11月 30日

2017-11-30 04:31:39 | Weblog
               (  落葉・落葉焚・落葉山  )



音立てて踏む子規庵の柿落葉        栗田やすし



頬杖の卓屋根滑る夜の落葉         沢木欣一



朴落葉少しの風に遠く飛ぶ         細見綾子



平家谷くるぶしまでの朴落葉        佐藤とみお



トンネルの奥の奥まで椎落葉        丹羽康碩



城跡へ踏むたび匂ふぬれ落葉        岸本典子



朴落葉はりつく雨後の石畳         伊藤範子



夕風に落葉急なる桶狭間          坪野洋子



柿落葉散り込む耶蘇の隠し井戸       廣島幸子



桂落葉甘き香ほのと関所跡         桜井節子



堆き銀杏落葉の明るさよ          武藤光晴



はけに沿ふ小径に乾く柿落葉        藤本いく子



幇間の碑の辺落葉の吹き溜まり        こころ



ニコライの鐘の愉しき落葉かな        石田波郷



夫見舞ふけふを限りの落葉道         石田あき子

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11月 29日

2017-11-29 04:35:51 | Weblog
               (  枯蟷螂・蟷螂枯る  )



手を合はせ行き所なき枯蟷螂        細見綾子



疑えば卓の蟷螂褐色に           沢木欣一



一条のみどり残れる枯蟷螂          横山房子



逆しまにポストをのぞく枯蟷螂        尾沼チヨ子



枯れてゆく蟷螂すがる指の先        栗田せつ子



蟷螂の枯れて日向に仁王立ち        伊藤旅遊



つまみあぐ枯蟷螂のみどりの目       武山愛子



荒壁に夕日浴びゐる枯蟷螂         掛布光子



枯蟷螂俳聖殿に斧かざす          林 尉江



枯蟷螂ふるれば斧をふり上ぐる       垣内玲子



枯蟷螂落ちても構ふ石の上          山口草堂



枯蟷螂日のある方へ動き出す         守谷順子




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11月 28日

2017-11-28 04:24:45 | Weblog
               (  鳰・にお・一丁潜り・かいつむり  



首ふつて浮巣に遠きかいつぶり         栗田やすし



世の寒さ鳰の潜るを視て足りぬ         沢木欣一



水底の日暮見て来し鳰の首            福永耕二



一条の洩れ日を鳰のふり返り           能村登四郎



巣を転ぐ親指ほどの鳰の雛           都合ナルミ



城囲む碧き流れや鳰の声            利行小波



鳰潜り逆さ伊吹の濃くなれり          中川幸子



鳰の子のはぐれて小さき声あげぬ        牧野一古



にほどりの鳴くたび湖面暮れゆけり       坪野洋子



鳰二つ寄りて伊吹の影乱す           清水弓月



潜りては鳰の番の離れゆく           森靖子



鳰の影薄暮にまぎれ潜りたる          飯田蝶子



漂へるものと遊びて鳰             大石悦子



鳰鳥や池の底より大あぶく           橋本榮治
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11月 27日

2017-11-27 04:18:32 | Weblog
                (  柊の花・ひひらぎの花・花柊  )



柊の花を見し目や眼帯す           細見綾子



父とありし日の短かさよ花柊          野澤節子



花柊散る静かさの水屋窓            石川桂郎



花柊匂ふ如安庵の躙り口           角田勝代



ひひらぎの香れる朝子は母に         若山智子



花柊匂ふ夕べや雨兆す            白鳥光枝



柊の花こぼれ継ぐ窯場径           幸村志保美



赤子見に花柊の路地ぬくる          武田稜子



柊の花一枝挿し第九聴く           谷口千賀子



花柊術後の息をそつと吸ふ          金原峰子



柊の花も蕾も銀の粒              橋爪巨籟



柊散る障子越しなる尼の声           吉野義子


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11月 26日

2017-11-26 05:07:36 | Weblog
             (  時雨(しぐれ)・村時雨・小夜時雨・時雨傘  )



