11月 1日

2019-10-31 14:34:40 | Weblog
                 十一月・霜月・霜降月



     峠見ゆ十一月のむなしさに         細見綾子


     師の句碑に十一月の日差しかな       栗田やすし


     川筋に十一月の月明り           江口ひろし


     師は逝けり十一月の鵜鋭声         片山浮葉


     癒えし身に十一月の滝ひびく        栗田せつ子


     霜月や赤土乾く陶土山           則竹鉄男



          



     十一月吉備路は塔と丸き山         大野林火


     はきはきと十一月の雨蛙          日野草城


     霜月や聖天さまに満ちし月         森澄雄


     帽子やや目深に十一月の旅         鷹羽狩行


     霜月や茂林寺に行く用ありて        村山故郷


     二の丸へ十一月の女坂           廣瀬直人



     
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10月 31日

2019-10-30 13:51:50 | Weblog
                 ハロウィン・万妖祭・万鬼祭



     ハロウィンの悪魔のしつぽもげてをり       関根切子


     ハロウィーンのかぼちや笑へる駅の花舗      中山敏彦


     キャラメルの函の天使やハロウィン        星野 麥丘人


     ハロウィンの南瓜パレード港町          古賀まり子


     高階の窓に星入れハロウィーン          伊藤京子


     ハローウィンの魔女へ天使へ舞ふ木の葉      中村悦子


     ハロウィン来る子に持たす袋菓子         松崎鉄之介


     担任に似たる南瓜やハロウィーン         山火律子


     ハロウィンのかぼちやが笑ふウィンドウ      吉原文音


     ハローウィンの仮面吊して英語塾         梅原富子


     ハロウィンや子供は疲れ知らざりし        あさなが捷



          
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10月 30日

2019-10-29 14:38:44 | Weblog
                 ななかまど・七竃



     ななかまど蝦夷の夕日の飛びつけり       栗田やすし


     ななかまど歩荷にゆづる休み石         中野一灯


     色薄き飯盛山のななかまど           近藤文子


     ななかまど湯町を風の吹き抜くる        武藤光晴


     啄木の街の明るしななかまど          田畑 龍


     人影のまばらな湖畔ななかまど         松永和子


     ななかまど赤き実たわわ運河沿ひ        笹邉基子


     立山の日を弾きたるななかまど         兼松 秀


     新しき木道の香やななかまど          磯田秀治


     紅淡し湖を取り巻くななかまど         塩原純子


     ほどけゆく霧の中よりななかまど        坪野洋子


     朝靄の湖畔の小径ななかまど          高田栗主



          



     ななかまど支笏の波は草に寄す         古舘曹人


     七竃散るをこらへて真つ赤なり         林 徹


     七竃釧路駅裏並木なす             野見山ひふみ


     ななかまど真つ赤盲学校の坂          佐藤淑子


     恐らくは降れば雪なる七竃           石 昌子


     ななかまど谷を離るる水のこゑ         黛 執



     
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10月 29日

2019-10-28 19:02:22 | Weblog
                虫・虫すだく・虫籠・虫売・虫の秋



     能衣装干されてありぬ昼の虫          細見綾子


     奥能登に来て星しぐれ虫時雨          沢木欣一


     ドリーネの底より虫の声聞こゆ         栗田やすし


     彫深き不戦の碑文字虫すだく          河原地英武


     虫すだく六区に隣る弁士塚           佐藤とみお


     牛突きの果てし四方より虫の声         都合ナルミ


     手を握ることも介護や虫時雨          櫻井幹郎


     虫の音やわずかに残る化粧水          関根切子


     売れ残る籠に霧吹く虫売り女          谷口千賀子


     虫鳴くや古き港の時計店            森垣一成


     西行と遊女の塚へ虫細る            倉田信子


     大護摩火十歩はなれて虫の闇          山本法子


     鏡台に母の補聴器昼の虫            石崎宗敏



          



     本丸の雨に高鳴く虫を愛づ           鈴鹿野風呂


     睡るたび齢加はる虫鳴けり           菖蒲あや


     すがれ虫命惜しめと鳴く夜か          村山故郷


     勉強の音がするなり虫の中           飴山實


     耳すます闇の奥へと虫鳴ける          高木晴子


     ここにまだ命をかけて鳴ける虫         中村苑子




         
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10月 28日

2019-10-27 15:15:40 | Weblog
               
 紅葉・紅葉づる・紅葉狩り・谷紅葉・夕紅葉・紅葉山



     松島に椿多しと紅葉晴れ            沢木欣一


     紅葉の旅伎芸天女の膝下まで          細見綾子


     月残る紅葉始めの南木曽岳           栗田やすし


     帝井の底まで紅葉明りかな           都合ナルミ


     百済仏紅葉あかりに拝しけり          谷口千賀子


     山紅葉和紙工房の薪爆ずる           鈴木みすず


     能舞台桜紅葉の一葉散る            栗田せつ子


     薄紅葉ピカソ観し目にやさしかり        佐藤とみお


     一筋の道貫ける紅葉谷             矢野愛乃


     薄紅葉二の丸茶屋に抹茶の香          日野圭子


     紅葉づれり修道院の葡萄畑           武藤光晴


     もみづれり湖畔を染むる箒草          中村修一郎



          



     おん滝を神とす山の初紅葉            豊長みのる


     きつつきの穴見ゆ紅葉せるその木に        瀧澤伊代次


     すさまじき真闇となりぬ紅葉谷          鷲谷七菜子


     御仏をふかく蔵して紅葉晴            今瀬剛一


     まなうらに紅葉冷ゆらむ伎芸天          西村和子


     ほどほどに老いて紅葉の山歩き          能村登四郎



          
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10月 27日

2019-10-26 13:55:35 | Weblog
                   黄葉 <表題写真=はんてんぼく>



     倉庫裏銀杏黄葉が明るくす            沢木欣一


     雀らは何ついばむや萩黄葉            細見綾子


     無患子の黄葉明りに雀くる            栗田やすし


     欅黄葉観音様は留守なりし            磯田なつえ


     ぶな黄葉透かし津軽の海光る           船橋 良


     幾万の墓碑へ黄葉づるモモタマナ         平松公代


     北大の楡より黄葉始まれり            倉田信子


     みよしのの渓の深さよ葛黄葉           金田義子


     師の逝きて銀杏黄葉散りやまず          澤田正子


     新宿の銀杏黄葉を浴びにけり           中川幸子


     大銀杏黄葉して幹艶めけり            松本恵子



          


           栃の木 黄葉


     ポプラ黄葉より平らな雲の湖に伸ぶ        大野林火


     ひとむらの山吹黄葉心澄む            山口青邨


     アカシヤの黄葉まみれの巴里雀          林 翔


     村の灯は楮黄葉を照すなり            阿波野青畝


     黄葉を見よと硝子を拭きくるる          石田波郷


     黄葉描く子に象を描く子が竝び          稲畑汀子




          


          さわぐるみ 黄葉




     
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10月 26日

2019-10-25 14:28:29 | Weblog
                 秋思・秋あはれ・傷秋・秋さびし



     秋思かなぎつくり腰の背を屈め         栗田やすし


     橋を渡る水に魚ゐる秋思かな          細見綾子


     ヴィーナスの腕無き腕の秋思かな        矢野孝子


     旅の文届き秋思の深みたる           清水弓月


     腕解かぬゴリラの真顔秋思ふ          佐藤とみお


     紙踏絵板踏絵見て秋思濃し           倉田信子


     秋思濃し式部の筆の般若経           武藤光晴


     足細き空也立像秋思かな            鈴木みすず


     口ずさむ寮歌秋思の盃重ね           中野一灯


     曲がりたるくくり女の指秋思濃し        石川紀子


     頭の垂れし即身仏や愁思かな          河合義和


     未来とは死後も含むや秋思濃し         櫻井幹郎



          



