セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「ピクニック」

2015-09-25 23:45:57 | 外国映画
 「ピクニック」(「Une Partie de Campagne」、1936年、仏)
   監督 ジャン・ルノワール
   原作 ギイ・ド・モーパッサン
   脚本 ジャン・ルノワール
   撮影 クロード・ルノワール
   音楽 ジョゼフ・コスマ
   出演 シルヴィア・バタイユ
       ジョルジュ・ダルヌー
       アンドレ・ガブリエロ
   ※照明が誰か不明、解り次第記載します。
   (カメラと照明の勝利でもあるから)

 感想を一言で言えば「柔らかい美しさに満ちたモノクロ映画」でした。
 もう一つ、デジタルリマスターされた傷の無い作品を映画館で観られた事
に感謝。
 ハード面で日本より進んでいたとは言え、感度の悪いフィルムを使いなが
ら、しかもスタジオより条件の厳しい野外ロケで、これだけの映像を作ってし
まう技術とセンスの良さには瞠目せざろう得ません。
 技術的には動きが少ないとは言え、露出が変化しやすい「森の中」のシー
ンを完璧に作ってるのに吃驚。
 センスの良いアングルから撮られる絵画的な構図、柔らかな光と草の感触、
川に張り出した木が作る影、本当に美しさの溢れた作品だと思いました。
 (父親は印象派の巨魁ルノワール)
 物語は、或る休日、パリ近郊の田園地帯にピクニックに来た家族と娘の婚
約者、そこで待ち受ける近在のドン・ファン二人との絡み。
 フランス映画らしく「セ・ラ・ヴィ」で、ほろ苦いお話。
 只、何で婚約者を愚鈍にしたのか・・・。
 彼が出て来た途端、僕はスクリーンの傍観者になってしまいました。
 礼儀正しいけれど、堅苦しく情に薄い、或いは、普通に魅力的だけど何か
が欠落してる、普通な人間同士の「鞘当て」の方が、僕には望ましかったで
す。
 (「フォロー・ミー」のチャールズとクリストフォルーみたいな)
 尺の短い作品だから、複雑にしたくなかったのかな。(汗)

 1936年、タイプの一つとは言え、モノクロの美しさを極めた作品が有る事
を映画ファンなら知っておくべきだと思います。
 (個人的にはコントラストの強いモノクロに、より惹かれますが、柔らかなモ
ノクロの傑作がここに有るという事に異議を挟む気は毛頭有りません)

※今、上映されてる作品が完全版なのか解りません。
 (真正オリジナル版は戦争によって消滅)

 2015.9.22
 早稲田松竹

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4 コメント

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こんばんは☆ (miri)
2015-09-26 19:07:37
>感想を一言で言えば「柔らかい美しさに満ちたモノクロ映画」でした。

仰るとおりですよね~こんなに美しいモノクロ映画はないですよね~♪

>もう一つ、デジタルリマスターされた傷の無い作品を映画館で観られた事に感謝。

良かったですネ!
私のDVDもキレイなのですが、リマスターなのかどうかは分かりません・・・。

>これだけの映像を作ってしまう技術とセンスの良さには瞠目せざろう得ません。
>「森の中」のシーンを完璧に作ってるのに吃驚。

難しい事は分かりませんが、評価されていますよね~!

>センスの良いアングルから撮られる絵画的な構図、柔らかな光と草の感触、
>川に張り出した木が作る影、本当に美しさの溢れた作品だと思いました。

この監督さんの作品は「絵になる」んですよね~多くが☆

> (父親は印象派の巨魁ルノワール)

お父様の別荘で作った(舞台にした)映画もありますよね~。

>フランス映画らしく「セ・ラ・ヴィ」で、ほろ苦いお話。

まぁそうなんでしょうけど・・・お母さんの顛末を知りたいですよね~♪

>只、何で婚約者を愚鈍にしたのか・・・。

あの人は婚約者ですけど、お店で使われている人で、何となく孤児のような気がします・・・
私は、このお話の場合、彼が愚鈍でなければ、「お話」が出来ないように思います。。。

