アバウトなつぶやき

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「マグリット」展

2015年09月20日 | かんしょう
ルーヴル展の後はコチラ!


ルネ・マグリットとは
ルネ・マグリット(1898‐1967)は、ベルギーの国民的画家であり、20世紀美術を代表する芸術家。シュルレアリスムの巨匠として知られていますが、その枠にはとどまらず、独自の芸術世界を作り上げました。マグリットの作品は、言葉やイメージ、時間や重力といった、私たちの思考や行動を規定する要素が何の説明もなく取り払われており、一度見たら忘れられない魅力に満ちています。詩的で神秘的、静謐な中にも不穏でセンセーショナルな部分が潜む――イメージの魔術師が生み出す、不思議な“マグリット・ワールド”に、どうぞご期待ください。(HPより抜粋)


前回の記事の感想が長かったから、なんか疲れた^_^; 今回の記事はさくっといきます。



みなさん見たことありますよね、教科書でこの空模様の鳥の絵。
シュール(私は伸ばす言い方が好き)の中でもすっきり美しい画面構成でわかりやすい。マグリットってそういうイメージです。
シュルレアリスムって既成概念に対する問いかけが潜んでいて、不安にさせるものや何描いてあるかわからないものも多いのですが、マグリットは画面が美しいので概念をパズルのように楽しむことも出来てとても見やすい気がします。


▲人間の条件
窓の風景が絵と重なっている、景色は連続しているようだけれどもその実絵の後ろにはどんな風景が展開しているかはわからない…。人間の思い込みに対する問いかけです。

こんな風に見る側への問いかけがわかりやすいものもあれば、イメージの発展で不思議さを前面に押し出しているものもあります。


▲ゴルコンダ
群衆を代表するような、同じような格好をした男達が本来いるべきでない場所-空間に配置されています。


▲光の帝国Ⅱ
街の風景は夜なのに空は明るく昼間の景色である不思議。

上の2点を見てもわかるように、マグリットの絵はとても美しいと思いませんか。色のバランスが「センスが良い♪」って感じです。
もちろん本物のほうが良いに決まっていますが、印刷物にしても配色の妙が生きているし、画面に詰め込みすぎないおかげで伝えたい事が曲がって伝わることがない気がします。まさに「現代的」なのです。

それもそのはず、↓の絵なんかは1966年の作品です。つまり、私の生まれる2年前の作品。

▲空の鳥
この絵、子供の頃に教科書で見たときは空と鳥が逆転してるってくらいにしか思ってなかったけど、よく見たら滑走路は夜の風景で、2重の逆転が潜んでいたのかと感心。

ところで、ベルギーのシュルレアリスムといえばポール・デルヴォーも同時期の画家です。双璧をなす、と言う方も。
だからなのか、なんとなーくマグリットの描く女性とデルヴォーの描く女性が似ていたりします。
交流がなかったわけはないのですが、この展覧会内ではダリやキリコについては触れている割にデルヴォーの名前が出てこないのが不思議でした。
マグリットのほうが先駆者だからかな?

マグリット展はお子さんと観ても楽しい展覧会だと思います。もちろん、じっくりと人間に内包するものを問いかけながら頭を使って観るのも良しです。
こちらは10月12日まで!
まだ会期があります。たくさんの作品を前にすることで、彼の世界観に浸って楽しみましょう。

「ルーヴル美術館」展 -日常を描く-風俗画にみるヨーロッパ絵画の真髄

2015年09月20日 | かんしょう
先週の木曜日、雨の平日を狙って京都市美術館で開催中の「ルーヴル美術館展」へ行ってきました。

会期も終盤を迎え、あとはシルバーウィークを残すのみです。ツィッターを見ていたら平日でも混雑が始まっているとかで心配していたのですが、平日のせいか雨のせいか、並ばずに入ることができました。
しかし、ルーヴルにしてもフェルメールにしても人気あります。
私は同時開催のマグリット展のほうが目当てでこっちがついでだったのですが、ルーヴル観てもマグリットは観ない、って人の方が多いようです。


