いかりや爆氏の毒独日記

最近の世相、政治経済について「あれっ?と思うこと」を庶民の目線から述べていきたい。

何が本当の外国情報を妨げたか?:高尾慶子著「イギリス人はかなしい」

2011-10-05 19:36:45 | 日記

高尾慶子著「イギリス人はかなしい」読後(1)― (明け烏)
 
 高尾慶子著「イギリス人はかなしい」は明治に書かれた漱石の「倫敦塔」以来の貴重な作品であり、唯一無二の優れた書物である。

 その中で高尾氏は、自分がイギリスのworking class(職業は housekeeper)として働いた様子を淡々と描く。そしてそれが巷間伝えられている素晴らしい外国生活という虚飾に満ちたものからは、はるかに隔たった辛く厳しいものであることを明らかにする。
 
 まずは語学力の壁がある。イギリスの階級社会があり、おそるべき東洋人への蔑視がある。あるいは話には聞いていたが、と呟きながらため息をつき、あるいは眉を顰めながら、あるいは思わず顔を赤くしながら読んだ読者も多かったのではないだろうか。

 四捨五入していうのならば、二十世紀に入ってからの外国滞在記(主として米国)はすべて「黄門ちゃま漫遊記」に過ぎなかった。小説家であれ、評論家であれ、ジャーナリストであれ、外国の都会または学園都市(両者とも極めて人工的なものだ)での表面的な経験を如何にも、それが現実のような顔をして、そして自分がそこに溶け込んだような気になって、書いたというのが実際ではなかったろうか。

 そもそも何ヶ月または何年かしたら日本に戻るつもりの生活にそれほど深刻なものが感じられないのは当然であって、これが文章になると生活を離れた一種の爽快感を感じさせるのが、この手の書物がひろく好評を博した大きな要因であったのかもしれない。

 一方、高尾氏は思い込みや虚構、もっと平たく言えば講釈師的な自己耽溺を排して、生活人としてのイギリス生活を刻むように描いていく。ロンドンの社会といえども人間の社会であるからそこにはあらゆる人としての悪徳が満ち、理不尽がまかり通っている。それらに目をそむけることなく書いたところに、この本の他の外国滞在記から屹立した第一等の価値がある。

 余談になるが、高尾慶子氏のこの前の著書の題名「イギリス人はおかしい」は、おそらく林望氏の「イギリスはおいしい」をもじったものであろう。そこに強烈な皮肉と高尾氏の自負を感じるのは私だけであろうか。

いかりや:

 キャリア官僚のうち選ばれたエリートはアメリカに留学して、真のアメリカの実態をみることなく洗脳されて帰ってくると言われている。東京地検元特捜部長・佐久間達哉氏は、あのラクダのコートを着て2009年3月小沢事務所のガサ入れに颯爽と踏み込んだ男である。彼は、在アメリカ合衆国大使館では一等書記官として勤務した経験を持っている。彼は、アメリカ駐在中何をみて帰国したのだろうか、すっかり洗脳されて給与は日本の税金でらもらいながら、仕事は某国の手先となって働いているようにみえる。

 上記明け烏氏の投稿文を読んで、昔読んだ会田雄次著の『アーロン収容所』を思い出した。

 終戦後のビルマにおけるイギリス軍の捕虜収容所での捕虜としての生活を通じて、監視されている側の捕虜である合田雄次氏が逆に監視する側のイギリス軍兵士たち(女性兵士を含む)の生態を冷徹に観察、時にユーモアを交えて記している。

イギリス人兵士や将校らは、日本人を人間扱いしていない(拷問とか虐待するという意味ではなく)。それはあたかも中国においてアヘンを蔓延させ、遂にアヘン戦争に至った白人たちのアジア人蔑視の姿勢と共通するものである。

 人権の国アメリカの白人たちも、同様である。既述したが、アメリカの歴史は移住してきた白人たちが先住民インディアンを殺戮してできた国であり、黒人奴隷制度は黒人を間扱いしたものであるが、それらは神の思し召しであったかのように正当化しようとしている。

 昔の筆者の些細な経験であるが、日本から出張で南米に行く場合は、必ずアメリカ経由となる。僅か10回余りの、南米出張で3度も出張先の空港で自分の旅行バッグが届かなかった経験がある。いずれもアメリカのトランジット(乗り換え)空港で、ヨーロッパや南米のとんでもない国へ間違ったところへ送られていた。日本の空港では考えられないことである。

 アメリカの空港カウンターでの荷物を仕分けしているのは、殆どが黒人である(現在はどうか知らないが)。彼らの仕事ぶりを観察しているとわかる、いかにも面倒くさそうに、ちんたらちんたらであった。彼らを責めるつもりはさらさらないが仕事への忠誠心なんてまるでない、そうさせているのがアメリカ社会である

 アメリカを非難している場合ではないかも知れない。今回の東京電力福島第一原発事故処理の経緯をみていると、放射能におびえながら現場で働く作業員の人たちは、元請けを通じて一次、二次、三次、ひどいのになると、四、六、七次の下請けもあるという。暴力団関係者が作業員を集めているケースもあるらしい。雇われる作業員は、それぞれのところでピンハネされた上に、再雇用されないで使い捨てが当たり前のように行われているらしい。