赤多き加賀友禅にしぐれ来る        細見綾子



しぐるるや窓を掠むる鳥つぶて       沢木欣一



時雨るるや駄菓子に染みし粗き紅      栗田やすし



山際の空が明るし朝時雨          梅田 葵



補陀落へ陽をこぼしたりしぐれ雲      矢野孝子



伊賀しぐれ茶屋の柱に刀傷         佐藤とみお



しぐるるや蓑虫庵の石竃          下里美恵子



江戸独楽の漆の艶や時雨くる        栗田せつ子



夕時雨ショパン流るる美容室        谷口千賀子



花嫁の白無垢にさす時雨傘         辻江けい



時雨るるや淡き五彩の京干菓子       伊藤旅遊



山低き上総の里やしぐれ雲         武藤光晴



しぐるるや螺鈿の鳥のあをびかり       鍵和田釉子



しんかんと時雨るゝ松や蚶満寺        寺田寅彦



しぐるるや切られて白き蛸の肌        鈴木真砂女






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11月 25日

2017-11-25 04:20:10 | Weblog
                (  日向ぼこ・日向ぼっこ・日向ぼこり  



耳遠くなりしと母の日向ぼこ           栗田やすし



かたまつて同じ事務服日向ぼこ           岡本眸



日向ぼこ頬杖といふ杖もあり            村越化石



クッキーのかけらが膝に日向ぼこ         梅田 葵



榾を焚く煙まとひて日向ぼこ           上杉和雄



棒切れを咥え新鵜の日向ぼこ           倉田信子



繕ひの針の手休め日向ぼこ            太田滋子



膝の子の乳の匂ひや日向ぼこ           熊谷タマ



掃除夫の日向ぼこする能舞台           松原和嗣



みどり児に頬撫でられて日向ぼこ         横井正子



参拝者見下ろし猫の日向ぼこ           古田富美子



木目浮く有楽の縁に日向ぼこ           山下智子



だんだんに人でなくなる日向ぼこ          奥坂まや



日向ぼこせる中一人卵売り             太田土男

     



          今日25日は三島由紀夫の忌・憂国忌

三島忌や造花の薔薇に棘のあり           内田美紗



松籟の闇にたかまる憂国忌             鷲谷七菜子



憂国忌冬の金魚のみじろがず             こころ
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11月 24日

2017-11-24 03:57:08 | Weblog
                     (  マスク  )



宝くじ売場にマスクして並ぶ           栗田やすし



咳こぼすマスクの中の貌小さし           吉田鴻司



修道尼澄める瞳もてるマスクかな          森田峠



マスクして少年切に漫画読む            石塚友二



白マスクはづして母の咳き込める         丹羽康碩



マスクして立ち読みしたる古本屋         与後玲子



桃色の大きなマスク遅刻生            河原地英武



マスクして駅長の目のよく動く          漆畑一枝



マスクしてマスクの人に近づかず         小長哲郎



挨拶をマスクの二人目で交はす          中山敏彦



眉と目の賢く見ゆる児のマスク          服部富子



福耳を引つぱってゐるマスクかな          下村非文



アメヤ横丁マスクの客に混み合へり         こころ
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11月 23日

2017-11-23 03:56:35 | Weblog
                 (  一葉忌  )



荷札小さき古本届く一葉忌            栗田やすし



廻されて電球ともる一葉忌            鷹羽狩行



霧の香のなかの菊の香一葉忌           飯田龍太



一葉忌折目を六ツに薬包紙            秋元不死男



一葉忌暗き三和土のしみ抜き屋          矢野孝子



百円で甘酒飲めり一葉忌             栗田せつ子



竹筒に禿びたる小筆一葉忌            佐藤とみお



一葉忌すとんと暮れて飯が噴く          鈴木みや子



売薬の薬入れ替ふ一葉忌             荻野文子



水仙のやはらかに伸ぶ一葉忌           鈴木みすず



衿替の絹糸弾く一葉忌              尾関佳子



包丁で削る鉛筆一葉忌              荻野文子



頼まれし妻の足袋買ふ一葉忌           福永耕二



惜しまれて消ゆる銭湯一葉忌           吉田京子



一葉忌母にまだある糸切り歯            こころ




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11月 22日

2017-11-22 04:20:30 | Weblog
                 (  冬薔薇・冬の薔薇  )



待つ人あり睫毛の影と冬の薔薇          沢木欣一



冬薔薇日の金色を分かちくるゝ          細見綾子



戴いてその日咲ききる冬の薔薇           池田澄子



問診の女医は教へ子冬薔薇            櫻井幹郎



農学部冬薔薇束で売られをり           太田滋子



日時計の影の薄さや冬の薔薇           渡辺慢房



グラバー園茎たくましき冬薔薇          矢野愛乃



保育器の嬰が微笑めり冬薔薇           横井美音



下町や都電の柵に冬の薔薇            武藤光晴 



寒の薔薇一輪挿しに開ききる           中山敏彦



四季咲きの薔薇の小さき冬の色           今井千鶴子



冬薔薇や仕事で逢ひて好きな人           岡本 眸



冬の薔薇抱くマネキンの細き腕           こころ





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11月 21日

2017-11-21 04:33:03 | Weblog
               (  冬帽子・毛糸帽  )



富士見ゆる窓辺に置けり冬帽子         栗田やすし



突堤の一番先きの冬帽子            細見綾子



冬帽のやはらかなるを鷲掴み           鷹羽狩行



冬帽に耳すつぽりと追試受く          河原地英武



毛糸帽癌と闘ふ友に編む            岸本典子



蚤の市太子の像に冬帽子            生川靖子



カンツォーネチップの冬帽回り来し       高橋ミツエ



海軍壕出て冬帽を深かむる           福田邦子



川下る舟に忘れし冬帽子            小島千鶴



父は亡しロシア帰りの冬帽子          澤田正子



冬帽子被れば祖父に似てきたる         上杉和雄



遊ぶ子にはなれて母の冬帽子          片山由美子



目をあぐるたびの浮雲冬帽子          鷲谷七菜子




六地蔵菩薩揃ひの冬帽子             こころ
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