セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「鍵泥棒のメソッド」

2014-03-21 21:01:11 | 邦画
 「鍵泥棒のメソッド」(2012年・日本)
   監督 内田けんじ
   脚本 内田けんじ
   撮影 佐光朗
   音楽 田中ユウスケ
   主題歌 吉井和哉 「点描のしくみ」
   編集 普嶋信一
   出演 堺正人
       香川照之
       広末涼子
       荒川良良 
       森口瑶子

 デビュー作「運命じゃない人」は、仕掛けを見せる映画。
 3作目の本作は持ち味の「仕掛け」をそのままに、よりエンタティーメント性
を追求した作品だと思います。
 その分、話に強引な所も散見されますが、名作「お熱いのがお好き」だっ
てよく考えると相当強引、でも「楽しい」のだからコメディとして突付くより楽し
んじゃった方が正解ではないでしょうか。
 「観てる間、誤魔化せれば、それで良し」と言ったのはヒッチコックでしたっ
け。(笑)
 (この作品、着想のヒントが「お熱いのがお好き」のような気がしないでもな
い)

 「運命じゃない人」に無くて、本作に有るもの、それは「華」。
 堺正人、香川照之、広末涼子に「華」が有る分、観ていて楽しい。
 演技の上手さは「運命じゃない人」の出演陣も決して「鍵泥棒のメソッド」に
劣らず達者なんだけど、殆ど無名に近い人ばかりだから映画としての「華や
かさ」がどうしても足りない気がします。
 シリアス系では、それが良い結果を生むけれど、エンタティーメント系だと
「ちょっと」なんですよね。

 伏線の張り方と回収の鮮やかさは、この監督の一番の特徴で特技でしょう。
 さり気なく張ってパッと回収する、このセンスの良さは、世界を見回してもトッ
プクラスだと思います。
 こういう事の出来る人が日本から出てくるなんて想像外でした。
 伏線の張り方が上手いという事は必然的に小道具の使い方が上手いという
事でもあるんですよね。
 本作では大きい所で非常警戒音、クラッシック音楽、雑誌「VIP」、小さいモノ
では猫とかノート等。
 この辺も、ちょっと日本人離れしてる感じがします。
 流石、話の設計図作りに何年も掛けるだけは有ります。
 只、この緻密さは「こじんまりした話」から抜け出せなくなる怖れが無きにしも
あらず。
 ペーソスを感じさせる「こじんまりした話」も勿論大好きだし良いのですが、パ
ワー溢れるスケールの大きなコメディも観てみたい。
 「鍵泥棒のメソッド」は、デビュー以来進んできた路線の完成形に近いモノの
気がします。
 年何百本作ってた時代と違い、今は失敗したら次が保障されない難しい時代
ですが、次作は、より進化した違う「内田けんじ」の顔を観たいと思っています。
 
※救急隊員の二人は「お笑い系」の人みたいだけど、あの二人のドタバタ部分
 だけ浮いてた、僕にとって完全な不協和音でした。
※本作一番の謎>「弦楽よんじゅうそう」(笑)
 何でチェックを素通りして映画館へ出ちゃったんだろう。
 (今の技術なら、その部分だけアテレコで修正出来ると思うんだけど)
※僕はS・ドーネン監督A・ヘプバーン主演の「シャレード」が物凄く好きなので
 すが、アレに気付かないなんて・・・。(涙)
 何か無駄に歳を取ったなと。(笑)
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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (宵乃)
2014-03-22 10:36:15
今夜観る予定なので、その後にまた伺いますね~!
今から観るのが楽しみです♪
返信する
Unknown (宵乃)
2014-03-23 10:45:15
観ましたよ~、すっごく面白かったです!
「アフタースクール」が苦手だったのでちょっと不安だったんですが杞憂に終わりました。
苦手だった広末さんがはまり役で「あの人こんな面白かったんだ~」と一気に入り込めました。彼女と、いつもながら素晴らしい演技を見せる香川さんのいる奇妙な空間が心地よかったです(笑)

>本作では大きい所で非常警戒音、クラッシック音楽、雑誌「VIP」、小さいモノでは猫とかノート等。

伏線が見事でも、見る人間がぼけっとしてると不発に終わるという…(汗)
クラシック音楽って、何か伏線ありましたっけ?
「何でここで戻ったんだろう?」とか思ってました…。

>本作一番の謎>「弦楽よんじゅうそう」(笑)

クラシックのことぜんぜん知らないから、まったく気づきませんでした。というか、もはや弦楽四重奏がどんな曲だったのかすら思い出せない…。しじゅうそうが正しかったんですね。

リクエスト頂かなければ、内田監督の作品(しかも嫌いな堺雅人主演)は観なかったと思うので、とってもよい機会になりました。これからは避けずに観ていこうと思います。
本当にありがとうございました♪

追伸:サイドバーのリンクミス修正いたしました。ご報告感謝します!
返信する
Unknown (take51)
2014-03-23 20:43:54
こんばんは!!
素晴らしい映画の紹介をありがとうございました!
とっても楽しました!!\(^o^)/