この展覧会は、風俗画をテーマに展示しています。
絵画が職人の手仕事とされていた中世ヨーロッパから絵画の地位を高めるためにまず学識を要する「歴史画」というジャンルが生まれます。そして身分の高い人々を描く「肖像画」が展開されましたが、その頃は「風景画」、さらに「静物画」はジャンルとして下位のものとされていました。
その後18世紀後半から19世紀にかけて、それまではジャンルわけされていなかった、人々の日常を描いた絵画が「風俗画」として認識されるようになったのです。

展覧会の解説等は他のサイトにお任せするとして、私は自分の感想を書かせてもらいましょう。
まず、私は今回この展覧会の予備知識なしに行ったので誰の作品が出てるかとかまったく知らなかったし、調べててもろくに画家のことも分からなかったと思います。フェルメールのおかげで混んでるみたいだなぁ、ぐらい?まぁ、私の芸術観はその程度です。
だから、単純に絵の美しさやそこに描かれている風俗を民俗学的にみせてもらいました。

気になったこと、その一。『キャンバスの普及ってこの頃なのか』
この展覧会で1600年代=17世紀に描かれた絵は板に描かれたものとキャンバスに描かれたものが混在していました。ただ点数としてはキャンバスの方が断然多かった気がします。
キャンバスが普及し始めたのは15世紀頃らしいので、察するに16世紀ごろには板とキャンバスが半分くらいになって17世紀には逆転したのかな、と思います。
板に描かれた絵はアクリルで描いたイラストのようにつやつや、つるんとしています。
最近観た展覧会で油絵なのにてかてかしてる絵があって「?」と思ったら板だったってことがありました。
特殊な効果を狙うには良さそうですが、そうでない場合は板よりキャンバスの方が描きやすいんですかね?それとも重量の問題?私は授業でしか油絵を描いたことがないので、特徴はよくわかりません。
とにかく、需要が逆転した事実を考えるとキャンバスの方が扱いやすそうです。もしかしたら保存もしやすい??
単純に考えると下地が固ければ絵の具も剥がれやすいのでは?って気がします。でも展示されていた絵はどれもつやつやで美しかったのを思うに、保存状態が良いのか修復技術がすごいのかはわかりませんが、結局、「さすがルーヴルだ」と思うわけです。

その二。『部屋の中に犬がいる絵が結構多いぞ。』
居るんですよね~、犬が。狩りで猟犬が描かれているんだから犬がいるのも当然なんですが、女性が下着姿でいるようなところにも結構座ってます。
さすがに大型犬というより中型の短毛種なんですが、ヨーロッパは昔から家の中で犬を飼うのが普通だったんですね。
スヌーピーは犬小屋に住んでるから欧米でも犬小屋あると思ってるんだけど、家の外につないでる絵とかはないのは単に絵にならなかっただけなのか、一般的でなかったのかは謎。特に犬との共存の歴史とか考えたことなかったけど他の人は知ってるのかな。
ちなみに19世紀ごろの絵には猫が出てきてるのは愛玩の要素が大きくなるからなんだろうか。

その三。『ヨーロッパは蚊より蚤なんだな。』
狩りの絵でドレス着た女性が森の中で座ってて、どうせこの人たち男性陣が狩りしてる間はお茶飲んで座ってるだけだろうに、蚊に刺されたりしないんだな、こっちは涼しいから虫や雑草が少なそうで絵になるし良いな、なんて思って観てました。
だけど会場内にはムリーリョの「蚤を取る少年(乞食の少年)」の他にも蚤を取ってる女性の絵があって「蚊はいなくても蚤はいるのか…。犬にもいるんだろうな」なんてことを考えてました。
  
