アバウトなつぶやき

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サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法展

2018年08月27日 | かんしょう
 三重県立美術館で開催中の「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」展を観てきました。




 いつもは入館して右側に会場入口があるのだけれど、今回は左側に入口があって右へと進む配置になっていました。展示室のサイズによるものか企画側の意向なのかは分からないけれど、三重美ではちょっと珍しい。
 伝えたいメッセージを一目で分かるようにするという信条で描かれたポスターはとても分かりやすく、なによりかわいい!
 会場全体がポップで、明るく楽しい空間が出来上がっていました。
 発表当時、ポスターがパリの街を飾っている写真が何枚もあったのですが、街角や地下道など、どれも大きく引き延ばして壁面を覆っているのにうるさくなくてスタイリッシュ。描き込みすぎないことで空間をも演出してしまっていて、バランス感覚が見事です。
 どのポスターもかわいくてグッズになりそうなものなんだけど、やはり本来は広告。なんでもかんでもグッズにするわけにはいかないんでしょうね。このデザインのバッグや文具があったらかわいいだろうな、と思ったけれどそういうものはなかったです。

 今回は夏の恒例、武蔵美の県友会が県民ギャラリ-で開催している「び・SAM」展に合わせて行ってきました。
 観に行くようになってから結構経つけど、まっちゃんのいるときに行くと解説が入って楽しい♪ 割と美術館へ行く方だとは思うけど、いつもうわっぺりで作品を観て個人的な見解で楽しんでるだけの私にとって、制作側の話を聞くと別の視点で見ることになって勉強になる、、、というかそれぞれの作品にこだわりとか思いがあることに気付かされて頭が下がる感じ。作る作業って「創る」になるとパワー要りますよね。
 ずっと変わらないと思っていたメンバーにも変化が出てきているようで、「続ける」ということの難しさや大切さについても考えるきっかけになった気がします。私には出来ないことをやってる色んな人達、がんばって下さい。
 
 

開館40周年特別企画展 知られざる古代の名陶 猿投窯

2018年08月24日 | かんしょう
 愛知県陶磁美術館で開催中の開館40周年特別企画展「知られざる古代の名陶 猿投窯」を観てきました。




 2013年に愛知県陶磁資料館から改称して現在の名称になった、愛知県陶磁美術館。もう5年も経ってたんですね。
 今回の開催概要を読んでいて、陶磁資料館が開館した経緯を知りました。
 全国有数の窯業地である瀬戸だから陶磁器を紹介する場所があることは当然のように思っていましたがそれは現代の産業としての視点であって、本来、というか開館当時はこの場所の古窯である「猿投窯」の研究が目的だったんですね。
 今でこそ考古に分類される古い物にも美術的価値があるとされていますが、そういった価値観は戦後以降の考え方であり、それまでは工芸品という観点だけで美術的価値は認められていませんでした。縄文土器はその良い例で、1950年代に岡本太郎がその価値を唱えたり、海外で紹介した際に高い評価が得られたことで美術的価値が認められました。
 最近はそういう考え方が中国の富裕層にも広がってきて、大陸の古い焼き物から日本の仏像まで高値で取引されているのはご存じの通りです。
 とにかく、瀬戸焼や常滑焼、美濃焼などの源流に当たる「猿投窯」が学術的にも美術的にも価値のある窯であるのは間違いなく、その全容を名品の紹介による美術的観点と変遷を紹介することによる歴史の観点からという両面から理解できる構成になっていて、たいへん興味深い展覧会と言えます。
 私の住んでいる三重県も遺跡から猿投窯製の須恵器(野焼きに代わって窯で焼かれるようになった陶質の土器)が出土します。東海圏とは言え交通機関の存在しなかった時代にわざわざ運んだのか、すごいな、と思っていたのですが、同様に猿投の焼き物は全国で出土しており、九州や東北まで流通していたことに驚かされます。
 また、展覧会用にピックアップされているとは言え非常に美しい姿をした名品が多いことにも驚きました。
 特に自然釉(窯の中で降りかかった灰がガラス質の釉になる状態)が意図したかのようにバランスよくかかっていたり、ゆがみが一切なくてピシッとした口縁や流れるような胴部を持っていたりして、非常に高い技術を持った集団が窯を営んでいたことが分かります。後で学芸員さんがおっしゃっていましたが、この自然釉も経験によって窯の中のどの位置に置けば美しく灰がかかるかを計算して配置していただろうとのことでした。
 博物的な視点でいわゆる考古遺物のひとつとして捉えていた須恵器や瓷器(初期の陶器)でしたが、この展覧会を見たことで価値の多様性に気付けた気がします。

