くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「テンペスト 若夏の章」池上永一

2009-02-09 05:33:57 | 時代小説
「テンペスト」ッ!
噂通りおもしろいです。とてもとてもおもしろいです。(池上永一 角川書店)
時々もう少し描写があってもいいかなーとか、ちょっとご都合よろしくないでしょうかとか、時代小説なのに言葉づかいに現代視点が介入しているとか思わないでもないんですが、いや、でも滅法おもしろいですんで、厚いとめげずにお試しください。
この話がおもしろいのは、イメージが一人歩きしてしまうことですか。美貌の兄と妹が、ともに性を逆転する形で宮中に入り、権謀術数ひしめくなかそれぞれの道を歩いてゆく。
学問に秀で、頭脳で琉球を動かしていく妹は、孫寧温と名乗り、最年少で難関の科試に合格。宦官と偽って出世街道を切り開いていく。踊りと美貌を武器に花当として妹を守る兄嗣勇。
この二人のイメージが、文章に描かれている以上に圧倒的なのです。
また、寧温が女だとは知らない役人たちは、年若い宦官が自分たちよりも高位であるとやっかみ、様々な嫌がらせをします。しかし、それにへこたれず前へ前へと歩いていく寧温がまたいいのです。
彼女の中の乙女心がある薩摩武士と出会うことで、花開いていくのも、きゅんとしますね。
この話を読みながら、わたしは「小説の形はしているけれど、それよりももっと近いものがある」と思っていました。お芝居のようでもあるし、少年漫画のようでもある。
多嘉良のおじさんは狂言まわし的な役割だし、しょっちゅう色気について書かれるのは少年漫画の得意分野ではないか、と。
視点も三人称なのですが、ひょいひょい外来語が入ったりその後をほのめかしたりするので、厳密な人には読みにくいかもしれません。
気になったのは142ページに「この証文がいずれ聞得大君を破滅へと導くことになろうとは、彼女の霊力を以ってしてもわからないことだった」と書いてあるので、聞得大君が登場すると証文がいつ出てくるのかとはらはらしながら読んだのですが、上巻「若夏(うりずん)の章」を読み終わっても出て来ませんでした……。わたしの読みが浅いの? 彼らからの上納金をあてにしたことかとも思ったんだけど、でも破滅した直接原因にはなっていないでしょう。解るかた、教えてください。
あと、あんなに引っ張った「馬天ノロの勾玉」も、あの一瞬で終わりだとしたら納得いかないのですが。大あむしられたちも、寧温が龍を降ろしたことを知っているんだから、刑にもっと反発してほしいなー。
でも、第七章の冒頭と終末の重なりはすごく好きです。
これから下巻を読もうと思ています。確か……女に戻って側室になるんだよね? あらすじ、あちこちで聞くと思いますが、知っていてもおもしろいので大丈夫だと思いますよ?

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1 コメント

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Unknown (ミリオン)
2024-05-18 21:41:30
こんばんは。
嬉しいです。頑張って下さい。今日の朝は、「虎に翼」の第7週を見ました。

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