全体的にそういう風に絵の内容を楽しんできたのですが、普通に絵として気に入ったものも何点かありました。
そのうちの一つがこちら↓

▲「台所の情景」マルタン・ドロリング(1815年)
台所だからって水道はともかく水場もないんだ、どれがカマドだろ、と風俗を観るのも興味深いし、外から入る光の加減はとても美しく部屋には趣があり、観ていて落ち着けるような懐かしいような何かが起きる気がするような、、、色んな事を思わせる趣深い絵だと感じました。

あと、会場の最後にあった絵がこちらなんですが

▲「ルーヴル宮グランド・ギャラリーの改修計画」ユベール・ロベール(1798年頃)
「宮殿や、宮殿が開放されて美術館になっておる。当時の人にゃ画期的だったろうなぁ」と、フランスなど行ったことのない私に偉大さを伝えてくれました。
しかし、広いなぁ、ルーヴル。一生のうちに行く機会がある気がしないわ。

あと一週間しかないので、今から行こうという方は覚悟して行かれるべきだと思います。混んでます、絶対。。。
いつも展覧会は会期終盤になってから腰を上げてる私ですが、次からは出来るだけ早めに時間を作ろう、と思いました。琳派展は早めに行こうと思います。

「芸術植物園」展

2015年09月13日 | かんしょう
名古屋市博物館の「魔女の秘密展」で滅入った気持ちを切り替えるために足を運んだ、愛知県美術館の「芸術植物園」。
行って良かった!気が晴れました!!


▲たくさんある作品の中でこの写真をポスターにするとは渋いぜ。

この展覧会は芸術において取り上げられた「植物」をありとあらゆる方面から紹介しています。
絵画、写真、立体芸術、学術的見地など多岐にわたっているので芸術という角度からでなく植物を愛でるという見方でも楽しむことが出来ます。


展示作品は各所から貸し出して頂いているようですが、愛知県内の施設から来ているものがたくさんありました。
愛知県の施設は私にとって行きやすいのでそれなりに出向いていますが観たことのない名品がたくさん出品されていて、新しい感動を得ることが出来ました。

元来 植物が好きなので観やすいということもありますが、作品として細やかなものが多いのがまた良いです。
植物は動物のように動かないので観察しやすく表現の対象になることが多いのです。だから当然、同じ植物でも色んな人が色んな表現をするわけですが、そういうのを一度に観ることが出来るのはまさに「植物園」という感じです。
特に山本梅逸という愛知(尾張藩)を代表する画家を知ったのは収穫でした。
墨の中に花だけが色を帯びて描かれた【四季花鳥図屏風】に目も心も奪われてしまいました。名古屋市博物館が持ってるようなので、また会いに行けば観れそうなのが嬉しい。。。

気に入った作品がたくさんあったので、珍しく図録を購入。

▲この図鑑っぽい装丁がまたイイ。

前述しましたが、植物好きなら美術館に馴染みがなくても楽しめる展覧会だと思います。
10月4日までなので、シルバーウィークに名古屋へお買い物に行く方はぜひ立ち寄って頂きたい♪

「魔女の秘密」展

2015年09月11日 | かんしょう
名古屋市博物館で開催中の「魔女の秘密展」を観に行ってきました。今回はシロウタと一緒。




魔女をファンタジーとして捉えてる者にとってはとても楽しそうな企画展です。それでなくても中世ヨーロッパにおける神秘性は興味をひかれる分野ですし。
夏休みに散々息子たちを誘ったけれど一向に乗ってこなくて、結局いつものようにシロウタしか付き合ってくれなかった。

楽しみにし過ぎて、今回は入り口で音声ガイドを借りました。ソフトな白猫バージョンとダークな黒猫バージョン、帽子付きのガイドで3種類があり私は佐々木蔵之助が案内役の黒猫バージョンです。
佐々木蔵之介さんの声は良いのですが内容としてはほとんどがキャプションを読み上げているのと変わりません。しかし、時々は音声ガイドでしか聞けない内容もありました。

