ゆめ未来     

遊びをせんとや生れけむ....
好きなことを、心から楽しもうよ。
しなやかに、のびやかに毎日を過ごそう。

しんせかい/山下澄人

2017年03月20日 | もう一冊読んでみた
しんせかい/山下澄人  2017.3.20

若い男女が、北海道の山奥で、1年間集団生活をする話です。
若い男女が集まれば、どんなことが起こるかは、容易に想像がつきます。
その数々をどろどろした内容に堕することもなく、淡く淡くうっすらと立ち消えしていくが如くに語られていくのです。
著者は、1966年生まれ、物語の元となる体験をしたのは19歳の頃ですから、今から約30年前、流れた歳月があく抜きをしたのでしょう。

 これから向かう場所は、俳優や脚本家になりたい人間の集まる場ではあるのだけど、教室でただ座ってものを教わるというのではなく、二年間共同生活をしながら自分たちで自分たちの住む場所を作ったり雪のない時期は農家に出て働いたり、馬の世話をしたりしながら俳優なり脚本家なりの勉強をするという、……

近隣住民が「収容所」と呼ぶ、丸太小屋ですが、若者達はすごく真面目に生活しています。

 何しろ何度もいわれたことだがここえは自発的に来ているのだ、自主的に、命令に、それがいくら理不尽なものであろうと、従いたいと来ているのだ、なのだからここではやるべきとされていることはやるしかないのだ、それも全力で前向きに最善のものを。嫌ならやめて帰るしかない。帰るのも面倒だ。

狭い世界での集団生活、仲間同士の駆け引きもあったり、いざこざもある。

 おもしろおかしくなのだから文句めいた話になる。文句めいた話はしまいには文句になる。はじめから文句だったかもしれない。しかし文句をいったつもりはない。

北海道の自然はゆたかだ、しかも山奥なら、なおさらだ。

 空はものすごい星。ほんとうにものすごい、うるさいぐらいの、星。

集合があれば、必ず解散がある。
卒業して別れ別れになる場面は、すごく悲しい。

 そろそろ一年ですね。
 一年で何もかも変わるよね。元気でね


  『 しんせかい/山下澄人/新潮社 』

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

扇動者/ジェフリー・ディーヴァー

2017年03月20日 | もう一冊読んでみた
扇動者/ジェフリー・ディーヴァー 2017.3.20

  しかし、一番恐ろしかったのは何だと思う? 集団になると、人は別の生き物に変わる。
  人間ではなくなる


『2017年版 このミステリーがすごい』 海外編第10位 『扇動者』 を読みました。

ぼくの評価は、まあまあのミステリーでした。

嘘つきの三つのタイプが述べられていた。

 「嘘をつく人間のタイプの一つ。"ハイ・マキャヴェリアン"は、そのうちもっとも冷酷で、そうね、"調子がいい"人たち」
 「嘘をついて人をだますのを楽しむタイプ。嘘をつくことに良心のとがめは感じない。不道徳な行為という認識さえない。彼らにとって、嘘はスマートフォンや検索エンジンと同じ。ほしいものを手に入れるためのツールにすぎない。恋愛であれ、仕事や政治的な駆け引きであれ----犯罪であれ」

 "社会的な嘘つき"は人を楽しませるために、"受動的な嘘つき"は他人に良い印象を与えようとして、嘘をつく。

 "俳優"と呼ばれるタイプの目的は他人を支配することだ。


人生は、「気持ちを少し楽にしてあげること」が、自分にとっても相手にとっても大切なことです。

 「私はそう考えることにしている。島。満ち足りてた日々を象徴する島。失ったもののことは考えない。いまは世界が海の底に沈んでしまっているようなものよ。まるごと海の底に沈んでしまってる。でもね、水位は少しずつ下がっていって、いつか島が顔を出すわ。水が完全になくなることは決してないだろうけど、乾いた陸地はまた見つかる。そう考えたら、私は少し気持ちが楽になった。」

のんびり生きよ、ひとりの人間の評価なんて、死ぬまで分からないのだから。

 たった一日だけを見て一人の人間を評価することはできない。生まれて死ぬまでのすべてに目をこらし、そこに傾向を見いだして初めて、その人物の本質が浮かび上がる。歳月による均質化。

悪魔が、そっと扉を叩く!

 人生とはそういうものでないか。できれば避けたい話、耳を貸したくない話……そういう話にかぎって向こうから勝手に押しかけてくる。しかも最悪のタイミングを選んで。

以上、『扇動者』からひろった人生論でした。

 『扇動者/ジェフリー・ディーヴァー/池田真紀子訳/文藝春秋 』

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする