アバウトなつぶやき

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「国宝 源氏物語絵巻」展

2005年11月25日 | かんしょう
 徳川美術館の「国宝 源氏物語絵巻」展へ行き、人垣を見てきました♪うふっ。
 いやぁ、すごい人でした。(earthさんはこんなにひどくなかったのかしら?)
 行く前から人は多かろうと思っていましたが、入り口で入場制限してるせいで入る前から並んでました。源氏物語絵巻となれば文学ファン、美術ファン、おまけに茶道や華道など、伝統を尊ぶ方々も興味のある分野ですからねぇ。
 今日の同行もシロウタ&うちの次男。人を見た時点で「今日は館内はざわついてるな」と感じましたが、同時に「これはゆっくり鑑賞するのは無理」と察知。観たいところだけをポイントで観ることにしました。シロウタを先に行かせて、次男と一気に駆け抜ける事を決意。
 入る前にしばらく外で遊ばせたおかげで次男はおとなしく抱っこされており、展示室では大人しくし、廊下へ行くと「もうしゃべっても良い?」と尋ねるお利口ぶり。とはいえ、これだけ人がいるとねぇ…靴で服を汚さないかと思っておちおち前に近づけんわ。
 常設展は眺めるだけにしよう、今日の目的は企画展…と思ったものの、どうしても刀がある第1展示室では足を止めてしまいます。刀といっても、ワタクシの好きなのは日本刀とか太刀とか呼ばれるものじゃなくて「小柄」です。あの小さな道具にも施されている装飾の美しさ。そしてその身の内には鋭さが秘められてると思うとたまりませんわ。
 茶の湯も能楽も好きだけど、これで立ち止まっていては前へ進まんっ。蒔絵手箱の美しさに足を止めつつも先を急ぎます。
 しかし、こういう見方をすると好みの方向がハッキリしますね。ワタクシが工芸的な美術品に足を止めるのに対し、シロウタはそこをはしょって巻物とかの、あの何が書いてあるか分からんような文字を熱心に見てきたようです。あういうのって、ワタクシから見れば「現物が残ってる」事自体がすごいのであって、鑑賞するようなもんじゃないように見えるんだけど…。

 企画展の展示室もこれまたすごい人です。今回は「現存する源氏物語絵巻を一挙公開!」ってことで何が何でも行かねばと思ったのですが、そこまでじっくり観ることはかなわぬ様子です(少なくとも子連れは)。
 五島美術館まで足を運ぶのは大変なんだからね、こちとらは。少なくともどんな状態で残っているのか、どんな筆致なのか、どんな色使いなのかだけは確認しなきゃ気が治まらないっ。(そのポイントなら徳川の常設でもいいんじゃないの?とか言わないように。)
 人垣のほんの少しの隙間に入り込んだり、ガラスケースの横にへばりついたりし、そろそろ退屈して「帰ろうよ~」と言い出した次男をなだめながら覗き込んでまいりました。
 感想:日本の絵も捨てたもんじゃないねっ!(なんでそんな感想?!とも言わないで…泣。言ってる人間がその程度なんだから。)
  源氏物語絵巻を見たのは、これが初めてではありません。どこの場面のものを見たのかすら覚えていませんが、MOA美術館と徳川美術館の常設で見た覚えがありました。
 その時はどの場面が描かれているのかが気になり、絵としてどのように描かれているかは全く気にならなかったのです。
 絵への興味が西洋画から始まったワタクシにとって、近代までの日本の絵画は「遠近法すら無い、遅れたもの」というイメージでした。若い頃は日本画を自ら鑑賞しに行くことも無く、その為に江戸時代以前の日本の絵画に向き合う時は、それの描かれた背景ばかりが気になり、純粋にその美しさを愛でることが少なかったように思います。
 年を重ねて落ち着いた絵画を好むようになってからは、日本画への興味も深まりました。伝統美への興味の深くなってきた昨今、改めて絵画として対峙すると感想も変わります。