印象的だったのはホモンクルス(人造人間)の作り方と魔女の軟膏(空飛ぶ軟膏)の作り方です。
ホモンクルスのほうは錬金術師の分野であり、魔術に類するものとしての紹介になります。魔女がまだ憎むべき存在というより迷信として神秘性を持っていた頃です。
ホモンクルスは蒸留器の中に人間の精液を入れて人間の血液を与え続け、40日間腐敗させるというもの。完成した例はないと思うので、実験の手法の一つが紹介されていたわけですね。

魔女の定義としては
・悪魔との交わり
・悪魔との契約
・サバト(集会)に参加
・空飛ぶ軟膏を作る
・天候を操る
というものが紹介されていました。
色んな説があると思いますがこの展覧会では(覚え違いでなければ)これが基本です。詳細は忘れてしまいましたがドイツのほうで開催された展覧会を日本でも展示するよう企画したものらしいので、本場の考え方に近いのかな?と推測します。ドイツは魔女裁判の被害が一番大きかった国ですから。

魔女の認識はまず悪魔に従属するものという認識から始まり、社会情勢の不安から迫害対象となり「魔女狩り」へ発展、それが盛りを過ぎた事が科学の発展に伴い収束、その後はファンタジーの存在へと変化し今に至っています。
現在、魔女や魔法使いというとハリー・ポッターを見てもわかるとおり悪いイメージではありませんものね。ちなみにこの時代、なぜ魔「女」なのかというと悪魔と交わるという点から女性がターゲットになっているようです。

魔女が空を飛ぶときに箒にまたがっているイメージがありますが、どうやらそれは飛び方のバリエーションの一つにしか過ぎず、もともとは魔女が作る薬=軟膏によって飛べるようになるという考え方がメインのようで、当時の絵を観ると身一つで飛んでいるか動物(牡山羊=性の象徴)にまたがっているものがほとんどです。
音声ガイドで紹介された空飛ぶ軟膏の作り方は
・緑色の粘液
・蜘蛛の足
・赤ちゃんの脂肪
・7種類のハーブ
・呪文
など(これもメモしたわけではないので忘れている部分もあると思いますが)を混ぜて作るというものでした。これは魔女裁判の拷問の時に強要されて自白したものらしいのでもちろん実際に作られていたわけではありません。

この展覧会、行く前は結構楽しみにしていたのですが、中盤を過ぎた頃にはさすがに気が滅入ってきました。
まず、無実の人々が魔女として扱われた不条理にいたたまれなくなってきます。
魔女裁判の拷問器具も本物が観れるということで興味があったのに、実際に実物を前にするとそれが使われるところを想像してしまい気分が悪くなってきました。

魔女裁判がエスカレートした背景には飢饉や疫病、戦争などといった不安や苦しみもさることながら、魔女を見分ける方法や魔女裁判の仕方というマニュアル本ともいうべき書が出回ったことがあります。
デタラメをもっともらしく言い出した輩がいた所為でつるし上げに合う人が出てくる…。
これってツイッターが炎上する図式とそっくり!って思ったらもう腹立たしいやら気分悪いやらでぞっとしました。
民衆心理ってホント恐ろしい!!
これを肝に銘じて、人に流されることなく自分の意見を持てる人間になりたいと改めて思いました。

観て楽しい気分になる展覧会ではありませんが、大変興味深く、大変意義のある展覧会だと思います。行って良かったとは思ってますよ、念のため。
あと少しで名古屋は終わってしまいますがシルバーウィークがありますし、巡回展なのでまだ観ることは出来そうです。次は浜松。→魔女の秘密展 公式サイト


▲魔女の格好で写真を撮れる場所もありました。こういうのは楽しい。

私は気が滅入ったので、この後愛知県美術館へ足を運んで「芸術植物園」を観てきました。
行って良かったわ~。気が晴れた♪ あとでこちらの感想もアップしたいと思います。