>普通な人間同士の「鞘当て」の方が、僕には望ましかったです。

そうですか・・・でもそうなると、「女性の心情に迫る作品」にはならなかったと思います☆

>映画ファンなら知っておくべきだと思います。

まぁオンエアもせず、ほとんど映画館にもかからず、DVDが高くてレンタルしないという作品は、
私的には「知っておくべき」とまでは言えないように思います☆

初見の直後に震災が起きて、この映画を見てるんるんしていた(死語?)自分が凄く恥ずかしくて
なかなか再見出来ませんでした。 良い機会を有難う☆

今回は特にプレヴェール兄弟という言葉と、二人の服装の変化が、とても気になりました♪
夫となった方は同じような服装だったのでね~。
これがレイプではなく、何故彼女がいつも思っている事柄なのかという事は、
なかなか説明しにくいのですが、一部女性が見たら誤解があるかもしれないな~とも思いました。

私はもちろん好きですし、良い作品だと思うし、ルノワール監督の他の作品に
この場所(と思われる場所)が出てきたりして素敵とは思うのですが、
やっぱり戦争がなくて完全版があればもっと良かったのに・・・と残念に思います~。
長々失礼いたしました(ペコリ)。


.
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いらっしゃいませ! (鉦鼓亭)
2015-09-26 23:51:23
 mirriさん、こんばんは
 コメントありがとうございます!

仰るとおりですよね~こんなに美しいモノクロ映画はないですよね~♪
>はい、穏やかな陽射しと涼しげな木陰、田園の空気が感じられる美しさでした。

難しい事は分かりませんが、評価されていますよね~!
>森の中は光度が変化しやすいので、正確な露出を計算するのが至難の業、と聞いた事があります。

この監督さんの作品は「絵になる」んですよね~多くが☆
>小さい時から見てるというのも有るのだろうけど、父親のセンスを見事に受け継いだと思います。

お母さんの顛末を知りたいですよね~♪
>僕は余り・・・。(笑)
「アメリカ人にはビジネスを、フランス人にはLOVEを」

そうですか・・・でもそうなると、「女性の心情に迫る作品」にはならなかったと思います☆
>二律背反に引き裂かれる感情という事でしょうか。
(女心に疎いもので(汗))
これは僕の性格的な事もあります。
競馬もそうだけど、ハンデキャップ・レースは好きじゃないんです。

「知っておくべき」とまでは言えないように思います☆
>ちょっと強圧的な書き方でした。

何故彼女がいつも思っている事柄なのかという事は、
>微妙なニュアンスを含ませた描き方ですが、僕はあれで充分だと思います。

初見の直後に震災が起きて
>僕も、あの時は映画館行きをキャンセルしたし(余震の怖さも有った)、暫く映画を観る気になれませんでした。
「セクレタリー」の記事も3日くらい前に出来てたのですが、UP予定の日に鬼怒川水害が起きて先送りしました。

やっぱり戦争がなくて完全版があればもっと良かったのに・・・と残念に思います~。
>同感です。
僕の場合、山中貞雄に「それ」を一番感じています。

※ご指摘、ありがとうございました!
「博士の異常な愛情:~」と同じ事をしてしまいました。(あれは意図的誤訳らしいけど)
教えてもらわなかったら、長々と恥を晒してました。(汗)
「タイピスト!番外編」をUPして暫く後、「あ!」と気が付いて仏和辞典の仕舞い場所を思い出し、今回、引っ張り出して意味が通じるよう繋げてしまいました。
昼間、再度、よく見たら、下の方に慣用句として記載されてました。(汗)
「タイピスト!」では辞書無しで適当に訳し失敗、今回は辞書見て墓穴掘り。
ダメだこりゃ。(笑)
返信する
こんにちは~☆ (miti)
2015-10-08 11:24:33
>何か解りましたら教えて下さい。

