アバウトなつぶやき

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没後30年 諏訪直樹展

2020年03月01日 | かんしょう

金曜日に、三重県立美術館で開催中の「没後30年 諏訪直樹展」を観てきました。

 
開催中といっても、新型コロナウィルスの影響で政府から緊急のイベント等の自粛要請が出たこともあり各種団体が中止や休館を発表している現在です。三重県立美術館も2/29〜3/15は休館となります。
なんと翌日から休館!気分的には滑り込みセーフという感じでした。
ちなみに館内はとても静か。受付の人は出ておらず、観覧客も数人のみで一室を貸切状態で観ることがしばしばでした。
 
諏訪直樹氏は三重県四日市市生まれで、1970年代後半から80年代にかけて優れた絵画表現が高い評価を受けながら36歳で世を去ったという人物です。残念ながら地元でありながらその存在を知らなかった私は、どんな絵を描く人なのかを知るこの機会は逃してはいけないと思いました。

 この展覧会に合わせてかはわかりませんが、先日観た岐阜県美術館でのコレクション展「カラー・マジック」でも諏訪直樹氏の作品が出展されていました。(諏訪氏は11歳で岐阜に転居しているので、岐阜ゆかりの画家でもあります)
 リーフレットやその作品の印象から諏訪氏は日本画家なのだという印象を受けたのですが、実際、作品を通して見るとそういうわけではなかった事がわかります。
 
 まず諏訪氏の使っている画材は日本画で使われる顔料ではありません。ほとんどが綿布にアクリル絵の具です。
 和風の色調と金色の眩さで日本画という印象を受けたため、リーフレットに使われている作品《PS−8718 八景残照Ⅲ》を見た時も金箔で富士山を描いたものだと思ってしまいました。
 しかし実際は金箔ではなく金彩だし、富士を描いたものかどうかはわかりません。(日本人が富士をイメージすることは織り込み済みで描いているとは思いますが)
 諏訪氏の初期の作品は、色の集合体がどういう見え方をするか、を追求しています。
 点で色を並べ、重ね、それが数枚のパネルにわたって移動するかの様な描き方をしています。ひとつの枠にひとつの世界を描くのではなく、連続性を表現することで絵画の成立の根本的なあり方を問うものだとか。
 絵画のあり方は色の組み合わせや配置だけでなく、画面の規則性にも着目され、黄金分割に基づく色彩構成が見られるようになっていきます。黄金分割に斜線を組み合わせて直角二等辺三角形を描くなど、画面の構成がテーマなのが伝わってきます。
 その後、衝立や屏風状の黄金比を立体的に表現する手法を経て前述の《八景残照》になるのです。
 東洋的な表現方法を取り入れる様になっていても作品に図形的原理を採用していることには変わりがなく、画面の規律や要素の混在ということが作品のベースにあるわけで、絵画における画面のあり方が氏の作品の根本にあるのだということを知ることができました。
 ちなみに、私が今回の展覧会の出展作品の中で一番気になったのは日月山水シリーズでした。
 屏風状のパネルに奔放な筆遣いの色の集合体の様に見える絵画ですが、離れて見るとちゃんと日や月が浮かび上がっていて奥深い驚きを伴う作品になっていました。
 
 この「画面のあり方」が長大に展開する作品《無限連鎖する絵画》という作品が制作されていたそうですが、画家の突然の死で未完の遺作になってしまったとの事でした。
 三重県では所蔵していない様ですが、宇都宮美術館、目黒区美術館、千葉市美術館が各々Part1から3までを所蔵しているとの事で連鎖企画が開催中です。私は行けそうにありませんが、見れるものならば全部を一挙に見てみたいものです。