プーシキン美術館展ー旅するフランス風景画

2018年08月16日 | かんしょう
お盆といえば大人にとっても夏休みです!
毎年この時期、一日は仕事や家事を休んでふらりと出かけています。今年は大阪の国立国際美術館で開催中のプーシキン美術館展を観に行ってきました。

車を使って遠出をする私にとって大阪はなかなかハードルが高い場所。おまけにプーシキン美術館の所蔵に特別な関心があるわけでもなかったので、当初は見送ろうと思っていた展覧会です。
しかし、ニコニコ生放送で東京会場を使った解説をしていたのを見てしまい、どうにもウズウズしていました。
近鉄特急を使えば快適に行けるのはわかっていましたが、今後に繋げるためには安価な方法を検証しておきたかったのと、場所がミナミでなくキタなのも考慮してJRを使って行ってみる事にしました。柘植から乗ると駐車場に困らないんだよね。

さて、10時頃には会場に到着しましたがやはり人気のある展覧会です。大阪なのとお盆なのも関係してか、なかなかの盛況ぶり。東京に比べればかなり空いてるのでしょうが、絵を目にするのに時間がかかる時点で私にとっては人多めです。





 プーシキン美術館展は何年かに一度のペースで巡回展が開催されているイメージです。所蔵品が多いので、当然といえば当然かも知れません。
 今回、目当ての絵画があったわけではありませんが行けば必ず良い作品に出会える展覧会であることは分かっていましたので、楽しみではあったのです。

 注目の絵画はモネの〈草上の昼食〉ですね。制作過程やそのエピソード、習作、マネの〈草上の昼食〉との比較なども交えて紹介するといった丁寧な解説が入っています。
 日本人に人気の睡蓮シリーズより以前、若かりし頃のモネを知るのにとても良い位置づけの絵画です。とても描き込まれた意欲作であることが伝わるし、当時の風俗も良く分かる、見応えのある絵です。
 風景画が一つのジャンルとして確立していく過程や当時のフランスの様子がよく分かる絵画の多いこと、「廃墟のヴェルネ」や「絵画の詩人ロベール」など通り名のある画家については特徴的な絵が出展されていること、モネの他にも画家の創作意欲の高まっている時期に描かれたと思われる良い作品があることなど、展覧会のまとまりや構成がとても良かったと思いました。
 特に今回は「この画家の他の作品に比べてとても良い!」と感じた作品がいくつもありました。私が個人的に気に入ったのはヴラマンク〈オーヴェールの風景〉、セザンヌ〈サント=ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め〉、ゴーガン(マタモエ、孔雀のいる風景〉です。
 ヴラマンクについては画面が明るい清々しさのある絵だったので、彼が自然を好んで描いているのがよく伝わりました。少し前に「なんで自然を愛してるって言いながらこんな暗い色調で描くんだ」なんて思ったので、彼の作風のままに明るさを残している作品として、その疑問を払拭してくれたのです。
 また、セザンヌの作品にも似た印象を持ちました。
 作風が違うというのではないけれど、のびのびとした自然の様子と豊かな色彩が私好みで、他の彼の作品よりずっと好きだと思いました。
 そして今回、私が一番印象的だったのはゴーギャン(ゴーガン)です。
 ゴーギャンは個性が強いので、今までその画面構成の方にばかり目を奪われていましたが、この作品の色彩の美しさには衝撃を受けました。
 印刷物と実際の絵画では色が全く違うというのはよくあることだし、観た日の気分というのもあるのでしょうが、とにかくこの絵を観て「ゴーギャンを愛するが多い理由が今日、初めて理解できた!」と思ったのです。
 もちろん、マタモエ=死=文明化された自己の死、というテーマも訴える力が強いです。しかし私にはそれ以上に孔雀の羽の緑や藍を帯びた深い色合いだとか明るい大地のオレンジだとか熱い空気を感じる色の対比だとかが直接的に私を魅了しました。正直、初めてゴーギャンの絵を好きと思ったかも知れません。