大した事ではないのですが、

1:アマゾンで売っているDVDの多くはフランス語のようです。

2:「大学時代にフランス語の講義でこの映画を見た」という人を見つけたのですが!
その人自身のブログにはその事は詳しくは書かれていませんでした、残念。

3:私の記憶では、高校時代(1976年4月~)に、リバイバル公開がありました。
その時の宣伝でこの映画を知ったので、多分間違いないのですが、証拠は見つけられませんでした。
宣伝はテレビもあったかもしれないけど、主には雑誌です。
ブロンソンは好きだったけど、ドロンが嫌いだったので、映画館で見たいとまでは思いませんでした。

4:推測ですが、最初にフランス語版を正しく作って、
でも、アメリカ人は字幕を読めないおバカな方が多いようですので、その為に初期に英語版を作り、
長い年月の間に、流通しやすい方(英語版)があちこちに行き渡り、当然のように
日本の字幕オンエアでもそちらを使って、2010年に私もやっと見た・・・そういう流れなのではないでしょうか?

今回の映画館での上映の場合は「フランス語ではない」ということわりを入れなかったのは、
やっぱり良くない事だとは思いますが、反面、仕方のない事だったような気もします。
(上映させる側が、フランス語版の存在を知らないとか?)

でも、鉦鼓亭さんのお立場でしたら、キレて当然なのかもしれません・・・。
長々失礼いたしました☆


.
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す、素早い! (鉦鼓亭)
2015-10-09 00:42:55
 miriさん、こんばんは
 お調べ頂き、ありがとうございます!

「狼は天使の匂い」
公開時は「And Hope to Die・・・」の原題でアメリカ版が公開されました、
その後、日本での上映権が切れるまで名画座も米版が廻ってました(当時、4,5回観てるのでR・ライアンが仏語を喋ってれば気付いた筈)、これの仏語版を日本人が観たのは数年前DVDが出てからだと思います。
「フォロー・ミー」
’73.1月   みゆき座
’73.11月頃 大塚名画座
’74.3.11 永楽プラザ
’74.7.8  東急名画座」
みゆき座で公開されたタイトルは筆記体の「Follow Me!」(これはハッキリ覚えています)
ところが、大塚名画座の時は気付かなかったけど、永楽プラザか東急名画座の時は既に今現在流通してる
米版「The Public Eye」だったと、おぼろげながら記憶してます。
(かなり早い段階で「あれ?タイトルが違う」と吃驚した覚えが有る)

2の方が詳しく書いてくれていれば解決だったのですが。(笑)
3.’76ですか、やっぱりリバイバルがあったのですね。
そうでなきゃ、どうしたって計算が合わないです。
(只、ぼくは’74頃じゃないかと推測してました。ハズレました)
4.僕は初公開の時はフランス語版だったんじゃないかと推測しています。
ドロンの相方がアメリカ人である必要は余りない気がするんです、わざわざアメリカからブロンソンを引っ張って来たのは初めからアメリカ市場も狙ってたんじゃないでしょうか。
ドロンはハリウッドで失敗してるから、アメリカの場合ブロンソンで売った方が賢明だし、仰るようにアメリカ人は字幕を嫌いますので、最初から「狼は~」みたいに2バージョン作ってたのだと思います。
この作品をてっきり仏語だと思い込んでたのは、フランス映画でA・ドロン主演という事もあるけど、今迄、ドロンが英語を喋ってるって聞いた憶えがないのが主因の気がします。
リバイバルが20歳の頃なら、「ドロンが英語喋ってる」って誰かが言えば憶えてるんじゃないかと、ちょっと過信しています。(笑)
(当時のオンエアは民放だったから当然「吹き替え」で、原語は解りようがないし、そもそも見てない(笑))

長い年月の間に、流通しやすい方(英語版)があちこちに行き渡り
>その何処かで「フォロー・ミー」みたいに入れ替わったんじゃないかと・・・。
フランスの会社が日本のドロン人気を見て原語版を高くふっ掛けたので上映権の切れた後、安かった(多少傷アリの)米版を買ってきて流通させたとか。(汗)

キレて当然なのかもしれません
>ムカッ!ときたのと吃驚したのと・・・。(笑)

ご面倒をお掛けしました、本当に有難うございます。
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