修羅場が続くんだろうな」が理由だった
のですが、修羅場は修羅場でも内面に焦点が当ててるので目を背けたく
なるような事は無かったです。
 激しい言葉の応酬をしなくても修羅場はちゃんと描ける、監督の演出の
方が一枚上手という事でした。(汗)

 自分が自営の小売店主だからなのか、福山雅治の斎木家への言動が
イチイチ癇に障る。(爆)
 あの立場の人間なら、そう考えるのが多いと解っていても「このヤロー
!」ですね。(笑)
 でも、その考え方、行動パターンから「父になる」過程、負けた事のない
奴が親と子の関係に真剣に向き合い悩み変化していく、最初の姿から最
後の姿へ成長していく様を福山さんは上手く演じていたと思います。
 (自分が、あの立場だったら、あれだけ成長できるか正直、自信は余り
ありません)
 が、やっぱり、その上を行く演技を見せたのはリリー・フランキーと真木
よう子でしょう。
 真木さんは「さよなら渓谷」、「ゆれる」で、その実力の程は知っていた
ので左程、驚きはありませんでしたが、自営業の女房の感じがよく出てい
ました。
 その真木さんより良いと思ったのがリリー・フランキー、上手かったです。
(何で上州・前橋辺りで関西弁なのか、よく解らん)
 まぁ、二人共、もうちょっと生活に疲れた感じが有ってもいいとは思いま
したけど。(笑)
 余り口に上らない尾野真千子さんもスター、実力者に挟まれながら決し
て見劣りせず、演出の上手さも有るだろうけど、大人4人と子供達のアン
サンブルが実に自然に感じられ、この作品を上質なものにしていたと思い
ます。

 赤ん坊の取り違えという途轍ももなく重い話、凡庸に描けばグチャグチ
ャ、ドロドロになる所を、静かに上手く纏めながら、その重いテーマをしっ
かり描いています。
 沢山の賞を受賞してるのは伊達じゃありませんでした。
 (でも、やっぱりテーマが重すぎて、何度も観たいとは思えません)

※何年か前、「撮影で福山雅治が来た」って町の噂が有ったけど、これだ
 ったのね。(笑)
 父親の見舞いに弟と歩くシーン、TVや映画で都電が出て来るシーンの
 7割くらいは、あの辺り。
(ウチから200mくらいの所)
 写真だとサンシャイン60をバックにした学習院下停留所辺りが定番だけ
 ど、遠景になるから役者が出るTV・映画には不向きなんでしょう。

 2016.8.15
 DVD

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 濁り川 嵐すぎれば 澄みしとも
  倒れる草に 修羅場ありしと 
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6 コメント

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コメントを頂き、有難うございました☆ (miri)
2016-09-07 08:42:53
> 赤ん坊の取り違えという途轍ももなく重い話、凡庸に描けばグチャグチャ、ドロドロになる所を、
>静かに上手く纏めながら、その重いテーマをしっかり描いています。
> 沢山の賞を受賞してるのは伊達じゃありませんでした。

仰る通りの作品でしたね~!

>「父になる」過程、負けた事のない奴が親と子の関係に真剣に向き合い悩み変化していく、
>最初の姿から最後の姿へ成長していく様を福山さんは上手く演じていたと思います。

4人共の事を思いますが、やはり主人公のこの部分がこの映画のキモ、
良い俳優だなぁ~と、驚くと共に、是枝監督って凄いと思いました☆

> (自分が、あの立場だったら、あれだけ成長できるか正直、自信は余りありません)

人間誰しもそれまで持っていた価値観をひっくり返されるときってありますものね、
この主人公と同じ事(試練)は、今の日本では誰にもおこらないと信じますが、
それぞれの人にそれぞれあるので、お互い、まだまだ頑張りましょう~! (なんのこっちゃ?)

リリーさんの関西弁、ちょっとね~笑。
でもマジ、隠し子でもいそうな、自然さでした。


.
返信する
いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2016-09-07 23:26:50
 miriさん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

良い俳優だなぁ~と、驚くと共に、是枝監督って凄いと思いました☆
>ちゃんと芝居の出来る役者を選び(プロデューサーの功績だけど)、しっかり映画の芝居をさせた事。
三船・黒澤に似て、福山さんと監督の演出の相乗効果で1+1が2以上になってた気がします。
そこも監督の腕の内なのですが、上手に出来る人は稀だと思います。

でもマジ、隠し子でもいそうな、自然さでした。
>ははは、子供の動きへの反応が素早かった気がします。(真木さんも)

尾野真千子 さん>朝ドラのヒロインだったんですか・・最近、TV見ないので知りませんでした。(汗)
彼女の挙動>miriさんの解説で8割方、心理を納得出来ました。
後の2割は迷いと自分の直感への信頼ということで。(大汗)
返信する
Unknown (take51)
2016-09-14 20:56:19
こんばんは!

>自分が自営の小売店主だからなのか、福山雅治の斎木家への言動が
イチイチ癇に障る。(爆)

僕はサラリーマンですが、あれは腹の立つ言い方ですよね!
お客さんにも、それ系の人がいますが嫌ですから(笑)
確かセルシオでしたよね?もういかにも!!(爆)

>自分が、あの立場だったら、あれだけ成長できるか正直、自信は余り
ありません

同感です。腹の立つ性格?だったかもしれませんが、
その辺はちゃんとしてましたね!

> 真木さんは「さよなら渓谷」、「ゆれる」で、その実力の程は知っていた
ので左程、驚きはありませんでしたが、自営業の女房の感じがよく出てい
ました。

僕は龍馬伝しか知りませんので、2作品は見てみたいと思います!