     秋思あり触れて素焼の鉢の肌          鈴木真砂女


     当番の巫女に秋思を頒たれて          鷹羽狩行


     釦はづし又はめ秋思行ききせり         能村登四郎


     船の揺れ両手にささへゐて秋思         上村占魚


     力杖秋思の杖となりにけり           鷲谷七菜子
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10月 25日

2019-10-24 17:28:00 | Weblog
                 草の花・草花・草花売



     雑草の花のよろこび母子の座          細見綾子


     ショベルカー草の花ごと山崩す         河原地英武


     碧住みし根岸の路地や草の花          栗田せつ子


     木曽馬の秣にまじる草の花           清水弓月


     この道はふるさとに似て草の花         国枝洋子


     殉教の碑へあふれさす草の花          谷口千賀子


     風呂敷に包む喪服や草の花           武田稜子


     日時計の針が撫でゆく草の花          野島秀子


     戦あと見知らぬ草の花ばかり          森 靖子


     草の花屈めば水の音かすか           久野和子


     墓守の屋敷跡とや草の花            平 千花子


     廃坑に途切れし鉄路草の花            こころ



          



     草花や湖の水つく通ひ路            河東碧梧桐


     秋はいま露おく草の花ざかり          飯田蛇笏


     草の花摘みて手向けむ塚もなく         富安風生


     日かげにも咲きつらなりて草の花        深見けん二


     みづうみに不意の白波草の花          鷲谷七菜子


     草の花赤き瓦を積み濡らす           野澤節子



          
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10月 24日

2019-10-23 19:52:23 | Weblog
                  鵙・鵙日和・百舌鳥



     一服の茶にもてなされ鵙高し          細見綾子


     起きぬけに鵙の高音や寮泊り          栗田やすし


     鵙猛る国盗りの城仰ぐとき           下里美恵子


     玄室の眠る千年鵙猛る             国枝隆生


     噛みてみる籾の乾きや鵙の晴          都合ナルミ


     鵙を聴く蓑虫庵に足垂らし           岸本典子


     ごん狐棲みし里とや鵙高音           武藤光晴


     旅立ちの朝初鵙の高鳴けり           福田邦子


     鵙晴れやピザ売りの声絶え間なし        小島千鶴


     鵙猛る壬生浪人の屯所跡            丹羽一橋


     岩肌にハーケンの跡鵙日和           服部鏡子


     乗り合ひの小紅の渡し鵙鳴けり         高橋治子



          



     いくすぢも炊煙青し雨の鵙           大野林火


     生贄の場所を忘れて雨の鵙           阿波野青畝


     夕鵙と同じ暗さの水流る            廣瀬直人


     きのふ降りけふ澄み晴れし松の百舌鳥      水原秋櫻子


     たばしるや鵙叫喚す胸形変           石田波郷


     わらひだすまでに不運や鵙たける        加藤秋邨


     
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10月 23日

2019-10-22 15:13:40 | Weblog
                銀杏・銀杏の実



     銀杏焼き皮散乱と寝てしまふ          細見綾子


     銀杏落つ仏足石の指の窪            栗田やすし


     銀杏や熟読したるレシピ本           河原地英武


     小袋に銀杏売れり山の寺            中村修一郎


     銀杏の色づく風や弁士塚            栗田せつ子


     銀杏の踏まれてありぬ宮普請          辻江けい


     銀杏落つ飢饉供養の石仏            武藤光晴


     銀杏を拾ふ銀行街に住み            伊藤範子


     青シート広げ銀杏打ち落す           櫻井勝子


     銀杏の踏みしだかれし村社           高橋ミツエ


     深夜バー焼銀杏に舌こがす           武長脩行


     升売りの銀杏こぼる朝の市           松平恭代


     教室に銀杏匂へり父母の会           長岡安子



          



     法話きく目は銀杏を拾ふ子           田畑比古


     ぎんなんをむいてひすいをたなごころ      森澄雄


     ナース来て銀杏拾ふ夜勤明け          下山宏子


     軋みあふ新ぎんなんの象牙玉          百合山羽公


     ぎんなんのさみどりふたつ消さず酌む      堀 葦男




          
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