 ※ここからはワタクシの解釈です。おかしなこと書いてたらスミマセン。

 「似絵」と呼ばれる肖像画が鎌倉時代に登場するまで、大和絵というものは物事そっくりに描き出す必要性が無いとされていました。もちろん「似絵」が登場して以降もすぐに「似絵」の需要が高まったわけではなく、肖像画においてはその人の持つ思想や品格が表れていることが必須でした。むしろ、あまり似すぎているとプライベートな部分をさらけ出しているようで恥ずかしい、はしたないと思っていたようです。
 絵巻物となると主題や風俗が描かれている事が大切であり、優雅で楽しいものに仕上がっていれば、そっくりに描かれている必要が無かったものと思われます。
 写実的でないことが当たり前であり、だらだらと描かれているように見える書き方も、巻き物という長細いスペースに描くためには空間を連続させるという点でこれほど適した書き方は無いと言えるでしょう。
 この、一面にストーリーを連続して描く書き方…マンガと通じると思うんですけど、そう思うのはワタクシだけ?「日本人は古からマンガ好きの血が流れてるんだ!」と思うのはマズイですかね!?
 さて、絵巻物自身の絵についてですが、色彩の対比が計算されています。
 一枚の絵として場面を見ると、鮮やかで目を引く赤や緑のような色彩がバランスよく配置されています。絵としても然り、登場人物の十二単にしても然り。
 現代でも同じ事ですが、着物では色を重ねる時に補色(色相環の反対色)をよく用います。グラデーションのような同系色でまとめる事もありますが、遊び心としては少々物足りなさを感じるのではないでしょうか。
 色合わせには法則性のある場合もありますが、一番に目に入る色とは全く違う色を挿し色として使うことで、メリハリをつけたり強調したりしています。現代のファッションにおいても趣味が悪くならないように挿し色を使うのは上等テク。
 絵巻物を描いたのは男性と考えられるのは当然で、女性のファッションだけを例に取るのはおかしな話ですが、風景から小物、着物に至るまで少ない色(顔料が劣化しているので、青や白はほとんど見えない)でメリハリが表現されています。つまり、普段の生活から色彩に対する関心が非常に高いという事を物語っていると思うのです。
 あと、紙に対してほとんどの部分に塗りが入っていて、顔料ののっていない部分が非常に少ないと感じました。紙の風化のせいでワタクシが誤解したのかもしれませんが、ワタクシにはそう見えました。
 油彩なら素人が描いてもキャンパス地が見えていることはめったに無いけれど、水彩画は主題を描いた後に空白部分が残っていることはよくあります。風景画でもない一場面でもそれがないということは、それだけ描きこまれているという事。作者の熱意がそこからも伝わります。
 また、現物では茶色くなってほとんど分からなかったのですが、隣の部屋の復元画を見て驚いた事があります。着物や御簾、家財に至るまで地模様がほぼ全てに施されているのです。
 ちらりと見ただけでも全体の色の対比が伺われるのに、加えての紋様等の緻密な描き込み。その紋様がまた各種様々。
 これだけのものを描くには、描き手自身がそれなりの知識を持っていなければならないわけで、絵師がひとつの仕事を仕上げるまでには時間もお金も必要だった事でしょう。昔、絵を描くという行為は日本も欧米も、それなりの財力に支持されてのことだったんだなぁとしみじみです。
 なお、複製については、見えなかった模様だけでなく退色した色についても同様に復元されていたため、色が鮮やか。現代の日本画に近いほどの豊かな色彩が使われていました。同時に公開するのは大事ですね。
 
 とりあえず駆け足で観た絵巻物。機会があればもう一度ゆっくり鑑賞したいものです。
 ところでシロウタが気づいたんですが、徳川美術館って待機してるタクシーがものすごく多いですね!ここから名古屋駅まで飛ばす客は結構いるだろうな、確かに。新幹線とかで「わざわざ名古屋まで来ました」って人も少なくなさそう…。
 その辺の企画展じゃ見かけないような、高そうな着物を着たハイソな奥様をたくさん見物させて頂きました。この空間にワタクシも入れて頂きましたのね。ありがたや、ありがたや。

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2 コメント

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Unknown (earth)
2005-11-28 11:17:52
おそるおそるトラックバックさせていただきました(汗。

わたくしの「行ったよ」程度のエントリにトラバしていただいて恐縮です。

i-boshiさん、休日の混雑の中でそこまでじっくりと見てきたとは素晴らしい。わたくしが行ったときはガラスの前には常にびっちり張り付きの行列、後ろにさらっと見たい人が早足で鑑賞、という混雑程度でした。お年寄りが多いせいか、進むのがカタツムリ並。

複製画、本当に色鮮やかで華麗でしたよね。原本があの状態だったころに絵を見た人たちは、本当に一握りの権力者だけだったのだろうなあと、現代に生まれたありがたみを感じます。

そうそう、国宝も複製画も、一部の展示を前半と後半に入れ替えているので、全部見るには2回はいかないといけないシステムになってました。図録もほしいし、もう一回いくか迷い中です。
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★earthさん (i-boshi)
2005-11-28 16:49:30
こちらこそおそるおそるでしたが(^^ゞ

TBありがとうございます♪

そんなにじっくり見たわけじゃないんですけど、ブログに書くぞ~と思うと考えがまとまらなくてダラダラと長文になってしまうわけで…長いとちゃんと鑑賞してきたみたいに見えますかしらん(笑)。



そうか、入れ替えをしてるのですね。

どの場面があったかもさっぱり?状態でしたので、見てない場面があるなんて思いもしませんでした。

(徳川美術館、商売上手いな~と思うのは下世話?)

10年に一度の展覧会ですしね。都合が付くのなら是非もう一度!
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