>赤ん坊の取り違えという途轍ももなく重い話、凡庸に描けばグチャグチ
ャ、ドロドロになる所を、静かに上手く纏めながら、その重いテーマをしっ
かり描いています。
 沢山の賞を受賞してるのは伊達じゃありませんでした。
 (でも、やっぱりテーマが重すぎて、何度も観たいとは思えません)

重い内容を上手に見せてるのだとは思いますが、
やっぱりこの内容を何度も見ようとは思いませんね・・(^▽^;)
けど、内容をうる覚えですので機会を作って見てみたいと思います!

>※何年か前、「撮影で福山雅治が来た」って町の噂が有ったけど、これだ
 ったのね。(笑)

僕は高知ですが、龍馬伝の時は噂が先行して皆が
右往左往してました!情報は外れが多かったですが、そのはずです。
ほとんど高知で撮影してないですもんね!(笑)
返信する
ようこそ! (鉦鼓亭)
2016-09-15 00:50:22
 take51さん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

お客さんにも、それ系の人がいますが嫌ですから(笑)
>ウチは客商売だから、毎日、いろいろな方がいらっしゃいます。
あんな感じの人とか(笑)、「客なんだから神様」と上向いて勘違いしてる方とかね。(お客さんと店はギブ&テイク、何もせず、お金恵んで貰ってる乞食じゃないんだから)
当たり前ですが、余程の事がない限り顔には出しませんけど。
そのセイかは解りませんが、商店会の小売店のオヤジ達(僕を含む)は全員、短気&奥さん達はメッチャ気が強い。(笑~みんな、気振りも見せずニコニコしてますけど)

その辺はちゃんとしてましたね!
>miriさんの所で書きましたけど、僕は多分、無理だと思います。(汗)

2作品は見てみたいと思います!
僕のコメントには書かなかったのですが、miriさんが仰ったように重い心理劇なので楽しい映画ではないです、でも、作品的には素晴らしいと思っています。
僕は作品的には「ゆれる」>「さよなら渓谷」だけど、好き嫌いで言えば僅かに「さよなら渓谷」>「ゆれる」かなと思っています。
「ゆれる」は女性監督なのに、男兄弟の心情を繊細に描いていて吃驚しました。(ここまで深く解ってるって衝撃は20歳頃出会った「中島みゆき」以来)
僕自身、男二人の男兄弟なんですよ。
「さよなら渓谷」は、昔、これの究極系とも言える「愛の嵐」を観てたから、何となくですが理解できる気がしたんですね。(「愛の嵐」は結末が全然違うし、ヴィスコンティと似た退廃的な耽美趣味が重要な要素として入ってますけど)
2割くらいの人達には「有り得なくて理解できない」らしいけど、
男女における不条理で理性外な心の絡み合いは描けてたと思います。(余計な部分も有ったけど)

何度も見ようとは思いませんね・・
>そうですよね、僕が例外じゃないと安心しました。(笑)
何年か前に観た「ブルーバレンタイン」は、もっとキツかったけど。(夫婦で観るのは禁止、どうなっても責任は負いかねます(爆)~間違ってバレンタインデーに借りてきたら大悲劇ですのでお知らせまで)

ほとんど高知で撮影してないですもんね!(笑)
>え~!そうだったんですか!!(汗)
僕の住んでる町は希少価値の路面電車が走っていて、関東台地のヘリに位置してるからカーブと急坂、途中100mくらいのお誂え向きの平坦部もあるので撮影向きなんですよ、「特捜最前線」の頃から、よくロケしてるのを見掛けます。(TV朝日のディレクターが近所に住んでたらしい)、JR線路の向こう側は「相棒」が何回か来てましたね(北口はピンサロ街で、危なそうな暗がりが幾つも有るんです(笑))
ロケ翌日には商店街で誰それが来てたって噂が直ぐ広まるド下町なんですよ、ここは。
「俺たちはTV様だぞ」ってデカイ面して傍若無人に撮影してると「テメーら、ふざけんじゃねーぞ!」って有線放送のボリューム上げて邪魔しますから。(笑)
返信する
タイミングを逃すと (宵乃)
2019-04-20 10:23:35
重い腰が上がらなくなるタイプの作品ですよね。でも、見てみると鉦鼓亭さんの仰る通り目を逸らしたくなるような修羅場はなくて見やすかったです。

>福山雅治の斎木家への言動がイチイチ癇に障る。(爆)

あれは誰が見ても腹が立つと思います(笑)
リリー・フランキーさんと真木よう子さん演じる夫婦の、子どもたちに対する真っ直ぐさに救われました。バランスがちょど良かったです。

>大人4人と子供達のアンサンブルが実に自然に感じられ、この作品を上質なものにしていたと思います。

ホント、子供たちが自然で本当の家族みたいでした。なので、それを引き離すなんてありえないだろ!という気持ちが強く、終盤まで主人公の選択にモヤモヤしっぱなしでした。
最終的には成長して希望が見えて、良い作品だったと思います。でも、私も同じく何度もは見たくないですね(汗)
返信する
コメントがすれ違いになりました(笑) (鉦鼓亭)
2019-04-20 11:17:57
 宵乃さん、こんにちは
 コメントありがとうございます!

誰が見ても
〉やはり、そうなんですね。僕が似た立ち位置だから、余計、そう感じるのかと思いました。

本当の家族みたいでした
〉みんな。上手かったです。

引き離す
〉あの場合、好むと好まざるとに関わらず普通の家族なら(家庭崩壊中を除く)、どうしても試してみなければならない事だと思います。そうしないと、何時まで経っても机上の空論を闘わせるだけで感情と実態が乖離したままになり収まりが尽かないような気がします。

母親と違い父親は何処か親の実感を掴みにくい気がします、僕なんか特にそうで、映画の福山雅治みたいに父親としての覚醒が僕に来る事があるんだろうか、そんな事も思いました。(汗)
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