行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

【北海道取材ツアー⑥】北大の手厚いもてなしに感謝

2018-07-07 13:55:05 | 日記
北海道大学サマーインスティチュートでの授業が終わり、東京に戻る機内にいる。メディア専攻の学生だけでなく、わざわざこのカリキュラムのために集まった天津・南開大学英語学科の大学院生や米国で設計を学ぶ中国人大学生、さらには北大医学部在籍の中国人留学生までと幅広い顔ぶれがそろい、熱のこもった議論ができた。日本人が中国語で中国メディアを語るという斬新な企画も、まずは成功したのではないか。

今回の企画は、北大大学院国際広報メディア・観光学院の渡辺浩平教授が発案したものだ。渡辺教授には、学生の取材ツアーでビザ申請に必要な招請状を出していただいただけでなく、私たちが札幌に到着した5月30日、中国人留学生との交流会まで開いてくれた。オードブルのほか、カレーが出て大好評だった。台湾社会を研究している藤野陽平教授も飛び入り参加し、お酒を差し入れてくれた。実際は、出席者を中国人留学生に限ったわけではないのだが、大学院の学生は大半が中国人なので、結果的にそうなってしまう。今回のサマーインスティチュートでも、日本人学生の姿はなかった。



交流会には、取材ツアーで通訳を担当をお願いした修士・博士課程の魯諍、王梓韓、王瞻、南岳さんの計4人も同席し、有意義なやり取りができた。北大祭の当日は、中国人の女子院生3人が案内役まで買って出てくれた。北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院の東アジアメディア研究センター学術研究員、芳賀恵さんには、スケジュールや交通手段に関するきめ細かいアドバイスや、取材先との連絡までしていただいた。

北大の先生や学生にはことのほかお世話になった。深く感謝を申し上げたい。









交流会が終わって、同学院の藤野彰教授が私たちのホテルまで同行し、学生を部屋に届けた後、私とすすきので夜中まで飲んだ。先頭を切って、スタスタと札幌の繁華街を歩く藤野氏を、学生たちは興味深く思ったようだ。後で藤野氏の後ろ姿の写真が送られてきた。





北海道ツアーの初日は、早朝に上海を発ち、駆け足でスケジュールをこなしたが、手厚いもてなしのうちに過ぎた。

(続)

【北海道取材ツアー⑤】中国人学生が見た北大祭

2018-07-06 20:52:31 | 日記
5月30日、札幌のホテルにチェックインし、そのまま北海道大学に直行した。6月1日から始まる学園祭、北大祭の実行委員会責任者に取材するためだ。北大祭は今年60回を迎えた。昨年10月から学生主体で準備が始まり、当日の交通整理や案内、ごみ収集を含め学生ボランティア計130人が企画する一大イベントだ。中国には学生自治が極めて限定されているため、中国の学生にとっては非常に新鮮な経験となる。



取材の窓口になってくれたのは北大祭実行委員会広報担当の戸島大雅君(法学部3年生)、取材に応じてくれたのは、実行委員長の三宅隆裕君(工学部2年)。私たちが交通に要する時間を読み誤り、約束の時間から1時間近く遅れたにもかかわらず、辛抱強く待っていてくれた。申し訳なく思うと同時に、非常にありがたかった。





彼らの紹介によると、北大祭の売り物は1.2キロのメーンストリートに並ぶ模擬店で、今年は過去最大の230店が参加した。30日はサークルや学部クラスなどの各グループが、ポスターや装飾作りに取り組んでいるところで、貴重なインタビューの機会もできた。北大の学生たちが和気あいあいと楽しみながら作業をしている姿を見て、彼女たちは「こんな学生生活を夢見ていた」とうらやましがった。





掲示板に乱雑に貼られたサークルの勧誘チラシ、学生が小グループで談笑し活気にあふれたラウンジ、目に入るものすべてが印象的だった。中国では過重な授業カリキュラムに追われ、学校が募集するボランティア活動に参加し、就職のための長期インターンシップもこなさなくてはならない。アルバイトをし、サークル活動を楽しむ日本の学生たちは、縁遠い存在に映ったようだ。