 企画展に満足した後はもちろんコレクション展も観てきたのですが、これもまた見応えがあって面白かったです。私が気になってる現代作家さんの作品が1点ずつぽつりぽつりと何人も展示してあり「粒ぞろいですなぁ」と心の中で呟いてきました。
 国立国際美術館には初めて行ったのですが、コレクション展にはテーマ別になってはいるけれど順路は特に記されておらず自由な移動が出来る空間になっていました。あれ、気持ちいいな 

 国立国際美術館を出た後は、来週から月末まで休みに入る大阪市立東洋陶磁美術館にも寄りました。
 展示方法にとても工夫がされているとのことで感心させて頂いたのですが、「国宝展で感動した、油滴天目をもう一度この目に!」と意気込んでいったらなんか見え方が違って「……?」となってしまいました。
 自然光に近い光で観ることが一番良いという説明も分かるのです。でも国立博物館で観た天目茶碗はライトの光を受けていたからか青みを帯びて煌めいていたのですよ。そして私はその姿に見惚れたのですよ。
 どうすりゃいいんだ、この気持ちは。
 心のどこかで「自然光よりも人工の光で見た方が綺麗なものって世の中にはあるじゃん?ダイヤモンドみたいな宝石とかさー、この茶碗がそうじゃないって決めつけちゃって良いの?」と思ってます、すみません。
 まあ、青磁や白磁に私の好きなものがたくさんあって目の保養になったのは間違いないので良しとするかぁ。

開館25周年記念企画展 ばんこやき再発見!ー受け継がれた萬古不易の心ー

2018年08月13日 | かんしょう
四日市市立博物館の開館25周年記念企画展として開催中の、「ばんこやき再発見!」を観てきました。
萬古焼は18世紀の半ばに現在の三重県桑名市で興った焼物で、以降三重県北勢部の主要産業となり、現在も四日市市を中心に伝統工芸として受け継がれています。
今年は萬古焼の創始者である沼波弄山(ぬなみろうざん)の生誕300年に当たるらしく、近隣地域にある朝日町歴史博物館やパラミタミュージアムでも萬古焼所蔵館連携事業として展覧会が企画されています。

↓それぞれクリックでHPへジャンプします。
●四日市市立博物館
●朝日町歴史博物館
●パラミタミュージアム

 萬古焼は今でこそ土鍋や蚊遣り豚という生活密着タイプの焼物というイメージが強いのですが、創始者の沼波弄山は茶人でもあったため、「古萬古」と呼ばれる創設当時の江戸時代中後期の作品は茶器や装飾性の高い名品が多いのです。
明治時代になると外貨獲得のための政府の政策と四日市の山中忠左衛門の尽力により、たくさんの輸出品が作られました。
今回の展示は歴史を語る堅苦しい感じではなく、萬古焼の変遷や多様な作風を一堂に知ることができるようになっています。
優美な名品からちょっと変わったものまで、本当に多岐にわたっています。
 萬古焼の歴史において、沼波弄山の死後に途絶えかけた萬古焼を再興させた森有節という人物がいます。
 森有節は猩臙脂釉というピンク色の釉薬を施した器が有名なのですが、今回の展覧会では猩臙脂釉の器よりも色絵や青釉、または木型造のもののような形状に特徴のあるものなどが多く見られました。絵付けの美しさはもちろんのこと、中に緑の発色が素晴らしい器があり、おかげで私は森有節の偉業を改めて思い知ることになりました。
 たくさんの名品があり写真撮影もOKだったのですが、SNS等への投稿は禁止されていた為アップできないのが残念です。
 もっと柔軟に対応したほうが、地場産業をアピールする良い機会になると思うのですが、、、いったいどんな弊害があるのやら
 
 四日市では春になると「ばんこ祭り」という焼き物市が開催されるのと、幼い頃は窯元の多い地域の近くに住んでいた事もあり、家には萬古焼の器がたくさんありました。
 なにぶん庶民の家に生まれたものですから高価な萬古焼の器には長い間巡り合えなかったのですが、大人になって積極的に萬古焼を観に行くと古萬古や有節萬古の絵付けの美しさに驚いたし、木型造りによる薄造りの繊細さには心が躍りました。
 赤土や紫泥の急須も、幼いころにはさらりとした手触りが洗いづらそうとしか思えずに良さが分からなかったのですが、大人になって同じく地場産業であるお茶との関りを知ると「萬古焼とお茶のマリアージュや~」という感じで、その味わいに深みを感じるようになりました。

