to Heart

~その時がくるまでのひとりごと

天使の分け前

2013-04-21 20:48:18 | the cinema (タ行)

かけがえのない出会いと
スコッチウイスキーがもたらす“人生の大逆転”!

原題 THE ANGELS' SHARE
製作年度 2012年
製作国・地域 イギリス/フランス/ベルギー/イタリア
上映時間 101分
脚本 ポール・ラヴァーティ
監督 ケン・ローチ
出演 ポール・ブラニガン/ジョン・ヘンショウ/ガリー・メイトランド/ウィリアム・ルアン/ジャスミン・リギンズ/シヴォーン・ライリー
スコッチウイスキーの故郷スコットランド。育った環境のせいでケンカ沙汰の絶えない若者ロビー(ポール・ブラニガン)は、恋人レオニーと生まれてくる赤ん坊のために人生を立て直したいが、まともな職も家もない。
またもトラブルを起こし、刑務所送りの代わりに社会奉仕活動を命じられたロビーは、現場の指導者でありウイスキー愛好家であるハリー(ジョン・ヘンショー)と、3人の仲間たちと出会う。ハリーにウイスキーの奥深さを教わったロビーは、これまで眠っていた“テイスティング”の才能に目覚め始める。


ワインやウイスキーが樽の中で熟成される過程で、年に2%程が蒸発して減っていく。
その失われた分は"天使の分け前"と呼ばれる。つまり、熟成(美味しさ)のおすそ分け。
とあるワンショットバーのマスターから、こんなお洒落なネーミングを持つうんちくを聴いて
なんてロマンチックなの~と目を輝かせた、もう30年以上前の私。。。(遠い目・・・)

そんな思い出さえも、語って聞かせるオトナがいればこそ。
そして、
この作品では、まともに仕事も家すらない、荒んだ若者がそんなオトナとの出会いを果たすのです。
本作品の粗筋はもう、これ以上触れないでおこうと思うのです。

ただ、
この作品を観る前に、この舞台であるイギリスの若者の失業者が昨年100万人を超えたという、
厳しい現実があるということを念頭に置いて鑑賞した方がいいです。そうすれば、
自国を代表する飲み物であるスコッチウイスキーを、若者が一度も呑んだ事がないという事態も、
恋人レオニーの父親が、ロビーに対して取った行動も言葉も、
ちゃんと意味を持って心に迫ると思うのです。

そして、不況、不況と叫ばれていても、
私たちを取り巻く(日本の)環境が、いかに恵まれているかも改めて思い知ります。


長引く不況は、親子の代にまで亘り、生活苦は教育にありつけない若者を生み出す。
そして、ロビーのように、生活を立て直したくても足がかりさえなく、、、
若者の100万人の失業者”の中から抜け出すのに、
本当には、何が必要だったのか?

ちょっと前の私であれば「ぃやぃや、イカンでしょう~」となったあのやり方も、
そのお国事情を知れば、逃す事の出来ないチャンスだったと思えるのです。

過酷な環境下で、もがく若者に差し伸べられた一つの出会い。その優しい手。
最後に添えられたメッセージ、、、。
ロビーは、自らを樽の中で醗酵を待つウィスキーに見立てたのかも

時流をみつめ、毒を持ちながらも、
ケン・ローチ流の温かな眼差しとともに、逞しく生きよとのメッセージも感じる作品でした。
同時に、不況を生み出した世代の、私たちオトナの、
若者に向ける役割も描かれているのでしょう。
ケン・ローチファンならずとも楽しめる1本だと思います。


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6 コメント

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確かに (rose_chocolat)
2013-04-24 20:53:22
細かいこと言い出したらキリがない作品なんですよね。
相変わらずのご都合主義な訳なんだけど、今回銀座テアトルの閉館も重なって、あたたかみの方が伝わりました。
イギリスの階級社会をテーマにした作品はたくさんあるけど、これは暗いだけじゃなくて希望もあったのがよかったと思いました。
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私も樽の中で・・・いやいや、もうアカンでしょう (ぺろんぱ)
2013-04-24 21:50:14
こんばんは。
お伺いしてあらためて当国の背景に思いを馳せておりあmす。

>温かな眼差しとともに、逞しく生きよとのメッセージ

そうですね、ここにすべて集約されていると言えるのかもしれませんね。
“逞しく”・・・それがあのロビーたちの行動を後押ししてくれたのだという気がしました。

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rose_chocolatさん♪ (kira)
2013-04-24 23:17:28
ホント、激混みでしたよね~。いつも混んでる印象があるんですが
テアトル銀座のクロージング作品とあって今回は余計ですかね~。

悪のスパイラルというか、お金も後ろ盾もなく、親もお金もなく、、、家もない。
長引く不況は普通じゃ抜け出せないってこと、それがイギリスの現実なんでしょうね~。
良く考えるととことん悲観的に成らざるを得ない状況下でも、チャンスを掴んで抜け出せ!ですかね
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ぺろんぱさん♪ (kira)
2013-04-24 23:37:30
↑にも書きましたが、
もう、親の代で貧困、家も持てず子供に教育も与えられないまま死んでしまったら、
残された子供は生きる為に盗みや恐喝などをして成長していくしかない、、
戦後ならいざ知らず、日本人には実感としては解らないロニーたちのおかれた環境ですよね~。
私たちが普通に口にしてるお酒など、たとえばフランスでも、一般の方たちは
日本で売られているようなワインはまず呑んだ事がないと、仕事でやって来たパリの若者が言ってました。

不景気でも、日本の若者は普通に美味しいお酒を飲める。幸運なんですね~。
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今晩は☆★ (mezzotint)
2013-05-06 19:35:41
kiraさん

お邪魔するのが遅くなりすみません。
日本の不況と違い諸外国の不況は半端じゃないですね。
住む場所なければ明日からどうして良いか分からない
わけですから本当に身につまされます。
ストリートチルドレンという言葉をよく聞きますが、
まさに行き場ないわけですよね。
でも今回のケン・ロ―チ監督作品、暗いテーマでは
ありましたが、まだ何となく明るさもあり良かったです。
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mezzotintさん♪ (kira)
2013-05-07 12:37:30
これは一人の不遇な若者に訪れた
人生の転機、きっかけのドラマですが、私たち日本人からみると
「不況」の度合いが違うというか、階級制度も含めて
ちょっと正しくは理解できない彼らの置かれた環境に、
改めて、家族とか、オトナがどう若者に関わっていくのか?とか・・・
日本に生まれたことが幸運だったと同時に、社会における大人の役割、みたいなものを感じました。

皮肉屋のケン・ローチ監督ですが、彼の愛国心も感じさせますよね
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