アバウトなつぶやき

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地球★爆ー10人の画家による大共作展ー

2019年12月24日 | かんしょう

愛知県美術館へ二科展を見に行った際、ついでだから寄っていこうかな…という感じで入った「地球★爆」展。
入ってびっくり、観てびっくり。
なんだ、これー!インパクトがすごいんですけど!!

 

「地球・爆」は国内各地域で活躍する10人の画家──伊坂義夫、市川義一、大坪美穂、岡本信治郎、小堀令子、清水洋子、白井美穂、松本旻、山口啓介、王舒野──による絵画プロジェクトで、11組で合計約150点の絵画パネルで構成され、全長は200メートルを超えます。

 2001年に起こったアメリカでの同時多発テロ事件に呼応して岡本と伊坂と王が企画し、彼らの呼びかけに賛同した7人の画家が加わりました。構想図案から検討して「共作」する、というアイディアのもと、2003年に着手。全決定稿がそろったのが2007年9月で、そこから本画の制作が始まりました。2013年2月に完成していた第1番は、同年開催の「あいちトリエンナーレ2013」で紹介されました。

 最年長の岡本が、少年時代に衝撃を受けた1945年の東京大空襲や広島と長崎への原爆投下も含め、20世紀以降の戦争が人類にもたらしたものをテーマとする、この絵画プロジェクトでは、それぞれの画家が個性を生かして描き方に変化を与えつつも、全体としては、ユーモラスで乾いた形で、あたかも一つの「絵巻物」のように表現されています。
 史上最長級、の反・戦争絵画をこの機会に体験してください。

【出品作家】
伊坂義夫、市川義一、大坪美穂、岡本信治郎、小堀令子、清水洋子、白井美穂、松本旻、山口啓介、王舒野

▲愛知県美術館 企画展 案内より抜粋

見に行く前の予備知識は「10人の画家による大共作展」であること、「反・戦争絵画」であることだけ。
2013年のあいちトリエンナーレは行っていないので、テレビニュースで見た紹介映像とリーフレットから「ポップな絵画で戦争を表現している展覧会」という印象でした。

さて、会場に足を踏み入れてみると少し変わった構成ではあるものの、当初の想像と同じような印象を持ちました。「あぁ、戦争をモチーフにした絵画群なんだな」と言ったところでしょうか。

しかし、見ているうちにだんだんとざわざわとしてきました。
前出のリーフレットで使われている作品だとゲルニカやヒトラーをイメージできますが、そういう視覚的にモチーフが伝わる作品ばかりではありません。
私は戦争が怖くて深く学ぶことを拒否してきた側の一人だと思います。だから、ある程度、一般的によく知られている事象についてしか分からないのでこの絵画たちの意味することがなんなのか、何をモチーフにして訴えかけているのかがつかめない部分が多いのを実感します。
でも、そのうえで通常の日常ならざるものが紙の上で展開しているのは分かる、伝わるのです。
かわいらしいタッチだったりスタイリッシュだったりする、大きくのびのび描かれた絵画たち。とても健全そうに不健全が描かれている気味悪さ。
そういうものが会場内に広がっているのです。

そのうえで作品を理解したいと思った時、
このタブロイド判の作品解説はとても大事↓

 絵画を見るとき「受け手の解釈に任せる」というのは芸術家の常套句であり、理解力の乏しい私は発表した以上そのスタンスでいてくれる方が望ましい、と思っているのですが、この展示はそういう見方もできるけれど隠れた意味を知るとさらに興味深く見ることができます。
だって、私の知らない事象をモチーフにしている作品が多いんですもの。

今回参加している画家さんたちのことを知らなかったので、てっきり若手作家が取り組んでいると思って「この人たちよく勉強しているなぁ」と思いながら見ていたのですが、最後の部屋でこの企画の中心人物である岡本信治郎氏と伊坂義夫氏の紹介がありました。
そこでやっと、この作品群の中心に戦争を知る人物がいて、戦後を生きた人たちがこの企画に参加していたことに気づきました。
最高齢の岡本信治郎氏は86歳。
岡本氏は以前からこの企画に通ずるテーマの作品を作っておられましたが、今回、この展覧会に合わせて新作を描かれたとのことでした。
なるほど、実体験を含めた思いがあって描かれた作品群だったわけで、それであの質量になったのか…と納得しました。
反面、若手ではなかったことに「やっぱり若者ではコレを描くのは無理なのか」という残念な思いもありましたが、そこは言っても詮無いことですよね。

この企画展を見て、戦争を考えると同時に価値観の多様性を考えさせられました。
時代によって、シチュエーションによって、大事なことが変わってしまうことを忘れずに生きていかなければと改めて感じたのでした。



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