 今の萬古焼に興味のある方はコチラをクリック→BANKO LIFE 暮らしを彩る萬古焼

 最近、やっと若い作家さんの作る新しい萬古焼が見られるようになってきた気がします。
 古い伝統も良いけれど、新しいものも開拓していかないと、と思います。ましてや萬古焼は明治時代に土を他所から買い付けた歴史もあるわけで、新しく進化し続けることが真骨頂なのではないかと思っているからです。
 若いクリエイターの活躍の目覚ましい波佐見焼のように、萬古焼もどんどん新しい風を吹かせてほしいものです。

 今回の展示で紹介された輸出品は、日本らしさに焦点が当たっているものが多かった気がします。
 外国に寄せて作った輸出品には今の北欧ブームに近いセンスのものも多いのですが、そういった作風の器は博物館よりもBANKO archive design museumの方で見る事が出来ます。
 
 博物館のように学術的な見地で見た後は、現代の新しい焼き物としての萬古焼も楽しんでほしい。。。地元民の願いです。

名古屋ボストン美術館 最終展 ハピネス ~明日の幸せを求めて

2018年08月02日 | かんしょう
 暑中見舞いや年賀状を出すことでご無沙汰してる人と改めて繋がるというのは良くあることで。
 メールも便利だけど、一方的に近況を知らせる手紙の方が出しやすいって部分もあると思うのです。相手がもし私と縁を切りたいと思っていた場合には手紙の方が返事をしなくて良さそうな媒体だし、そうでもなかったなら何らかの手段で手紙着いたよ、って一言くれることでしょう。
 会わなくなってたママ友に手紙を出したら、幸いすぐにメールを頂いたので私も返信。「明日は休みなので美術館へ行くんだ」って言ったら、一緒に行くことになりました。子ども抜きで二人で会う事って今までなかったから、なんだか一歩前進だわ。

 行ったのは名古屋ボストン美術館の最後の展覧会「ハピネス~明日の幸せを求めて」。
 ボストン美術館がなくなったら、もう金山駅で降りる事なんてそうそうないんだろうな。。。
 




 出展数は75+特別出品10点。うーん、少ないわけではないけど最後にドカーンという感じではないですね?
 今回の目玉は曾我蕭白の〈琴棋書画図〉かな。他にもルノワールやミレーなど、有名どころもそれなりにあります。でも、なんだろう、、、ちょっと展覧会自体にパワーみたいなのが足りない気がします。
 悪くない。決して悪くないんだけど、前回の「ボストン美術館の至宝展」のような力強さはないかなぁという感じです。(前回、ちゃんと観ておいて良かった
 好みの問題なのであくまで個人的感想ですが、「あ、この作品良い」と思った陶胎七宝も鯉も鍔も、全部が名古屋市博物館の所蔵品だったのがビックリしました 正直、アメリカから貸し渋られたのかな?と思っちゃった。初出品作品が多かったので、「閉める前にこれも日本で紹介しておかなきゃ」ってあわてたのかも知れない。
 館長である馬場駿吉氏の所蔵作品も何点か展示してありました。私好みの作品だったのでそれ自体は良かったし、館長のアイデンティティも感じられるので良い試みだとは思うのですが、最後にこれをやられると逆に寂しい気も。。。
 それと最後の部屋はハートをモチーフにしたジム・ダインの作品がそろい踏みでした。今まで何気なく観ていた作品をじっくり見比べることで、色んな表現の違いやパターンの面白さを感じることが出来ました。ハートって見るからにハッピーなアイテムだから、今回の展覧会はハピネスがテーマだというのなら、もっとこの展示をピックアップしても良かったのでは?と思ってしまいました。まぁ、それだと幅広い層にうったえるのが難しくなるのかな。
 とにかく泣いても笑っても最後の展覧会。せっかくだから笑顔でお別れしましょう。
 
 美術館の後はささしまへ移動してグローバルゲートへ。
 ランチしてウィンドウショッピングを楽しみましたが、その時食べた「西条園抹茶カフェ」のふわふわ抹茶かき氷は美味しかった!オススメです。