>伏線の張り方が上手いという事は必然的に小道具の使い方が上手いという
事でもあるんですよね。

 なるほどですね!いや、上手だと思いました!!
 「おぉーー」と何度、唸ったことか!(笑)

自分の記事に書き忘れましたが、あのクラシック音楽は
良かったです。CDを買おうと思ったくらいです!!
あの音楽の使い方も良かったですよね・・
いちいち感心してしまいます(笑)

この監督の他の映画も見たくなりました!!\(^o^)/
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2014-03-23 22:13:38
 宵乃さん、いろいろ有難うございます。

広末さん、良かったですよね、僕も意外でした。
役柄上、表情の変化は余り無いのですが、「間」の取り方が上手だったと思います。
「間」は或る程度天性のモノだから、彼女、コメディエンヌの才能が有るのかもしれませんね。

弦楽四重奏>冒頭、コンドウが「仕事」する時、車内で掛けてました。
部屋にクラッシックのCD沢山有ったし、着信音はベートーベンの「第九」。
きっと、クラッシック好きでベートーベンが好きで、その中でも「弦楽四重奏曲」が大好きなんだと思います。
だから・・・。
(コンドウのシーンには重厚なクラッシック、水嶋一族のシーンは軽いクラッシックというライト・モチーフ的な手法が使われています、でも桜井にはテーマ・メロディがない(笑)。コンドウと香苗は使われる音楽でも似た者同士のお似合いと言う事なんだと思います)

僕も弟に「観て感想聞かせてくれ」と言われてたのですが、中々、食指が動かずでした。
直接の切っ掛けは、しずくさんのサイトで「面白い」と書いてあるのを見て、「それなら」と思ったんですよ。
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2014-03-23 22:41:52
 take51さん、コメントありがとうございます。

お気に召されたようでホッとしています。
こういう企画にリクエストするって、どうしても「滑ったらどうすんべ」で不安一杯でしたから。

あの音楽の使い方も良かったですよね>コンドウは、どうやって復元するのだろうか。
またスッテンコロリンじゃ芸が無いし・・・。
初見の時、興味津々でした、「そうか、この手があったのか!洒落てるなぁ、上手いなぁ」と本当に感心してしまいました。

他の映画>評判の高い「アフタースクール」は未見なので何とも言えませんが、
デビュー作の「運命じゃない人」も面白いですよ、「仕掛け」だけに限れば「運命じゃない人」の方が上かもしれません。
返信する
Unknown (きみやす)
2014-03-25 20:03:00
こんばんは!!

>只、この緻密さは「こじんまりした話」から抜け出せなくなる怖れが無きにしもあらず。

そうなんですよね。
ここまで技巧を凝らした作品を作ってきて
ある種のパターンも見えてきた監督が
次にどのような作品を作ってくれるのか

>次作は、より進化した違う「内田けんじ」の顔を観たいと思っています

ここは全く同じ意見です。
再見する機会を与えていただいて
ありがとうございました!!
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2014-03-26 00:46:52
 きみやすさん、こんばんは
 コメントありがとうございます

今の技巧を凝らした世界を一層突き詰めていくのか。
パワーアップして、新たな内田ワールドを作るのか。
僕は、少し違う顔を見てみたいのですが、
どちらにせよ、次作が最も気になる映画作家です。
(ヤクザと悪女は賞味期限が今作で切れた気が・・・(笑))

再見する機会を>いや、本当に何と申し上げればいいのか・・・。
とにもかくにも、
参加して頂き、ありがとうございました!!
返信する
Unknown (take51)
2014-04-17 21:41:40
こんばんは!!
「運命じゃない人」は確かに華は
無かったですね。本当に知らない人ばかりで・・(^▽^;)
僕だけではなくてホッとしました(笑)

>伏線の張り方と回収の鮮やかさは、この監督の一番の特徴で特技でしょう。
 さり気なく張ってパッと回収する、このセンスの良さは、世界を見回してもトッ
プクラスだと思います。

本当ですね!見事だと思います!!(^.^)
今から内田監督の次作が楽しみです♪
彼のちょっと違う映画も見てみたいです!!(^^♪
返信する
Unknown (鉦鼓亭)
2014-04-17 22:54:33
 take51さん、こんばんは!
 コメントありがとうございます

本当に知らない人ばかりで・・>邦画は元々強くないので(特に最近のは)、「お初」の人ばかり。
(デビュー作で低予算ですから仕方ないのですが)
おまけに善い人宮田クンの顔が巨人の桑田投手(古い!)に見えてしょうがなく、その相手の女の子の名前が桑田。(笑)
紛らわしいったらありゃしない。(汗)
でも、皆、上手かったと思います。

センスの良さ>大好きなTVドラマ「王様のレストラン」の三谷幸喜さんも素晴らしかったけど、内田さんは三谷さんよりドライな感じがします。

彼のちょっと違う映画も見てみたいです!!(^^♪
>僕も、それを期待してるんです。
凡人と大人、ヤクザ、曲のある女、ここから少し離れて欲しい(全てとは言わないけど、この組み合わせは、もういいかナ(笑))
返信する

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