アバウトなつぶやき

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近代西洋絵画名作展

2018年10月18日 | かんしょう
 パラミタミュージアムで開催中の「笠間日動美術館・三重県立美術館コレクション 近代西洋絵画名作展」を観てきました。




 笠間日動美術館と三重県立美術館のコレクションを中心に、印象派からエコール・ド・パリまでを紹介するという企画展です。
 出展数を細かく数えてみたら123点あったけれど、エッチング等の版画シリーズが5点あるため作品数としては32点。決して規模の大きいものではありません。しかし、それぞれ普通の版画シリーズとちょっと毛色の違うところを持ってきているのが工夫されたところでしょうか。
 出展の大半を占めるのは、藤田嗣治とマルク・シャガールの版画です。日動美術館の母体といえば洋画の画商で有名な「日動画廊」。戦前から藤田嗣治の個展を開催していただけあって、藤田のエッチング(水彩)なんてものまで持っているんですね。
 藤田の没後50年なんていう大規模展覧会が開催されている今年、展覧会のメインに藤田を据えようと思うとなかなか難しいと思うのですが、小規模なりに大回顧展の向こうを張ってる辺りが小ワザが利いているという感じ。
 シャガールにしたって人気のあるのは大きくて色彩豊かな油彩画だと思うので、版画だとちょっとインパクトは少ないです。で、その代わりになのか、版画と言っても木版画を持ってきてます。枚数があるのでたくさんの色があるように見えますが、一枚あたりは決して版は多くなく、3色摺り程度の作品がいくつもありました。
 けど、木の風合いがあってこれがなかなか良いんですよ。色自体が明るかったり、シャガールっぽい楽しく幻想的な画面なので疲れることなく気軽にたくさん見れる感じです。
 油彩画も点数少なくとはいえこの時代の画家のものは揃えています。モネとルノワールをかろうじて一点ずつ出展しているのが謳い文句の面目躍如というところでしょうか。この二人さえ入れておけば印象派押さえてますって言えるだろうし(笑)
 その中で、「水の画家」と呼ばれているアルベール・マルケ〈ボートのある風景〉は、水を湛えた風景が彼の作風がふんだんに発揮されている作品で良かったのと、ジュール・パスキン〈若いムラート〉の真珠母色と呼ばれる淡い色彩(虹色と表現するらしい)がとても雰囲気があって良かったです。それから、モーリス・ユトリロ〈プール=レ=ゼシャルモ(ローヌ)〉に描かれた添景の人物が楽しそうに会話している雰囲気だったのが目を引きました。人間嫌いのユトリロのイメージがあるので、人物が大きめに描かれているだけでホッとするのです。。。
 三重県立美術館の所蔵の作品もあるため、地元民としては見慣れた雰囲気なのは否めなかったかな。
 展覧会全体としてはこれといったインパクトの大きい作品はないですが、ちょっと空いた時間に観るには良いかもしれません。

 

加藤土師萌展

2018年10月13日 | かんしょう
 先週の連休は、何かと盛り沢山でした。
 土曜日は名古屋三越で開催していた日本工芸展に行き、その後、同僚のまっちゃんの発表会であるエルメスダンスカンパニー主催のダンスフェスティバルを観に行ってきました。これはキラキラだし弾むし、とっても楽しかった
 日曜日は庭の整備の手伝い。主人が木の刈り方で義母とトラブっていたけどこれは傍観

 そして月曜日は、岐阜県現代陶芸美術館で開催中の加藤土師萌展を観に行ってきました。 




 加藤土師萌の没後50年を記念した展覧会です。
 1961年に人間国宝に認定された加藤土師萌氏ですが、勉強不足の私は展覧会のリーフレットを見るまで存じ上げませんでした。
 しかし、富本憲吉氏と並び称されることに加えてリーフレットに使われている〈萌葱金襴手丸筥〉があまりにも綺麗だったので足を運んだのです。
 加藤氏の略歴を読んで、長く多治見の岐阜県陶磁試験場に勤めていたことを知りまたその成果を知ったことで、その実直とも思える人柄に非常に好感を持ちました。
 家庭の都合で学校に通えなかったために働きながら学ぶ熱心な人物で、試験場に迎えられてからは図案や素材の研究、後進の育成に邁進します。さまざまな成果を残しつつ自らも作品を作り、40歳にしてやっと窯を開くことになりますが、その時も試験場の人材を育ててくれたことに感謝され「これ以上引き止めることはできない」と惜しまれながら退職しています。気難しい芸術家ではなく、職人気質をうかがわせるエピソードで、親しみを感じずにいられません。

 実際の作品として、試験場勤めの頃のものから見ることができましたが、伝統的なものから大胆な個性を感じるもの、外国の様式を取り入れたものまでさまざまな取り組みをしています。
 独立してからは色絵磁器の難しい技術に取り組んで「黄地紅彩」、「萌葱金襴手」を再現するに至り、人間国宝に認定されるまでになります。
 さて、冒頭でも触れたこの「萌葱金襴手」の作品。
 コレがもう、本当に美しい。
 加藤氏は金泥で着彩したものは金彩で、金箔を貼ったものを金襴手と呼び区別していたそうですが、この「金襴手」は金色が質量を感じさせ、存在感のあるきらめきを見せるのです。そして、萌葱の透き通ったような釉薬は金と重なり合ってまるで翡翠のように見えます。まさに宝物という感じです。
 コレを見ただけで、来た甲斐があったと思いました。
 加藤土師萌氏は、晩年に作品発表に場として日展か日本工芸展かを選ぶように迫られていて(本人はどちらも区別するべきでは無いと考えていたそうですが、周囲がそれを許さなかったようで)、その際に日本工芸展の方を選択しています。
 このあたりが、長年技術者と働いてきた人という感じですね。
 この展覧会の2日前に日本伝統工芸展を見たら非常に面白く、日本の工芸の素晴らしさを実感していたところだったので、このエピソードも心に残るものがありました。
 また、別室ギャラリーに、試験場時代に中間工場で作られた精炻器が紹介されていました。
 この時代、白い素地の磁器が注目されているときに色の着いた素地を持つ精炻器に合う図案を考案していたという紹介なのですが、これが今の時代でもうけそうなモダンで非常にかわいらしいものがありました。素晴らしい技術者でありながら、素晴らしいデザイナーであったことを改めて感じる仕事ぶりでした。

 このあと、美濃焼ミュージアムに寄って美濃焼の歴史も感じてきました。
 少し前には猿投窯を見たところだし、やっと古い焼物が面白いと思えるようになってきてます。仕事柄、いまさらって感じではありますが、、、もうちょっと勉強しなくちゃという感じです。ええ。