*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。9回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
「第2章 もはや東京の一部も放射線管理区域」P72~ より
日本は法治国家か?
一平方メートルあたり4万ベクレル以上のところが放射線管理区域だというのであれば、一平方メートルあたり60万ベクレル以上という猛烈な汚染を受けた、福島第一原子力発電所から北西に延びる4、50キロメートルのエリア内はもちろん、半径30キロメートル内、それから、さらに一平方メートルあたり3万から6万ベクレルに汚染されたエリア、すなわち北から、岩手県の一部、宮城県の南部と北部、福島県の東半分、栃木県と群馬県の北半分、新潟県の一部、茨城県の北部と南部、千葉県の北部、埼玉県と東京都の一部、といったところは、すべて放射線管理区域ということになります。
一平方メートルあたり60万ベクレルの地域は、およそ琵琶湖の1・5倍の面積ですが、ここは政府がすでに住む人々を避難させて無人になっています。それで他のエリアの面積を合計すると、一万数千平方キロメートル。この広大な放射線管理区域で、今も数百万人が生活し、子供を産み、子供を育てているのです。
どうしたらいいのか、もうさっぱりわかりません。これがどれだけの悲劇か想像することもできないほどの悲劇が、今、この瞬間にも、この日本で進行しているということなのです。
一平方メートルあたり4万ベクレルを超えて汚染されたものを、放射線管理区域から持ちだしてはいけないというのは、法律で定められたことです。ですから、日本の法令を守るのであれば、一平方メートルあたり4万ベクレルを超えて汚染された土地は放射線管理区域に指定して、一般の人々の立ち入りを禁じなければいけません。
しかし日本の政府は、一万数千平方キロメートルという広大な土地を棄てることができないと判断し、人々をそこに残したのです。他にも、一般の人々は一年間に1ミリシーベルトを超えて被曝してはならないという法律もありました。しかし、政府自身が発表しているように、東北地方だけでなく、関東地方も広大な範囲で深刻な汚染を受けています。その事実を前にして、政府な何をしたか。「これまでは平常時だった。今は緊急事態だから、一年間に1ミリシーべルトを超えて被曝してもいい」と言ったのです。しかし、被曝は危険を伴います。特に細胞分裂が活発な子供には危険です。
被曝を避けたければ、その土地を捨てて逃げるしかないのですが、自主避難者に対して国は何の賠償も支援もしないと言って、彼らを見殺しにしました。力のある人の中には自力で逃げた人もいましたが、家族全員では逃げられないので、せめて子供を被曝させたくないとして、子供と母親を逃し、父親は汚染地にとどまっているというケースもあります。そして、農民や酪農・畜産家などにとっては、土地そのものが命であり、容易には逃げられない。それで、子供もも含めて大勢の人々が、本来なら「放射線管理区域」にしなければならない土地に棄てられることになりました。
さらに遡ると、放射能に汚染した水を流すときには濃度規則があるのですが、例えば、今、青森県六ケ所村に建設中の再処理工場については、到底適応できないということで、その規制を外してしまい、かわりに、排水管を沖合3キロメートルのところまで引っ張っていって、海面下四十数メートルのところから海に放出して薄めて流すということになっています。
また、つい半年くらい前でしょうか、南相馬市で、法律で決められた以上の汚染水を川に流し、それを、その法律をつくった原子力機構が承知していたという事件もありました。
これまで日本は法治国家だと自称してきました。国民が法律を破れば国家は処罰します。それなら、法律をつくった国家が法律を守るのは最低限の義務だと私は思います。
しかし、日本の政府というのは、守るのが無理だとなると、自分が決めた法律の一切を反故にしてしまうのです。そうしたことも含めてこの福島の事故については、ここまできて、なぜその罪を裁けないのかと私は思いますし、絶対にこの事故を起こした責任のある人たちを処罰していかなければならないと思います。
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、12/10(木)22:00に投稿予定です。