1日の北大祭初日、中国人学生たちは取材をしながら、思い思いのコスチュームが特に印象深かったようで、さかんに写真を撮っていた。北大祭の印象をつづった学生の感想文には以下の写真が掲載されていた。









模擬店の中には、各国の留学生による模擬店30店が並ぶ「International Food Festival(IFF)」エリアが設けられ、北大祭の特色の一つとなっている。最も多い中国人留学生は水ギョーザやショーロンボー、シシカバブーなど最大の4店舗を出店していた。



ちょうどいいタイミングで日本の大学の学園祭を間近に見て、参加できたのは、得難い経験だった。

(続)

【北海道取材ツアー④】新鮮な学生の目に映った札幌の町

2018-07-05 15:51:51 | 日記
再び札幌に来た。ちょうど1か月前、学生6人を連れ、取材をして歩いたばかりだ。今回は北大主催のサマーインスティチュートで、中国語による中国メディア関連授業を行うのが目的である。雨が続いている。札幌にも梅雨があるのかと思えてくる。北大の緑は雨に打たれ、青々としている。静かな杜の中で学ぶことのできる北大の学生たちは恵まれている。

あわただしくもあり、にぎやかでもあった学生との取材ツアーを思い、一人で再訪する身に深い感慨を覚える。忘れがたい記憶、懐かしい気持ちが、酒の味を深める。ゆっくり回想するにはちょうどいいタイミングである。

こちらに来ても連日、学生たちが北海道取材の成果を示す原稿が届く。期末テストから解放され、遅ればせながら記事を書き始めているのだ。彼女たちの文章を読みながら、取材の場面が改めて目に浮かんでくる。

5月30日、上海経由で札幌千歳空港に到着した。いきなり目にした広告は携帯アプリ、微信(ウィーチャット)決済の広告だった。歩く歩道の側面から、荷物を受け取るバゲージクレームにまである。さぞ中国人観光客が多いのだろう。

「私たちは買い物に来たわけじゃないからね」

私は冗談のつもりで言ったつもりだが、学生たちは若干緊張しているのか、真に受けたようだった。ドラえもんの前で記念写真を撮り、快速エアポートで札幌に向かう。切符も一人一人に購入させ、機械の操作を覚えさせる。所要時間は37分。学生たちは車中、興味津々に車窓から見える光景にカメラを向ける。彼女たちにとっては、初めて見る外国の景色である。自分の目で見て、耳で聞き、体で感じられる旅をさせてあげたい。それが取材ツアーの目的なのだ。





思いもがけない出会いこそ価値がある。一人の学生と列車の隣に居合わせた日本の女性との会話が始まった。小樽出身で、もともと中学校の英語教師だったという。お互い決して流暢とは言えない英語だが、和気あいあいと会話を楽しんでいる。私は一切、かかわらず、二人のやり取りをながめている。



その学生が帰国後に書いた感想文の中に、この列車の中の出会いに関する次のくだりがある。

--会話の話題は北海道のグルメから天気、建築など、さらには私二人ともファンのフィギュアスケート、羽生結弦選手のことにまで及んだ。私たちの英語はあまり上手ではないので、とぎれとぎれ少しずつ交流するしかなかったが、とても愉快で、終点でお別れするまで会話は続いた。

--同じような現地の日本人との交流はたくさんあった。たとえば、コンビニ店の店員は電子レンジで食べ物を温めるのを手伝ってくれたし、北大博物館の店員はTシャツのサイズを熱心に探してくれた。取材の際の交流もある。すべての出会いが楽しかった。

--私は人と話をし、交流をする感覚が好きだ。言葉が通じなくとも、交流の妨げにはならない。お互いが少しの自信と思いいやりを持てば、二つの心はお互いに理解し合うことができる。

列車は恵庭を通過した。つい3週間前、北海道を訪れた李克強首相が立ち寄った「えこりん村」のある場所で、今回の取材先にもなっている。他の停車駅同様、思ったほど小さな駅に学生たちは驚く。それだけに札幌駅の繁栄は印象的だったようだ。地下鉄南北線で中島公園駅まで行き、ようやくホテルに着いた。道中、彼女たちが撮った写真をいくつか紹介する。新鮮な学生の目が、レンズを通し初めてとらえた外国の光景だ。





(続)