虚構と史実の狭間に 小説『親鸞』(完結篇)の連載をおえて 五木寛之 2014/7/8 Tue.

2014-07-08 | 仏教・・・

虚構と史実の狭間に 小説『親鸞』の連載をおえて 五木寛之
 中日新聞 2014/7/8 Tue.
 いつか親鸞を小説に書くことがあるのではないか、と予感したのは、40年以上もまえのことだった。新人の作家として、まだ金沢に住んでいた頃である。『文學界』という雑誌に、清沢満之について短い文章をのせた。そのとき、親鸞という人物を小説にしてみたいと、ひそかに思ったのだ。
 そのまま時が過ぎて、『蓮如』という戯曲を書いた。そこから『親鸞』までは、自然のなりゆきといったほうがいいだろう。
 『親鸞』の新聞連載がはじまった後で、大変な仕事をはじめたものだと、正直、たじろぐ気持ちがないではなかった。
 私が意図したのは、時代の群像の中に親鸞を描くことだった。それは伝記でもなく、評論でもなく、まして研究でもない。どこまでも小説稗史と呼ばれる大衆的な物語である。
 さいわい奇想天外な第1部が、多くの読者に興味をもって受け入れられ、続編の激動篇、完結篇と新聞連載の機会があたえられたことは、作者としては望外のよろこびだった。
 学者や宗門の人たちが考えているほど親鸞の名前は広く知られてはいない。第1部が書店に並んだとき、若い青年の1人が連れの女性に「オヤドリって何だ?」と、たずねているのを聞いたことがある。
 「しんらん」という人がいたのだ、と多くの人びとに知ってもらっただけでも、私は十分に仕事をした甲斐があったと思っている。
 多くの読者のかたがたや、新聞、出版の関係者の皆さんに、心からお礼を申し上げたい。
 連載中に教えていただいた事や、後で気づいた箇所など、単行本刊行の際にはできるだけ加筆訂正するつもりである。なにはともあれ、最後まで執筆を続けられたことは、自力では及ばぬことだった、と感じないではいられない。あらためて、ありがとうございました。
 (いつき ひろゆき)
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〈来栖の独白 2014.7.8. Tue. 〉
 第1部が始まったのは、2008年9月だったと思う。2014年7月6日Sun.まで、存分に愉しませて戴いた。五木さん、山口晃さん、心よりありがとう。私にとっては、聖書の福音に重なるところ(思想)が多かった。「小さくされた人々」へ寄せるイエスの眼差しが、親鸞に重なった。
 そして、完結篇になって強く感じたことだが、この作品は、五木さんのお歳が存分に発揮されているということだ。1932年(昭和7年)生まれでいらっしゃるが、「老い」ということを生の筆致で描かれていたように思う。これは、若い人には書けない。深く味わわせてもらった。ほんとうにありがとう。 
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